第四話
「剣と盾のマーク! これだ!」
なんてオーソドックスなんだ! と思いながらも名前も知らない作者に軽くお礼を言う
(the異世界を味あわせてくれてありがとう)
これからどんな出会いやテンプレが待っているのかドキドキしながら俺は一歩一歩進み遂にドアを開けた。
そこにはいかにもな風貌の男たちが十人前後。
見た目はかなり恐ろしいものがある、しかし俺は毅然とした態度で受付を目指す。絡むなら来い! テンプレ大歓迎だぞ。
だが俺の期待とは裏腹に、男たちは俺を一瞥すると興味を失ったように自分たちの会話に戻っていった。
肩透かしを食らったようななんとも言えない気持ちで受付に着くと受付のお姉さんは元気に迎えてくれた。
「こんにちは! 今日はどのようなご用件でしょうか?」
「ああ、俺はかなりの田舎から出てきたからまずは登録を。そしてギルドやランクの事なんかも教えてほしい」
「かしこまりました。ギルドの数は増やしているのですが全ての町や村にまではまだ行き届いていませんから一からしっかりと説明させて頂きます」
「助かるよ」
「ではまずこちらに記入をお願いします」
名前 ツカサ
性別 男
種族 人間
属性
ジョブ
「すまない、属性とジョブが不明だがこれでいいか?」
「問題ございません。属性を測る水晶は地方に行くと中規模都市にしかありませんから。ジョブはご自分の得意な戦闘スタイルとでも考えて頂ければ大丈夫です。ではさっそく属性判定をしましょうか」
「この水晶に手を置いて魔力を流して頂ければ完了です」
「火なら赤く、水なら青、土は茶色、雷は黄色、風は点滅、と言った具合に光ります」
「特殊属性で闇と光もありますが、こちらはほぼ適正の方はおらずもし適正があれば引く手あまたになると思います」
おー五属性に光と闇か。
いいねいいねー俺はどうなんだろう? チートマシマシだから全属性だろうけど調べたことはないしな。
この世界では全属性持ちはササキ君だけのはずだし、そこら辺の基準を先に聞いておくか
「ちなみに属性なしとか、二つ以上の属性持ちとか平均はどんな感じなんだろうか?」
「そうですね、計ったわけではないのですが」
そう受付のお姉さんは前置きして教えてくれた。
属性なしはいない、みな何かしら適正をもっている。
ただ、冒険者や戦いを生業にしないような人たちは調べることもなく生涯を終えることもある。また、適正があるからと言って魔法をなんでも使えるわけではなく結局努力が必要。適性がないものを百年努力しても初級魔法すら使えることはないらしい。
大抵の人は一属性の適性を持ち二属性持ちは百人に一人位でここまではそこそこいてギルドでも上位ランクに入っている人が多い。
三属性持ちになるといきなり希少性があがり、国に一人か二人レベルになる。
四属性は人間側に居らず魔族側に二人。
五属性は魔王とエルフの王。
そして唯一全属性を扱えるのは勇者レイ・ササキのみとのこと。
ササキ君すごいじゃん! 魔法がすべてではないだろうけど、この感じだと人間側ちょっと不利だったんじゃない? と思える結果だった。
さて、俺はどうしよう?
全属性でもいいけどそれはやりすぎだろし、そこそこの二か三でもいいな。
大型ルーキーとして四でもいいが、どうしたものか……
悩んでいると受付のお姉さんが優しく声を掛けてくれた。
「属性が一つでも極めれば上位ランクにもなれますし、そもそも魔法を使わずに最高ランクの方もいます。あくまでも自分を知る為のものですからあまり気負わなくでも大丈夫ですよ?」
「ああ、お気遣いありがとう。その言葉を聞いて決めたよ」
俺は迷わず水晶の上に手を置いてしっかりと加減をして魔力を流す。
そして漏れた光は……
赤と黄色。つまり火と雷だ!
「二属性ですね! おめでとうございます! 先程はああ言いましたが。属性は多いに越したことはないですからね」
笑顔で喜んでくれる受付嬢に少しの罪悪感を覚えつつ喜んだふりをしておく。
だが、本当に嬉しく思う気持ちもある。なぜなら、これは俺本来の属性を調べた結果だからである。
創ちゃんのチートを一時的に抑えて俺本来の力を調べたものなのだ。
だから希少な二属性持ちだったのがほんのり嬉しい。
チートマシマシだと、水晶が間違いなく砕けるし全属性プラスαがでてしまってパニックになるだろうからやめた。
「ありがとう、ちなみにランクとランクアップの仕組みも聞きたい」
「はい! ランクはEランクからSランクまでです」
「EからDが駆け出し、Cからが一人前。BがベテランAランクからはもう一部の人間しかいけない領域になりますね」
「Sランクなんて勇者レイ様をはじめ、各国に一人か二人程度しかいません。ツカサ様にも是非高ランクを目指して頂きたいです」
「ランクアップはそのランクに該当する魔物や依頼を単独なら二回以上、パーティーなら三回以上成功して頂ければランクアップできます」
「ありがとう、いきなり高ランクの依頼を受けてもいいのかな?」
「安全面から本来は推奨していませんが、ご本人の希望があれば問題ございません」
「自身の力量をしっかり把握するのも一流の冒険者の資質ですし」
「大抵の方は身の丈にあった依頼をこなしながらランクアップしています、十人に一人位は高ランクの依頼をいきなり受けて命を落としています……それらは全て自己判断ですので、ギルドでは一切関知しません」
「以上になりますが、他になにかございますか?」
「いや大丈夫だ、ありがとう」
「でしたらこちらがギルドカードです、討伐記録も自動で記録されるシステムになっています」
「登録料一銀貨になりますが手持ちはございますか? 現在なければお貸しすることも可能ですが?」
先程再度ポケットを見たら金貨らしきものが十枚入っていたので俺がさっき思った言葉が届いたのかもしれない。
「金貨でいいか?」
「問題ございません、ありがとうございます」
「ではこちらです、さっそくご依頼を受けますか?」
「ああそうだな、じゃあBランクの討伐系の依頼を受けたい」
受付嬢は一瞬驚いた顔をしたが、なれたもので
「かしこまりました、先程説明致しましたのでツカサ様はしっかりと腕に自信があるのだと思います」
「ではこちらでいかがでしょうか?」
・B級クエスト
王都周辺の森に出没したワイバーンの討伐
成功報酬 金貨十枚
「うん、これでいい」
「討伐したら記録が残るとの事だったから、部位等を持ち帰らなくていいんだな?」
「はい、問題ございません」
「ただ、ワイバーンの素材は貴重ですのでお持ち帰りいただければそれなりの額で買い取らせて頂きます」
「わかった、じゃあ行ってくる」
「ご武運を」
よっしゃ! んじゃさっそく冒険者始めますか!
「サーチ! ワイバーン!」
お! いるね。創ちゃんからのチートのおかげで大抵の事はできるから、ワイバーンを探すのだって簡単簡単。
「空間転移」
一瞬でワイバーンのいる森に移動できた。俺が魔法を使うのに詠唱なんか必要ないんだが、やっぱり雰囲気は大事だからな。
「お、ワイバーンも俺には気付いたようだな。餌だとでも思っているのか? あっちから向かって来てくれてる」
そうして現れたワイバーンは、俺が想像していたようなtheワイバーンだった。やっぱり初めての魔物は迫力あるな。絶対に負けないとわかっていてもちょっとビビってしまう。
あんな大きな翼をバサバサして、悠然と見下ろされるとただならぬ気配を感じてしまう。
ワンパンで跡形もなく消え去るけど。まあそれは言わぬが花だ……
「ワイバーン! 俺の初めての冒険の相手を頼むぞ!」
「かかってこい!!」
そう言って俺が力をほんの少し込めると、ワイバーンは墜落した。
「んんん?」
あせった俺はワイバーンに近づきツンツンしながら状態を確認する。
「やばい! 死んでる!」
どうやら初めての討伐依頼で加減をミスったらしい、やはり俺も興奮していたようだ。力を込めすぎたために殺気で心臓麻痺でも起こしてしまったのだろう。
まあ仕方ない、完全な肩透かしだが討伐は成功したわけだしアイテムボックスにしまってギルドに帰るか。
「空間転移」
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