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はじめての薬草採取

昨日は、まぁ――散々だった。


家に帰って、頬のアザについて説明したら、家族全員に大爆笑された。


とくに親父なんて、腹抱えて笑ってやがった。


(ほんと、笑いごとじゃねぇんだけどな……)


で、今日はその“原因”である薬師のお婆さんの家に謝罪へ向かう。


手ぶらってのもアレだし、昨日しとめた鳥の肉をお土産にすることにした。


(……本当はすっげぇ食べたかったけど、さすがに昨日のは俺が悪いしな)


気温も低いし、葉っぱを新しいのに取り替えておいたから臭みも出てない。


保存状態もバッチリだろう。


トントン、と戸をノックすると、中から声が返ってきた。


「おや、入っておいで」


扉を開けて中へ入ると、薬師のお婆さんが座っていた。


「やっと来たねぇ。まったく、ずっと待ってたんだよ」


「すみません、完全に忘れてました……」


素直に謝ると、婆さんはにこっと笑って――


「ふふ、素直なところはいいねぇ」


「これ、お土産です」


「なんだい?」


「昨日、“クロアカドリ”をしとめたんです。夜は冷えてたんで、臭みも出てません」


「おやまぁ、クロアカドリとは……それは随分と大物だねぇ」


婆さんは目を細めて、嬉しそうに受け取ってくれた。


(……食いたかったけど、まあ……いいや)


「そうかいそうかい。ありがとねぇ、ルクス」


ふと奥を見やると――そこに、いた。


金髪の少女。レティシア。


昨日、俺の顔に拳を叩き込んできた張本人。


ちらっと目が合ったけど、すぐにフンッと顔をそらされた。


(まだ怒ってる……)


お婆さんが、ゆっくり話しはじめる。


「おばあちゃんもねぇ、もう歳で山を長く歩くのはキツくなってきたのさ」


「だから、この子――レティを手伝って欲しいんだ」


俺が頷くと婆さんは続けた。


「それにね、ガロンからも言われてるんだよ」


「“薬草の知識はあいつに覚えさせてほしい。必ず役に立つ”ってね」


(……師匠……そう言ってたのか)


なんか、ちょっとだけ背筋が伸びる気がした。


「いい師匠をもったねぇ」


婆さんの笑顔が、なんかあったかかった。


しばらくしてから――


「じゃあ、さっそくお願いしようかね」


ということで、俺とレティシアは一緒に、山へ薬草を取りに行くことになった。



冷たい風が吹く中、俺たちは山道を登っていた。


前を歩くのは、金髪のレティシア――昨日、俺をぶん殴った張本人だ。


「なあ、どんどん先に行くなって。レティシア、おい!」


呼びかけると、彼女の背中がピクリと揺れた。


「昨日は悪かったって。……機嫌、直せよ」


それでも、彼女は振り向かない。


ちょっとだけ足を速めて、さらに前を行く。


「おいって、レティ――」


「気安く“レティ”って呼ばないで!!」


ビシッと鋭い声が飛んできた。


そのまま、レティシアは一度だけ俺を振り返ると、冷たい瞳で言い放つ。


「私はいい加減な男が嫌いなの。守れない約束なんてしないことね」


「カッコ悪い男は、もっと嫌いよ」


(うわ……言葉の刃がエグい……!)


「……あんたは、籠でも持って突っ立ってなさい」


そう言って、またスタスタと歩いていく。


(コイツ、キッツイな~~)


でもまあ、今回は俺が悪い。


謝るべきところは謝らないと、男が廃るってもんだ。


俺は黙って、彼女の後ろをついていった。


しばらく歩くと、レティシアがしゃがんで草を摘み始めた。


「なぁ、今採ってるその草、なんて名前だ?」


「これは“ヒサギ草”。傷薬になるの。煎じて塗るといい」


短く答えながらも、手は止めずに草を摘んでいく。


「こっちは、“ニバミの葉”。お腹が痛い時に煮て飲むの」


次々と植物を教えてくれるレティシア。


無駄のない動きと、的確な手際に見とれそうになる。


「その樹液は?」


俺が指差すと、レティシアは細い竹の筒のような容器に樹液を流し入れていた。


「これは“カラサ樹”の樹液。薬を固めるのに使うのよ。乾くとカチカチになるから、それを砕いて、水と一緒に飲むの」


「へぇ……」


「相性が悪い組み合わせもあるけど、それはおばあちゃんに聞いて」


ぶっきらぼうだけど、薬の知識については真剣で、質問すればちゃんと答えてくれる。


(……なんだかんだで、頼れるヤツかもな)


そう思いながら、俺は黙って籠を差し出した。


森の奥、静かな空気の中――突然の気配に、俺の足が止まる。


(……猪?)


茂みの先にいたのは、想像よりも一回り大きい“イノクマ”だった。


(でけぇな……あれはちょっとヤバい)


イノクマはこちらに気づいて、鼻を鳴らした。


逃げてくれりゃいいが――


「……ッ」


レティシアが、ピクッと肩を震わせて一歩下がる。


(……やばい、怯えてる)


動物ってのは、こっちが弱いと見ると突っ込んでくることがある。


そして、最悪なことに――


ズダダダッ!


猪がこちらへと突進を始めた。


しかも、狙いはレティシア。


「――レティ、避けろっ!」


だが、レティシアは驚いて後ずさり、足を滑らせて尻餅をついた。


その場で身をすくめ、動けなくなってる。


(間に合わねえ!)


俺は咄嗟に身体強化を発動し、地面を蹴った。


「うおぉぉっ!」


全力でレティシアの手を掴み、グッと引っ張り起こす。


イノクマは俺たちのすぐ前でブレーキをかけ、ぐるっと旋回して再び狙いを定めてくる。


(俺がやるしかねぇ……!)


籠に入れていた弓を素早く取り出し、矢をつがえる。


腕に魔力を流し、ギリギリと弦を引ききった。


――猪が正面を向いた。


今だ。


「はぁぁっ!」


ヒュン――


矢は一直線に空を裂き、イノクマの額に“ズドン”と音を立てて突き刺さる。


その場で立ち止まった猪は、ゆっくりと崩れ落ち、ビクリと痙攣したあと、動かなくなった。


一撃だった。


弓をおろし、俺は振り返ってレティシアに声をかける。


「大丈夫か、レティシア」


彼女は目に涙を浮かべて、こちらを見ていた。


でもその目が合った瞬間、はっとしたように慌てて涙をぬぐい、


「……こっち、見ないで!」


そのまま、俺の頬をパシンと叩いてきた。


「いった……!」


思わず押さえると、レティシアはバツが悪そうに目をそらして――


「……ごめん」


それから、ぽつりと一言。


「助けてくれて……ありがとう」


なぜ叩かれたんだ?

痛いのだが…


レティはなぜか、ちょっと切なそうな顔だった。


とりあえず俺は、身体強化を使ってイノクマの足を縛り、木に吊るして血抜きを済ませた。


今日は薬草摘みだけの予定だったのに、解体までやるには時間が足りないし、レティシアもだいぶ気力を削られているようだった。


(今日は帰るか……)


「……兄貴の誰かに声かけて、あとで手伝ってもらうか」


そう呟いて、俺たちは山をあとにした。



「……で、そういうワケなんだ」


夕暮れ前、家で事情を説明すると、次男――一つ上の兄貴が眉をひそめた。


「お前、また面倒なことに首突っ込んだなぁ……」


「悪いって。でも頼むよ、手伝ってくれ。今日中に処理しないとマズい」


そんなやりとりのあと、俺たちは急ぎ足で山に戻った。


体感で三時間くらいか。陽が傾きかけてる。


そして現場に戻った瞬間――


「……うげっ!」


兄貴が顔をしかめて止まった。


イノクマの死体に、何羽もの野鳥が群がっていた。嘴で突っつき、皮を裂いては肉をついばんでいる。


(……そうか。解体前の肉って、こうやって狙われるんだな)


俺はゆっくりと弓を構え、呼吸を整えて――


「……っせい!」


シュッ――バサァッ!


一羽の鳥が矢に貫かれて落下すると、他の連中はビビったのか、少し離れた位置でこちらの様子をうかがい始めた。


この隙に片づけるしかない。


「兄貴、やるぞ。急いで食える部分だけ持って帰る」


「あ、ああ……」


さすがに次男も緊張しているが、手際は悪くない。


ナイフで切れ目を入れ、俺が肉を剥ぎ取っていく。


(皮は……ズタズタだな。鳥のせいで商品価値ゼロ。これは無理だ)


腹の部位と太もも、あとは肩の筋肉部分。


結構おっきかったのでなかなかの量がとれた。


「よし、これで十分だ。兄貴帰ろう」


俺たちは肉を籠に詰め直し、急ぎ足で山を降りた。


【ステータス】

名前:ルクス

年齢:8歳

種族:人間(村人)

職業:狩人

出身:ユレリ村

現在の欲望:薬師の金になる薬草の取り方を教えてもらう

スキル:

・弓術 Lv2

・解体術

・矢製作

・身体強化

・精密射撃

・隠密

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