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血塗られた大楽刀自  作者: 西季幽司
第三章「美しき容疑者」
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大楽香美・その四

 和正に言葉に、香美は「違います!」と声を荒げた。

 香美の剣幕に、「ご、ごめん。ごめん。僕はてっきり・・・」と和正が慌てて謝った。夜勤明けで休みだったので、家でゴロゴロしていたら、母親から「暇なんだったら、香美ちゃんを迎えに行って頂戴」と頼まれた。

 村田家に引っ越して来てから、香美の学校が遠くなってしまった。朝晩、新しく雇い入れた家政婦が車で送り迎えをしていたのだが、今日は子供が熱を出したと言うことで、午後から早退してしまった。そこで和正に白羽の矢が立った訳だ。

「ああ、良いよ」と車で来た。

 小学校の門前で待っていると、香美が友達に囲まれるようにして校舎から出て来た。女の子ばかりで、香美はまるで女王様のように見えた。和正に気がつくと、嬉しそうに手を振った。友達が何かを言って、わっと湧いた。和正のことをからかったのだろう。

 香美は友達にさよならを告げると駆けて来た。若く、見栄えの良い叔父が迎えに来てくれたことが自慢のようだったようだ。

「叔父さん。お待たせしました。迎えに来てくれたのね」とませた口をきいた。

「香美ちゃん。行こうか」

 和正が香美の為に助手席のドアを開けた。

 車をスタートさせ、「今日はあの時のボーイフレンドがいなかったね」と何気なく言うと、香美が「違います!」と声を荒げたのだ。

 大楽家を後にする時、車を追いかけてきた河村真一のことを言ったのだが、「あの子はボーイフレンドなんかじゃありません」と手厳しかった。

「車を追いかけて来たから、てっきり仲良しだと思っただけだよ。ごめんね。じゃあ、彼は香美ちゃんのファンなんだね?」

「ファン? う~ん、それも違いますね」

「はは。じゃあ、何だろう?友達でもない、ファンでもない・・・」

「私のしもべ」

「しもべ? 難しい言葉を知っているんだね。しもべね。家来みたいなものかな? ちょっと彼が可哀そうな気がする」

「ううん。私が言っているんじゃなくて、あの子がそう言うの。僕は君のしもべだよって――」

「はああ~最近の子供は――」と和正が絶句する。

――女王としもべ。

 真一の愛情表現だとすると、無邪気で可愛らしいのだが、そうでないならば――和正は二人の関係性に、傷ついた箇所を触られるような不快感を覚えた。

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