二人の女子会(2)
「このマカロン、とっても美味しいですわ。フルーツの甘酸っぱい香りが口いっぱいに広がって。」
「トルマ王国産の“イチゴ”というフルーツを使ったマカロンですの。お口に合ったようで、安心しましたわ。」
「トルマ王国の!それは珍しいですわね。どちらのお店でお求めになりましたの?」
「実は、私が作りましたの。ですので、お褒めいただけてとても嬉しいですわ。」
「まあ!ジュリア様の手作りでしたの?とってもお上手ですのね。私はお料理をしたことはないのだけれど、今度挑戦してみようかしら。」
まあ、普通の貴族令嬢は自ら厨房に入って料理などしないだろう。私も少しなら料理を作れるが、シェフがいるので滅多に厨房には入らない。たまにお菓子を作らせてもらう程度だ。
「挑戦する意欲は素敵なものですわ。ただ、厨房はシェフの聖域です。勝手はできませんので、事前にご相談なさることをおすすめしますわ。」
「そうですわね。シェフに厨房を借りられるか相談して、ついでに簡単な料理を教えてもらえるか聞いてみますわ!」
そう言って目を輝かせるオリヴィエ様は、とても生き生きしていた。その後はスイーツのことや本のことなど、他愛もない話をした。しかし、唐突にオリヴィエ様がとある話題を振ってきた。
「ところで、ジュリア様は公爵のことを“ヴィレット様”とお呼びになっているんですの?」
「ええ、王太子補佐付に就任してから、ずっとそうですわ。」
「婚約者なのですから、お名前でお呼びした方がよろしいのではないかしら?殿方は意外とそういうことを気にするそうですわよ?」
お名前…というと……レイモンド、さま?
いやいやいや、無理!
「お名前で、だなんて……いいえ、公爵様にそんな恐れ多いことできませんわ。」
「なにを仰っていますの?いずれはジュリア様も“ヴィレット公爵夫人”になられるのですから、いつまでも旦那様を姓で呼ぶ方がおかしいですわよ。」
「それはそうですけれど…まだ先のお話でしょう。」
「ですが、どれだけ先なのかはまだ決まっていないのでしょう?貴族の婚約期間の平均からすると半年後や1年後かも知れないですけれど、早ければ1カ月後の可能性だってありますのよ?」
まだ式の日取りも決まっていないのは事実だが…婚礼衣装の準備もあるのだから、1ヶ月は無理があるだろう。利害が一致したが故の政略結婚なのだから、そんなに急ぐこともないはずだ。
「ともかく、ずっとそのままの呼び方でいるわけにはいかないのですから、早めに慣れておくべきですわ。いつまでも他人行儀でいては、愛が深まりませんもの!」
後半の方がオリヴィエ様の本音なのだろう。愛…はともかく、政略結婚とはいえ夫婦なのだから、絆を育んでおくのは大切ではある。しかし、名前で呼ぶのはまだまだ先の話になるだろうから、ゆっくり慣れていこう。
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