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妄想ファンタジスタ  作者: 弥生遼
その五、激闘の聖地
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激闘エスVSエム~前編~

 やがて光が収束すると、そこには変身したカノンの姿があった。やった、成功だ!

 と思ったのも束の間、カノンが悲鳴にも似た叫び声を上げた。

 「な、何よこれ!」

 カノンが着ていたのは、マリアさんばりのビキニアーマーではなく、まさかのメイド服!

 「ちょっと!どういうことよ、シュンスケ!」

 「こっちが聞きたいわ!」

 やっぱり僕の力が未熟だからなのか?ちゃんとマリアさんのことを想像したのに。

 僕の疑問を氷解してくれたのは、カメラ小僧を筆頭とするギャラリーであった。彼らは、突然の変身劇には何ら反応を示さず、寧ろ変身後のカノンの姿に反応していた。

 「おいおい、あれって『メイドと執事のあれやこれ』のメイド服じゃないか」

 僕の傍にいた誰かがそう呟いた。そうだ!あの衣装は『メイドと執事のあれやこれ』でヒロイン雪平なぎさ達が着ているメイド服だ。やたら短いスカートとやや胸元が開いた襟元が特徴的なのですぐに分かる。

 そして僕は悟った。『スクールホイップ』のマリアさんの声優は田井中理恵子さん。そして田井中さんは『メイドと執事のあれやこれ』で真田瑞穂というメイドの声も当てていたのだ。僕のどこかでこの二つが交じり合ってしまったのだ。

 うわぁぁっ。憎い。本当に僕の力のなさが本当に憎い。でも、個人的にはありだと思うぞ、カノン。

 「ぷぷぷ。何、その格好?暴力女にメイド服。似合わないにもほどがあるわよ。それで『はうぅ、お帰りなさいませご主人様』とか言っちゃうの?キャハハハ、ヒーヒー。脇腹痛いわぁ……」

 サリィが腹を抱え大爆笑していた。羞恥でカノンの顔がみるみるうちに赤くなる。

 「な、なしよ。これはなし!シュンスケ!ちゃんとマリアさんみたいな衣装を出しなさいよ」

 慌てふためくカノン。そうしてやりたいのも山々だが、次が必ず成功するとも限らない。もっとひどい衣装になる可能性だったあるのだ。

 僕がその可能性を口にすると、カノンは、使えない力ね、と悪態を吐きながらも、目には失望の色が見えていた。

 「もういいわよ!これで戦うわ。その代わり、帰ったら折檻だからね」

 諦めたようにサリィと向き合うカノン。折檻?この事態は僕が悪いのか?

 「あらあらいい覚悟ですこと。その格好のまま首輪をつけて精一杯ご奉仕してもらおうかしら」

 「ふん。どんな格好だろうと、実力の差を見せてあげるんだから」

 威勢のいいことを言うカノン。サリィと対峙しながらも、何かを寄越せと言わんばかりに右手を僕に向けてくる。

 「な、何だよ」

 「何だよ、じゃないわよ。武器よ、武器。魔法でもいいけど、今日は武器で戦うわ。むしゃくしゃしているから」

 ついに魔法少女としてのプライドを捨てやがったのか。まぁ、本人がそれで言いというのなら構わないだろう。

 「ほら、早く。剣とか槍とか、そういうカッコいいやつ」

 「はいはい」

 あくまでも騎士風に拘るカノンだが、メイドの武器と言えば一つしかない。僕は素早くモキボを操作した。

 カノンの右手が光だし、棒状に伸びていく。次の瞬間、ぱっと光が消え、カノンの手に握られていたのは、モップであった。

 「ば、馬鹿にしているの!」

 カノンがモップを振り上げた。当然、その矛先(?)は僕の方に向いている。

 「待て待て。メイドの武器と言えばモップだろ。日本刀でもいいと思ったんだが、あざといし、新鮮味がないからな。だったら、古典中の古典、セオリーに則る方がいいだろう」

 「意味分かんないわよ!」

 「大丈夫だ。そのモップはただのモップじゃない。蒟蒻とナタデココ以外は何でも破壊できる斬鉄モップにしておいたから」

 そう念じてモキボを操作したのは間違いない。それが上手くいっているかどうかまでは保証できないが。

 「そ、そう」

 単純なカノンは、どうも強い武器らしいと分かると、急に機嫌をよくした。まぁ軽い折檻で勘弁してあげるわ、と聞き捨てならないことを口走りながら再びサリィと対峙した。

 「ま、待たせたわね」

 「ふわぁ。長いわよ。もうなんか、やる気なくなってきたんですけど……」

 本当に眠そうな欠伸をかますサリィ。やる気がないのなら、このまま帰ってもらってもいいぞ。

 「でも、うちの禿……じゃなかった、ボスがうるさいのよね。あんたを引っ張り出さないと気がすまないらしいから」

 サリィが面倒くさそうに『凍える氷の杖』を出した。空気が一瞬冷やりとしたが、カメラ小僧達はまるで寒がる様子もなくカメラを構えている。こいつら、急に変身したり、モップや杖が急に出てきても何とも思わないのか……。

 「たぁぁぁっ!」

 まず駆け出したのはカノン。斬鉄モップ(仮称)を両手に持ち、サリィ目掛けて突進する。

 それに対してその場に留まったままのサリィが『凍える氷の杖』を地面に突き立てる。何やらごにょごにょと呪文のようなものを呟くと、『凍える氷の杖』を囲むように七つの氷柱が出現した。いずれも先が鋭利にとがっていた。

 「行けっ!ぶっ刺してあげる!」

 ひゅんと風を切る音をたてて氷柱が飛んでいく。カノンは立ち止まって斬鉄モップを振るって粉砕していく。

 しかし、サリィは次々と氷柱を量産。カノンに攻撃する暇を与えない。

 「くそっ!」

 氷柱をかわそうとジャンプするカノン。カメラ小僧達が一斉にシャッターを切る。しかし、氷柱はホーミングミサイルのようにカノンを追尾してくる。

 「しつこいわね!」

 着地したカノンが追尾してきた氷柱を破壊する。カノンは次の攻撃が来るかと身構えていたが、サリィは頬をぷくうと膨らませ、必死に笑いをこらえていた。

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