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狼と呪いの紅玉  作者: 馬之群
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狼の連続死(3)

小麦は血生臭く、毒々しい色の液体を持って光琉の部屋に入ってきた。若葉は光琉の寝床を片付け、光琉は座ってパソコンを弄っていた。

「どうして起きている?私が来たからと無理に起きるな。寝ていろ。」

光琉は慌てて言った。

「小麦様の看病のお陰でもう全快致しました。どうもご親切にありがとうございました。」


小麦は得意げに笑う。

「そうか。特製粥が良かったのだな。」

光琉はもっとはっきり嫌味を言わないと伝わらないと思い、言い直した。

「それはもう、筆舌に尽くし難い味でしたよ。ヴァンパイアとなる時に味わった辛さに匹敵しました。」


「今度の飲み物は会心の出来だ。折角だから飲んでみろ。」

小麦は悍ましい飲み物を光琉の鼻先に持ってくる。

「本当に…無理です。」

光琉は顔を引きつらせる。小麦はしおらしい態度になった。


「そんなに酷いか。」

若葉がすかさず言った。

「光琉はヴァンパイアです。ウェアウルフと味覚が異なっているのかもしれません。差し支えなければ、私が味見させて頂いても宜しいでしょうか。」

光琉は小麦の死角に入っていることを確かめ、若葉に向けて小さく首を横に振った。


「良いだろう。さあ、飲め。」

小麦はコップを若葉に渡した。若葉はコップを持ったまま、息を整えている。

「あの、小麦様。若葉さんもそう凝視されては飲みづらいでしょう。暫し席を外されてはどうですか?」

光琉は小麦に訴えた。


「いいえ。今飲みます。」

言うなり若葉は毒杯を呷った。光琉は若葉の身を案じたが、若葉は大女優も顔負けの名演技で微笑んでいる。

「野性味溢れる…濃厚で力強いお味ですね。とてもパンチが利いていて味わい深いです。」


「本当か?」

小麦は露骨に喜んだ。変身していれば尻尾を振っていたことだろう。

「はい、小麦様…。」

光琉は若葉の身を案じて小麦を追い出した。


「まだ間に合う。全部吐くんだ。」

光琉はゴミ袋を持ってきた。若葉は首を横に振る。

「小麦様に気を遣っているのだろうけど、若葉さんが病気になった方が小麦様は悲しまれるよ。さあ。」


若葉は真っ青になりながらも躊躇していた。光琉は更に言った。

「分かった。僕は小麦様を連れて散歩に行くから。三十分以内に体調を治しておいてくれればいいよ。じゃあね。」


光琉は小麦の所まで行き、散歩に行かないかと申し出た。小麦は快諾し、二人は桜の咲く公園まで向かった。


「僕が寝込んでいる間に何か御座いませんでしたか。」

光琉は徐に言った。

「Y県でウェアウルフが殺されているようだ。名の知れた者たちが、変身した状態で一方的にやられている。現場の状況から、相手は単独犯か、精々二人組の可能性が高い。血の濃いヴァンパイアの仕業だろう。今、真珠に調査を依頼している。」


光琉は驚いた。行動があまりに大胆過ぎる。何が目的なのだろう。

「玉兎ではなく、真珠に依頼なさったので?」

光琉は尋ねた。小麦は光琉の方を見た。

「真珠を知っているのか。」

「名前と顔くらいは。彼は玉兎に比べて権限がないはずでしょう。」


小麦は舞っている桜の花弁を空中でそっと掴んだ。

「まだ玉兎に話せるほど情報が揃っていない。真珠も期待出来ないが、何もしないよりマシだ。」

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