救出5
ソウヤが溜め息をつく。
それから意識を切り替えたようだ。
「連絡をくれたのは貴方ですね?」
ソウヤの言葉に驚く。
「届いたようでよかった」
クレハはガイルに視線を向ける。
「どういうこと?」
少しだけむくれたような顔でガイルが言う。
「俺だってさすがに一人で乗り込むような無謀なことはしない」
助けが来るのを確信していたような様子だったのはそういうことだったようだ。
「でもよく連絡をつけられたね?」
クレハだってソウヤにどう連絡をつければいいのか知らないのに。
「……まあ、付けていて偶然知ったんだ」
後ろ暗いと思っているのかガイルは視線をすっと逸らした。
クレハは驚いてソウヤを見上げる。
「大丈夫なんですか?」
ガイルにそんなことを知られて大丈夫なんだろうか?
それも素人につけられてバレてしまうなど、失態になってしまうのではないのだろうか?
そんな気持ちが顔に表れていたのだろう、ソウヤが安心させるように微笑む。
「バレても問題のない範囲ですので大丈夫ですよ。あの男が私の周囲を探っていたのは知っていましたし」
知っていて、敢えて放置していたのか、どうでもよかったのか。
とにかく想定内であるので問題ないらしい。
よかった。
クレハの表情がほどけたのを見てソウヤが心配していたことを訊く。
「そんなことより、あの男と一緒に閉じ込められて大丈夫でしたか?」
「あ、はい。大丈夫です。ガイルは、助けに来てくれただけなので」
「本当ですか?」
「本当です」
だがソウヤは疑いの眼差しをガイルに向ける。
「勧誘されていませんでしたか?」
クレハは驚いてガイルを見る。
ガイルは軽く鼻を鳴らした。
「クレハを手に入れたいなら協力してやるとは言われたけどな。そもそも純血主義者なんて信じられるか」
「おや、純血主義否定派ですか?」
「そんな大層なもんじゃねぇよ」
クレハはガイルが純血主義者を信じない理由がわかるので驚くことはない。
だがその理由を知らないソウヤは訝しげだ。
「あいつらはそもそも俺を認めないだろうよ。混血だからな」
「は?」
ソウヤが驚いたようにクレハを見てきたので、クレハは頷いた。
狼の獣人は一族で結婚することが多いので純血であることが多いが、もちろん他の獣人と結婚する者もいる。
ガイルの祖父がそうだった。
本家の生まれだったが、家を継ぐわけではない男だったから許された。
「祖父が狼の獣人でクレハの祖母の弟で、祖母が山猫の獣人なんだよ」
ちなみに彼らの息子であるガイルの父親は狼の獣人を伴侶に選んだ。
ガイルが縄を切ったり、……クレハを傷つけたように爪を伸ばせるのはその祖母の血によるものだった。
「ああ、なるほど」
ちらりとガイルの手を見たソウヤはそのことに思い至ったのだろう。
「それなら純血主義者とは相容れませんね」
「そういうことだ」
ソウヤは納得したようだ。
それならそろそろ離してほしい。
ソウヤが助けに来てくれた安堵で抱きついてしまったが、冷静になった今ではガイルの前で抱き合っているのはさすがに恥ずかしい。
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