お披露目
それから、いくらか領政に関する話をした。オーギュスト様とレイモンド様がしきりに感心してくださったので、帰ったらお父様にお伝えしよう。
食後のお茶をいただいているときに、今度はアンリエール様が尋ねてきた。
「ところで、結婚式はいつになさるの?」
そう、なぜか政治関連の話題に偏っていたが、これは婚約者家族との初顔合わせとなる食事会だったのだ。アンリエール様の疑問はごもっともである。
「まだ決めていませんよ。特に急ぐ必要はありませんし、しばらくはお互い仕事もありますので。」
ここはレイモンド様が答えてくださった。ベルクマン侯爵の件で婚約は急いだものの、結婚はさほど急ぐ必要はないのだ。
「あら、そうなの?私は早くジュリアちゃんの花嫁姿が見たいのだけれど…」
そういっていただけるのは嬉しいけれど、アンリエール様、貴女は花嫁ではなく花婿の母親のはずでは?
「それなら二人の都合や気持ちを尊重するけれど、あまりレディをお待たせしてはダメよ?」
「わかっています。落ち着いたらその辺りも決めますよ。」
結婚式…いつになるのだろう。どんなドレスにしよう。
こんな地味娘でも、花嫁姿への憧れはあるので、内心ワクワクはしている。ただ、レイモンド様と並ぶ自分を想像して、主役がどちらかわからない未来予想図に少し切なくなったのは内緒である。
「そう、それならいいわ。じゃあ、結婚式の前に婚約披露パーティーをしましょう!」
婚約披露パーティー?
「そうだね。婚約のお披露目はまだしていないのだろう?実は、まだレイモンドへの縁談が私の方へも舞い込んでくるんだよ。一度お披露目して周知してしまえば、そういった煩わしさもなくなると思うのだが。」
「でもお父様、お披露目なんてしたら、ジュリア様が他のご令嬢方に目を付けられて嫌がらせをされてしまわないかしら?」
ロザリー様は私を気遣ってくれているようだ。というか、本当に嫌がらせなんてされるのだろうか。
「確かに、それはありえる。しかしいずれは知られてしまうことなのだし、隠していたと思われる方が反感を買うリスクが高いんだ。」
ありえるのか。女性の嫉妬とやらは恐ろしすぎる。
「そうですね。公にしてしまった方が何かと動きやすいですし、煩わしさもなくなります。リア、構いませんか?」
「ええ、構いませんわ。」
「では、近いうちに婚約披露パーティーを行うことにしましょうか。ロベール伯爵とクラウス殿にも確認して、日程を決めましょう。」
仕事のときと同様に決断が早い。さすがはレイモンド様である。
「それじゃあ私たちも、婚約披露パーティーが終わるまではこちらに滞在しようか。何度も領地と王都を往復するのは疲れるからね。」
「まあ素敵!社交期以外で王都に滞在するなんていつぶりかしら。パーティーの準備も手伝わせてね、ジュリアちゃん。」
「私もお手伝いしますわ!」
話がどんどん進んでいく。婚約のお披露目など思ってもみなかったので、パーティーのイメージが湧かないのだが。しかし、その準備を一緒にやって貰えるのならありがたい。
「はい、ぜひ。よろしくお願いいたします。アンリエール様、ロザリー様。」
「これで決まりね!それじゃあレイモンド、日程が決まったら教えてくださるわね?」
「わかりました。リア、何かあったらいつでも相談してくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
読んで下さってありがとうございます。
誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m
評価の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にして応援していただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!