プレゼント
「婚約披露パーティーの件ですが、3週間後の土曜になりそうです。それで構いませんか?」
パーティーの話が出たのは一昨日だったのだが、レイモンド様はもう日程の調整をしてしまったようだ。さすがに仕事が早い。
「はい、問題ありませんわ。」
「そうですか。では、色々と準備を進めていかなくてはなりませんね。今は仕事の方も落ち着いていますので、問題はないでしょう。」
それからは、またもや忙しい日々が始まった―――
招待客のリストアップ、招待状の準備、料理や飾りつけの打ち合わせ…その他諸々を仕事の合間にこなしていった。
とはいえ、ヴィレット公爵家の皆様が色々として下さったお蔭で、私の負担はほとんどなかった。アンリエール様曰く「言い出したのは私達なのだし、好きでやっているのだから気になさらないで」とのことだった。
確かにアンリエール様もロザリー様も、料理や飾りつけの相談をしている時はとても楽しげだった。お二人の楽しみを奪うのも気が引けたので、お言葉に甘えて、任せられるところは任せることにした。
パーティーまであと1週間となった土曜日、大きな箱を携えたレイモンド様がロベール伯爵家の屋敷を訪れた。
「レイモンド様、これは?」
「どうぞ開けてください。」
返事になっていないのだが。
侍女のライラに箱を開けてもらうと、中から出てきたのは―――
「まあ!素敵なドレスですね、お嬢様。」
ライラの言う通り、とても素敵なドレスだった。
ゆったりと波打つフレアスリーブの袖に、薄い生地を幾重にも重ねたふんわりとしたスカートが印象的な、淡いブルーのドレスだ。スカート部分の生地の重なり具合で青の濃淡が変わり、きれいなグラデーションが生まれている。
「来週の婚約披露パーティーにこれを着て出席していただければ、と思いまして。」
レイモンド様からのプレゼント?この素敵なドレスを、私に?
どうしよう、嬉しくて表情が緩む。淑女たるもの、婚約者とはいえ殿方の前で無邪気にはしゃぐ姿など見せるわけにはいかない。
「…リア?お気に召しませんでしたか?」
必死で平静を保とうと四苦八苦していると、レイモンド様がいつもよりも硬い声で尋ねてくる。
いけない!私としたことが、ドレスに見惚れたままお礼も言わずに、レイモンド様に不快な思いをさせてしまった。
「いいえ!こんなに素敵なドレスをいただけるなんて、とても嬉しいですわ。ありがとうございます、レイモンド様。来週のパーティーで着るのが楽しみですわ。」
「…そうですか。喜んでもらえたようで何よりです。」
返答に少し間があったが、やはりご気分を害してしまったのだろうか。今後はもっと気を付けなければ。
表情や声色は冷たいようでも、政略結婚の相手である私などにこんなに素敵なドレスをプレゼントして下さるお優しい方なのだ。愛し愛され…というのは無理でも、せめて良好な関係を築いていきたい。
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