第三十九話
「ん? ツカサ様?」
「ツカサ様の素敵な夢、カラミはこの町からいつも応援しています」
「え?」
「ただの、一受付嬢。ただの、友人未満。顔見知り程度の私が着いていくことは絶対にありえませんが、素敵な夢ですね」
「友人未満? 顔見知り?」
「私ごときではなんの手助けもできませんが、この! 町! から! 応援させて頂きます。お金に困っても寄付など頼みに来ないで下さいね?」
「ん? ん?」
「それと引退されるとの事ですが、手続きはいつなさいますか? 私は忙しいので、違う受付に行ってくださいね?」
「……」
「もう今後お会いすることもないと思いますが……いや、もう会うことはないですが! ツカサ様のご活躍をこの町からお祈りいたします。さようなら!」
「チッ!」
「ヒッ、し、舌打ち?!」
「……マジかよ、あんなに可愛かったのに、舌打ちしながら帰っていったぞ……マジか……女の子こわ」
「……」
「……俺も帰ろう、帰ってラメリに慰めてもらおう……店員さんお会計」
「畏まりました。……本日のお会計こちらです」
「はい。……って、え? ちょっと高すぎない? まだお茶しかもらってないよね? 払えないわけじゃないけど、いくらなんでもお茶二杯で三十万は高くない? ここってぼったくり?」
「いえ、適正な価格でございます」
「……あんまり言いたくないけど、俺この町を救った英雄よ?」
「もちろん存じ上げております。そして、本当に感謝しています。町を救って頂きありがとうございました。その為しっかりとサービスしたのですが……割引もここまでが限界でございます」
「サービスしてこれ? なんで?」
「誠に申し上げにくいのですが、……お連れの方が店内にある高級品質の皿や手土産を大量にお買い上げしていかれて……この値段になっております」
「……噓だろ」
「差し出がましいですが、一つ御忠告を。……あのお客様は以前いらした時も、お連れの男性と揉めて、同じような事をされていました」
「行ったことないって……一回行ってみたかったって……喜んでたのに……」
「……英雄様、恋愛とは……女性とは……天災級を討伐するよりも難しいのですね」
「店員さん……ごちそうさま……これチップ込ね」
俺は多めにお金をおいて会計を済ませ速攻で転移し、宿屋に戻った。
「! 師匠! どうでした!」
「……忘却の迷宮をさまよい続ける」
「師匠! こんなとこでそんな魔法使わないでください!」
「は! 俺は何を?」
「……そうか、俺達はこの後、王都に向かって魔物の大量発生をつぶしに行かないといけないんだったよな?」
「師匠、それはもう終わっています。現実に戻ってきてください」
「……」
「……うぇーん、ラメリー慰めてくれぇ。めっちゃ性格悪かった! もう会うことはないでしょう、いや、会いません!って言い直された! 舌打ちもされたし、貢ぎ物もさせられた! ラメリィー俺にはもうお前しかいないよぉ慰めてくれー」
「はいはい、涙を拭いてください。頑張りましたね、立派でしたよ……」
「ラメリ……お前本当にいい奴だな。俺と結婚……」
「すみません、師匠の事は、師として、友人として大好きなんですが、旦那……夫としては見れません。ごめんなさい」
「おいー傷口に塩塗りたぐるなよ! もういいよ! ラメリの今日の修行は俺と朝まで酒を飲みに行く! だ! いいな?」
「明後日の朝までお供しましょう」
「拙者も付き合いますぞ」
「お前ら……」
「よっしゃー! バラゴイズ中の酒を飲みつくすぞ!」
その後、朝まで飲み続けグダグダになった俺達は三人仲良く布団にくるまって寝付いた。……やっぱり仲間って最高……
数日後、ギルマスから連絡が入り、王都に行くことになった。俺は別れの挨拶にギルドへ行き。ギルド長とガブさんに挨拶した。いつでも遊びに来いと言われたが、しばらくはこの町には来れそうにない……一応こっそり内緒で、ガブさんに通信魔道具を渡しておいた、めっちゃびっくりしてたけど、「助かる」と喜んでくれた。
帰り際、ラメリには止められたけど気になったからカラミの方を見てみた、すると最近Aランクに上がった若者と楽しそうに話していた。過剰なボディタッチをしながら……彼はきっと新たなキープ上位なのだろう。
「師匠、王都に行きましょう! 新たな出会いが待っているかもしれませんよ?」
「ラメリ……お前は本当にいい女だな……わかった! 王都に行くか! んで、SSSランク冒険者になってやろう! 見返してやるんだ! 逃した魚はメガロドン級だったとな!」
「その意気です! 頑張りましょう!」
「おう! 行くぞ! 王都! ……転移」
――
「おわっ! びっくりした! お前いきなり入ってくるなよ!」
「うるせぇ! 細かいことはどうでもいいんだよ! さっさと王様に合わせろ! んで、SSSランクになれるような魔物を斬らせろ! 俺は待ちきれねーんだよ!」
「なんかキャラ違くないか?」
「失恋直後なので気にしないであげてください」
「Sランク冒険者になれる奴を振る女もいるんだな。……いや、やっぱりツカサ、お前も性格が破綻してるんだろ?」
「うる……うるせぇ! 早く王様に合わせろ!」
「わかった、わかったから。落ち着け。謁見は明日、面倒な作法なんかはどうでもいいが、失礼がないようにだけは気を付けてくれよ? お前達だけに特別褒賞を渡すつもりみたいだから。ついでにSランクの刻印も王自ら押してくれるとの事だ。これめっちゃ名誉な事だからな? マジでちゃんとしてくれよ?」
「わかったよ! これでも社会の荒波に揉まれてきた男だ、そこらへんはしっかりやるから心配すんな!」
「本当に大丈夫か? 俺はいけないから頼むぞ?」
「わかったって! じゃあね!」
「ちょっとまて! これ!」
「お金? こんなに?」
「これは、ギルドからの正当な報酬だ。明日のは王様から今回の騒動の褒美を貰うんだよ」
「なるほどね。……ラメリ、いつものように振り分けといて」
「かしこまりました」
カラミに言った孤児院の話だが、全てが嘘なわけではない。はっきり言って俺とバサシに金等まったく必要ないし、いくらでも稼げる。しないけど金だってうみだせる。だから、稼いだ金は滞在費や自分のお小遣い以外全てこの世界の孤児院に寄付していた。本当にこの世界では親を失くした子供が多い。……逆もまた然りだが。
そう言うわけで、お金の管理を任せているラメリにいつも通り寄付して貰うように頼んだのだ。ちなみにラメリも同調してくれて、(少なくてすみません)と言いつつも平均的な年収くらいの寄付を毎月してくれている。
Aランクと言えば一般人でいける最高ランクの冒険者。稼げる額も半端ではないのだ。……ただ、Sランクの実力、稼げる額が文字通り桁違いなだけ。
Sランク冒険者の嫁になりたいわけだよ……グスン……
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