エピローグ3
ソウヤは苦笑する。
「本当にクレハさんには敵いません」
「ソウヤさん?」
「これでも別れたいと言われるのを覚悟して話したんですよ? それなのに貴女は簡単にその覚悟を吹き飛ばしてくれます」
きっと逆の立場ならクレハも同じ覚悟をしたかもしれない。
「だってソウヤさんとお別れするの嫌でしたから。こんなに好きにさせておいて、今更遅いですよ」
そう、もう遅い。
確かに危険な目には遭ったがそれでもソウヤを好きな気持ちに揺らぎはない。
「クレハさん……」
ソウヤの瞳が揺れる。
クレハは微笑んで告げる。
「ソウヤさんが大好きですよ」
大きく目を見開いたソウヤがーー顔を覆った。
思いがけない反応にクレハは驚いた。
「ソウヤさん?」
「すいません。嬉しいです。ですが、少し待ってください」
指の隙間から見える肌が赤い。
どうやら照れて真っ赤になっているようだ。
珍しい。
そして、嬉しい。
思わず頬が緩む。
本当は見ていたいところだがさすがにそれは意地悪になってしまうので、視線を外し、すっかり冷めてしまった紅茶を飲む。
しばらくして復活したソウヤがクレハを見て微笑む。
もういつものソウヤだった。
「もう少ししたら後処理も終わります。そうしたら出掛けませんか?」
「はい、是非」
クレハは笑顔で頷いた。
会いたかったのはクレハも同じだ。
ソウヤが嬉しそうに微笑う。
「またピクニックに行きませんか?」
クレハから提案する。
「いいですね。またあの丘に行きますか?」
「どこでもいいですよ。ソウヤさんとならどこででも」
「くっ……。貴方は本当にっ」
クレハはきょとんとする。
何か変なことを言っただろうか?
ソウヤにじとっとした目で見られる。
「……テーブルが間にあるのが残念です」
「え?」
「後で覚えていてくださいね?」
「え? え?」
クレハは目を白黒させた。
ソウヤは微笑んだ。
いつもの微笑みだ。
またクレハをからかったようだ。
「冗談です……とは言いませんから」
目だけが微笑っていない。
クレハは固まる。
「クレハさんはいい加減に自分の魅力を自覚するべきです」
「へ?」
「そうでなければいつか大変な目に遭いますからね」
もう、遭っている気がする。
「お、お手柔らかにお願いします」
そう言うしかない。
ソウヤはにっこりと微笑う。
「さて、それは、どうでしょうか?」
「本当にお願いします。そもそもそんなことを言うの、ソウヤさんだけですからね?」
告白されたのもソウヤにだけだ。
ガイルは、明確に言葉にされていないから除外でいいだろう。
「だからご自分の魅力を知らないと言っているのです」
「本当によくわかりません」
「それはおいおい、やはりしっかりとわかってもらうことにしましょう」
ぶるりと震える。
先程までの殊勝な態度は何だったのか。
別れる別れないの話をしていた時とまるで違う。
どこか身の危険すら感じる。
ソウヤがくすっと微笑って表情を緩めた。
もういつものソウヤだ。
「まあ、今は、せっかく久しぶりに会えたのですからこの時間を堪能しましょう」
「あ、はい」
「この後、どこに行きましょうか?」
「ソウヤさん、お仕事は?」
「今日一日休みです」
「ではのんびりできますね」
「はい。それでどこか行きたいところはありますか?」
「どこででも」
ソウヤが軽く首を傾げる。
「行きたいところはありませんか?」
「ソウヤさんと一緒ならどこでもいいです」
クレハは微笑んで告げる。
「ソウヤさんと一緒ならきっとどこででも楽しめます」
「本当に、貴女という人は」
ソウヤは片手で目元を覆って天を仰ぐ。
それをクレハはにこにこと微笑って見ていた。
読んでいただき、ありがとうございました。
これにて本編完結です。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
一つだけ番外編を上げたいと思っています。
思ったより長くなっておりまして、まだ執筆途中のため、書き上がりましたら投稿します。
それまでお待ちいただけましたら幸いです。
本当にありがとうございました。




