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妄想ファンタジスタ  作者: 弥生遼
その五、激闘の聖地
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クラスチェンジ!

 「あら?カノンじゃない」

 カノンの登場にさして驚く様子もなく、サリィは余裕の笑みを浮かべた。

 「サリィ。ここであったが百年目よ。勝負なさい!」

 左手を腰に、右手でサリィを指差すカノン。その芝居がかった仕草に、歓声とフラッシュの嵐が起こった。

 「おお!レイヤー同士の寸劇だ」

 「あれって、『キュアキュアバスター』のレイン決め台詞だよな?」

 「も、萌えぇぇぇぇぇ」

 口々に独り言を言いながら、シャッターを切りまくるカメラ小僧達。気持ちは分かるが、頼むからやめてくれ。

 「な、何よ?これ……」

 フラッシュに目を細めながら戸惑うカノン。だからやめろと言ったのに……。

 「ふふん。その貧相な体じゃ、撮られるのも嫌よね。いいわよ、尻尾を巻いて逃げても」

 わざとらしく胸をそらし、その豊満さをアピールするサリィ。さらにフラッシュが激しくなる。

 「ぐぬぬぬぬ!」

 怒りに震えるカノン。その様子もカメラ小僧達には受けているようで、シャッター音が鳴り止まない。

 「シュンスケ!シュンスケ!」

 カノンがこっちに戻ってきた。来るな来るな、関係者と思われたくない。

 「さっきの店でマリアさんの衣装買ってきて、すぐに」

 「待て待て待て!なんでそうなる!」

 「サリィに対抗するにはそれしかないでしょう!」

 とか言いつつ、本当は欲しいだけなんじゃないだろうか。正直なところ、僕の財布の中には、コスプレ衣装を変えるほどの現金は入っていないぞ。

 「何しているのよ?あら、あんたは……」

 サリィがゆったりとした動作でカノンを追ってきた。うわぁ、見つかってしまった。

 「物好きね。そんなに私に罵られて虐げられたいの?いいわよいいわよ」

 存分に虐めてあげる、と接近してくるサリィ。

 周りから見れば新たな登場人物の出現と思われたのだろう。やんややんやと歓声が一層大きくなる。挙句には、羨ましいぞ、と声をかけられる始末。羨ましいと思うのなら代わってくれ。

 「カノン。もう何でもいい。とにかくあいつをとっちめろ!」

 「嫌よ。私、マリアさんの衣装じゃないと戦いたくない」

 ぷいっと拗ねるカノン。こいつ、本当にただ欲しいだけじゃないのか。しかも、戦いを拒否するなんて卑怯だぞ。

 「あら、仲間割れ?いいわねぇ」

 と僕を後から抱きすくめるサリィ。ほわぁぁぁ、胸が胸が……。でも、ドSのサリィにこんなことされても嬉しくないぞ。ええ、ちっとも嬉しく……。

 「う、羨ましいぞ」

 「リア充め、オタクの敵!」

 「カメラって意外と硬いんだよね。殴られると痛いだろうな……」

 カメラ小僧達もヒートアップしていく。中には物騒なことを口にする輩もいる。こいつら、うちのクラスの奴らとそっくりだな。

 「ちょ、何しているのよ。シュンスケから離れなさいよ」

 「別にいいじゃない。あんた、彼のために戦わないんでしょう?だったら、ここで彼と私が何をしようと構わないじゃない」

 ねぇそうでしょう、とサリィの右手が服の中に侵入してきた。いやん、そこは……。

 「ああ、駄目ぇ。乳首は……」

 「うふふ。敏感さんね。これは虐めがいがあるわぁ」

 「た、頼む!カノン、助けてくれ!このままじゃ、普通の人間として生きていけなくなる気がする」

 苦虫を噛み潰したような顔をするカノン。助けたいのは山々だが、このまま素直に助けていいものかどうか迷っているという感じだ。そこまでマリアさんの衣装が欲しいのか。

 「分かった分かった!望みどおりにしてやる。その代わりどうなっても知らんぞ」

 僕はサリィの拘束を振り解いた。少し距離を取り、モキボを出現させる。

 マリアさんの姿を思い描きつつ、キーボードを叩く。

 【カノンがクラスチェンジをした。パワーアップし、魔法戦士となった】

 僕は迷うことなくエンターキーを押した。するとカノンの周囲は光に包まれた……。

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