表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
9/401

ブランド服の殺人鬼(3)

由佳は帰り支度を始める。小麦は奥の部屋に引っ込んだ。

「もし宜しかったら、シュークリームをご家族に如何ですか。小麦様が買いすぎてしまって…。」

光琉はシュークリームを四つほど、保冷剤と共に袋に入れる。

「ありがとうございます。あの、気になっていたのですが、小麦さんと光琉さんはどのようなご関係なのですか。」


「小麦様は僕が敬愛している方の姉君です。そうでなければ、あんな我が儘で粗暴で無愛想で偏屈な方と四六時中一緒にいられませんよ。」

「聞こえてるぞ!」

小麦の怒号が響く。


「まさか聞こえているとは…。すみません、つい本音が。」

光琉は棒読みで謝る。由佳は忍び笑いを漏らす。

「少し気が晴れました。また土曜日にお会いしましょう。」

「宜しくお願い致します。」


「小麦様はどう思われます。」

茶碗を片付けながら光琉が言う。

「話すな。ロリコンが移る。」

小麦は冷蔵庫からシュークリームを取り出して机に広げる。

「誤解ですってば。それに僕の外見で小学生相手はまだセーフでしょう。」


「その発想が気色悪いと言うに。その上、外見は兎も角、年齢がアウトだ、愚か者。」

小麦はクリームを頬張りながら言った。

「そんなこと言ったら、老婆を相手にしないといけなくなるではありませんか。嫌ですよ。」

「ええい、この話は止めよ。想像するのもおぞましいわ。」


小麦は漫画を読み始める。

「由佳の話だったな。思い過ごしではないのか。多重人格や何かに憑りつかれている印象は受けなかった。そして、小学生がシリアルキラーとは考えにくい。」

「そうだと良いのですが。あの家の誰かが犯人である可能性が高いと思いますよ。」

小麦は頁を捲る手を止めた。


「何故だ?」

「あの写真の人物が着ていたブランドは日本で販売していません。もっと言えば流行したのは十年も前のことです。そして、妹さんが着ていた私服が、全く同じブランドの物でした。まさか近所に同じブランドの服を持っている人はいないでしょう。」

小麦は考え込んだ。


「犯人は誰だと思う?」

「情報が足りなすぎます。しかし、小麦様が仰ったように、誰も疑わしくないというのが僕の所感です。」


光琉は事件について調べ始めた。事件はここ数か月で起こっている。人々の関心は高いようだ。しかし、援助交際を行っていたということで、被害者への同情は薄い。ネットでも既に犯人の予測が立てられている。


「この写真の方が鮮明だな。」

服装は全く同じだが、由佳が見せた写真とは一緒に写っている男性が違う。由佳に似ているようだが、化粧の濃さと大きなコートのせいで何とも言えない。

何処で入手したのか、被害者の死んだ時の写真まであった。服は全く乱れておらず、目だった外傷もない。どんな凶器を使ったにせよ、普通の女子に出来ることではないだろう。


「顔が蒼白いな。それなのに、もがいた形跡がない。周囲の人も悲鳴を聞いてはいない、か。」

小麦がいきなり覗き込んできた。

「薬を盛ったか…犯人が此方側だったか。恐らく後者でしょうね。」

「面白い。由佳に会うのが楽しみになったぞ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ