第九話
その後、ギルドに向かい受付から個室に案内されるとそこにはトウマ君がいた。
見た目は好青年で、転生した際にイケメンになったのか元からイケメンなのかわからないが、十人中十人が振り返るであろう程の美男子。
サイドを固めるのは、けっこうな美人さんと頭の良さそうなお兄さん。どちらも、かなりの高レベルなのはステータスを見る以前にわかる。
「獄炎のイーフさんですね? 初めましてトウマといいます」
「パーティーメンバーで僧侶のズーです」
「同じく魔法使いのガーボ」
「皆さんこんにちは、私は魔法剣士のイーフと申します」
「拙者は偉大なるツカサ様の従者を務めるバサシである。ツカサ様の御前である頭が高い」
「え? ツカサ? バサシ?」
「リート君ちょっとあっち行こうか?」
ぽかんとするトウマ君一行から一旦離れてバサシを詰問した。
バサシはもはやお家芸の土下座を披露して、初めてだから舐められてはいけないと思い気合が入ってしまった。申し訳ございません。と何度も言うので許してやった。
ただ……
「くだらない事で時間を割いてしまいましたな、さっさと席に戻りましょう」
と前回同様、砂埃をさっと払いのけすぐさま切り替えるバサシには少々腹が立つ。
俺がどう言い繕うか考えているとバサシが、冒険者で偽名を使うのは珍しくなく普通の事。だから、こちらが本名だと正直に打ち明けてしまえば問題ないと言う。
とりあえず、長年この世界にいるバサシの言葉を信じて席に戻る。
「トウマ殿すみません、実はイーフとは偽名で本名はツカサといいます。こちらの弟子は普段はリートと名乗っていますが、本名はバサシです。どちらも珍しい名前ですが、私たちが育った孤児院では普通の名前でしたのであまり気にしないでいただけるとありがたい」
「珍しい名前なんていっぱいあるからねー気にしない気にしない」
「ツカサ…… バサシ……」
「ほらほらトウマも気にしない気にしない!」
「だけど…… ちなみにその名前って誰が付けたんですか?」
「あまり過去の事を詮索するのは良くないぞトウマ」
「……わかりました、でももしその孤児院の事話してもいいと思ったらいつか聞かせてください」
「かしこまりました、もう随分昔の事ですがそのうちお話いたしましょう」
「ところで今日はどのようなご用件ですかな?」
「僕たちは魔王を討伐すべく旅をしています。そこで是非ともイーフさんにも力を貸して頂きたくお願いに来ました」
「そうですか、確かに魔王を倒さぬ限り人類に未来はないでしょう……しかし、トウマ殿にそこまでの力があるのですかな? その力がないようなら従うことはできませんな」
「えートウマ本当に強んだから一緒にきてよー」
「ズーさん、イーフさんはまだトウマの力を直接見たわけではないのですから無理強いはいけませんよ」
「でもートウマより強い人なんていないんだから、完全に規格外だもん」
「それは間違いありませんが、やはり実際に見てみないとトウマの化け物具合はわかりませんから」
「あのーもうちょっといい感じにフォローしてくれません、それだど僕が化け物みたいじゃない?」
「「その通りだよ!」」
「あはは、イーフさんすみませんね」
「で、実力を見せるって事ですがこれでどうでしょうか?」
トウマ君がそう尋ねると、俺の首筋にはトウマ君の剣が当たっていた。もちろん余裕で見えていたし、トウマ君の剣が首筋に当たるまでにバサシがキレそうになったのをなだめて落ち着かせ納得させたりを時間停止し行っていた。
もちろんトウマ君にそんな事を知覚できるわけもないがトウマ君の実力は充分に理解できた。
「これでどうでしょうとはどういう……」
「……いつの間に私の間合いに」
「イーフさんはかなり強そうだったのでちょっとだけ本気で動いてみました」
「私に全く気付かれないだけの速度で少しだけですか……私もまだまだ修業が足りませんね」
「イーフさん仕方ないよ! トウマが異常なだけでイーフさんだってかなり強いのわかるもん」
「そうですね、僕もトウマには負けるがかなり強いと思っていました。ですが正直イーフさんの方が強いとわかります。お互い上には上がいるとわかり良かったんじゃないですか?」
「そうですな、今後はトウマ君を目標に更なる精進をしていきましょう。私のような者で良ければお供いたします」
「イーフさんありがとう! 一緒に魔王を倒しましょう!」
トウマ君は当たり前のように頭を下げて、俺に礼を述べる。それはとても好感を持てる態度だった、だが後ろに控えていたバサシは
(あれごときの剣速でなにを……)とブツブツ言っていたので高速で頭をしばかせてもらった。
「して、これからはどのように行動していくのでしょうか?」
「えーっとこれからはですね……そうですね……ガーボさんすみません!」
「まったくトウマはそう言った所が抜けているのだから、少しは話しを聞いておきなさい」
「すみません」
「まああなたの場合、それを補って余りある力があるので文句も言えませんが。トウマに代わって僕が説明させてもらいます」
どうやらトウマ君は少々抜けているようで、そこをこのしっかり者のガーボ君が補っているようだ。
そして、ガーボ君は社畜として様々プレゼンをこなしてきた俺もびっくりする程丁寧にかつわかりやすく説明してくれた。
今後の予定を超簡単に言うと。
魔王の支配する海を越え、魔王がいる魔大陸へ上陸し、魔王城に突入するという至ってシンプルなものだった。
もちろんその過程で様々な戦闘もあるだろうが、大まかに言えばこんな感じ。
説明を終えたガーボ君はトウマ君に後を譲り後ろに下がる。
「そんなわけで、さっそく港町へ行きましょう!」
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又明日、十二時くらいに投稿したいと思います。