パートナーに
12/18 サブタイトルと後半のセリフを修正しました。
トルマ王国への支援関連の業務も落ち着き、すっかり通常業務に戻った頃、一通の書状がヴィレット様の元に届いた。
「おや、これはこれは…また忙しくなりそうです。」
「どうなさいましたの?」
「ああ、トルマ王国からの書状ですよ。なんでも使節団を派遣したいとか。今回の援助に対する感謝の意を伝えたい、と。それから、治水や防災設備の視察も兼ねて…だそうです。」
なるほど。使節団の受け入れとなると、それはまた忙しくなるだろう。受け入れに関しては、すぐにでも協議する必要がある。
「そうでしたの。それでは、外務と財務の面々との協議が必要ですわね。後ほど協議の内容とメンバーの草案を作成しますので、ご確認をお願いいたします。」
「相変わらず、ジュリア様は仕事が速くて助かります。ですが、やっと落ち着いたところなのですから、無理は禁物ですよ?」
「お気遣いありがとうございます。ですが、それはヴィレット様も同様ですわ。あまりご無理はなさいませんように。」
そんな軽口を交わしながら、互いに仕事を進めていく。最近では随分と打ち解けてきた気がする。
お兄様が言っていた通りだ。仕事の忙しい時期、いわゆる“修羅場”を共にくぐり抜けると、仕事仲間の結束が強くなるというのは本当のようだ。厳密には、ヴィレット様と私は仕事仲間ではなく上司と部下であるが、細かいことは置いておく。
◇
「え…っと…申し訳ございません。もう一度仰っていただけますか?」
「ええ…大変申し上げにくいのですが、使節団の皆様をもてなすための歓迎パーティーに、私のパートナーとして参加して頂きたいのです。」
聞き間違いではなかったようだ。
トルマ王国の使節団をお迎えするにあたり、パーティーを催すことは別段珍しいことではない。しかし、そのパーティーのパートナー…私が?誰の?
文脈的には、ヴィレット様のパートナーなのだろうが…解せない。私はあくまで裏方だったはずでは?
「驚くのも無理はありません。当初は貴女をこういった外交の場に同席させはしない、という約束だったのですから。」
そうそう、約束とまでは言わないが、そういう話だったはず。ヴィレット様も覚えておいでのようだ。
「しかし、トルマ王国への援助の件にあれだけ尽力して下さった貴女が、このパーティーに参加しないというのも不自然です。この機会にジュリア様にきちんと挨拶したいという文官も少なくありませんし、参加は絶対です。」
えぇ~。なぜそうなるのでしょうか。
しかし、このパーティーは妙な噂(色目を使っただのコネだの)を払拭できる、またとない機会かもしれない。
「不本意かもしれませんが、私がエスコートしましょう。」
不本意などとんでもない!しかし、私のような地味な女がヴィレット様の隣に立つなど、絵面的にどうなのだろう…。
「もったいないお言葉ですわ。とても光栄ですが、そのような席のパートナーが私などでよろしいのですか?」
「私は、貴女がいいのですよ。……ジュリア・ロベール様、よろしければ私のパートナーになって頂けませんか?」
どこかで聞いたようなセリフである。
ヴィレット様の恭しく手を取る仕草と、微笑みすら浮かべない真剣な眼差しにしばし見惚れてしまった。はっと我に返り、慌てて返事をする。
「そのお話、お受けしますわ。よろしくお願いいたします、ヴィレット公爵様。」
「では、決まりですね。よろしくお願いします。」
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