第47話 絶望の光と絆の光
「接続を承認……魂の完全同調プロセス、実行します」
頭の中に響いたその声は、今までの冷酷な機械音ではなく、どこか懐かしい響きを持っていた。
次の瞬間、俺の視界が眩い純白の光で満たされた。
そして、身体の感覚が、急激に拡張していくのを感じた。
「あ……主様の心の中が、聞こえる……?」
血を吐いて倒れていたルナが、驚いたように顔を上げた。彼女の傷だらけの肉体から、痛みが急速に引いていく。
「アルスの……温かい魔力が、私の魂の奥深くまで流れ込んでくるわ」
セレナが自分の胸元を押さえ、驚きと喜びが混ざり合った表情で俺を見つめる。
「旦那様、みんなの魂が一つに繋がっているぞ! ウチ、みんなの気持ちが、旦那様を大好きな気持ちが、全部わかるぞ!」
クララが涙を浮かべながら叫んだ。
『契約魔改造』の極限限界突破――『完全同調』。
それは、主人と従者という隷属の契約を、魂と魂が対等に融け合う絶対の絆の共有パスへと書き換えるチート能力だった。
俺の頭の中に、システムメッセージが怒涛の勢いでスクロールする。
『警告:契約者同士の感覚・魔力・ステータスが完全に共有されました』
『危険:バフ倍率が共有パス内で乗算ループを起こし、指数関数的な自己増殖を開始します』
『倍率設定:制限値を超過。計測不能』
ルナの持つ『神速』、セレナの持つ『無限魔力』、クララの持つ『絶対防御』、そして俺の持つ『デバッガー権限』。
四人のチート能力が互いに掛け合わされ、ループし、全員のステータスが数万倍という神の領域へと跳ね上がっていった。
「これが……俺たちの絆の力だ」
俺が言うと、三人は力強く頷いた。
「はい! 主様の温もりを感じます! 私、もう何も怖くありません!」
ルナが立ち上がり、魔剣を構える。その全身からは、青白い神速の稲妻が激しく放射されていた。
「アルスが側にいてくれる。私の精霊たちも、あなたのために最高の賛歌を歌っているわ!」
セレナの翠のローブが激しくはためき、背後には精霊王たちが巨大な幻影となって具現化する。
「旦那様、ウチの盾は、今なら世界の崩壊だって跳ね返せるぞ!」
クララの持つ『神匠の絶対防盾』が、欠けた部分をオリハルコンの光で瞬時に修復し、眩い黄金の光を放って蘇った。
『グオオオオオオオォォォォン!』
俺たちの異常な覚醒を最大の脅威と判断したオメガ・システムが、八つの頭をすべてこちらに向けた。
竜の口の奥で、吸い込まれそうな漆黒の消滅光球が、太陽のような大きさに膨れ上がる。
『終端消滅光、最大出力。本世界の全データの消去を実行します』
オメガ・システムの放った、すべてを無に帰す漆黒の極太熱線が、部屋全体を飲み込むように襲いかかってきた。
「クララ! 受け止めるぞ!」
「おうよ! 絶対防盾、最大展開――『インフィニティ・ドーム』!」
クララが盾を前に突き出すと、王都全体を包んだあの黄金の結界が、今度は数十倍の密度で凝縮された黄金の盾となって目の前に展開された。
ズゴォォォォォォォォォン!
漆黒の消滅熱線と、黄金の絶対結界が激突し、天地が裂けるような光と音の嵐が吹き荒れた。
だが、クララの一歩は、ミリ単位すら後退しなかった。
「旦那様! 耐えきったぞ! 消滅の力なんて、ウチらの十倍……いや、無限の盾の前にはただの風だぞ!」
クララが叫ぶ通り、黄金の結界は傷一つ負うことなく、漆黒の熱線を完全に跳ね返し、虚空へと散らして消滅させた。
「よし! ルナ、セレナ! 最後の反撃だ! あのデカブツのバリアごと、世界を初期化しようとするバグをデリートするぞ!」
「はい、主様! 光の速さで切り開きます!」
「精霊王の力で、全てを塵にしてあげるわ!」
俺たちは、消滅の嵐を切り抜け、オメガ・システムに向けて一斉に総攻撃を開始するのだった。




