第一九話
悠然とやってきたそいつはこれまで同様神様としての風格をバッチリ纏っていた。今までもほぼ瞬殺で終わらせて来たが、今回は次にビックイベントが控えているので会話すらする気にならない。俺は割かしせっかちなのだ。
「こんにちは、イレギュラー君達。イレギュラーなのはクソのひいらぎ君だけで充分なのに、何してくれちゃってるのかな? 私の可愛い可愛い嫉妬スキルを盗むばかりか破壊しちゃうって……とりあえず、今から殺すけどすぐに生き返らせてまた殺すね? 何回も繰り返すけど心配しないで、精神が壊れてもすぐ治してあげるから」
「じゃあ、まず一回目……死んで……」
ボコッ! 神様が何かするより先にバサシ同様強烈なボディーブローを叩き込んだ。
「うるせぇ! お前が貸したスキルが弱いせいで今から大変なんだぞ!」
……ほとんど八つ当たりだが、神様は瞬殺させて貰った。元嫉妬君同様、伸びてる。
「さてと、片付いちゃったよ? この世界でやること終わっちゃったよ? 早すぎるね?」
「ご主人様……もう腹を括りましょう。案外気にしてなくて、いいのいいの、って言ってくれるかもしれませんよ? 拙者はどんな時も味方ですから、一緒に頑張りましょう!」
「バサシ……飼い犬に慰められるなんて、飼い主失格だな。こんだけ立派なチート貰ってるのにビビり過ぎか! ……うん、堂々と呼んで、ダメだったら素直に謝ろう!」
「ご主人様! その意気です!」
「おう!」
「……創ちゃん、終わりました」
俺は腹を括りさっきまで伸びてた神様を起こし、創ちゃんが来るのをじっと待った。これほど、一秒が長く感じたのは生まれて初めてだ。
高校の時、中学の時からずっと大好きだった慶子ちゃんに告白して返事を貰うときだってここまで、長くは感じなかった。そういえば慶子ちゃんって結婚したのかな? 成人式で俺の友達と付き合ってるって聞いて、めっちゃショックを受けて……って、またこれかよ! 現実逃避はもういいから!
……待つの怖いから、早く来てください創ちゃん!
その時、バサシの時とは比べ物にならないほど確実に世界が揺れ。同時に世界中に散らばっていた大罪シリーズのスキルが世界から消失したのを感じた……
……これ、思ってた以上にお怒りになってない?
遂に顕現した、創ちゃんはいつもと同じような表情だったが俺ごときでは内心を計りきれない。
もしかしたら、俺達だけビビっていて実はいつも通りの可能性も……と考えたが先程の大罪シリーズが消失したことからそれは考えられないだろう。
俺は自分を落ち着かせるようにいつもより、色々な事に思考を巡らせていた。そしてそんな重苦しい空気を創ちゃんが破る。
「……世の中には役割と言うものがある、それを越え余計な事をしでかすなら罰をきっちり受けなくてはならない」
うわー激おこだー。アーヒールの言葉パクってるけどめっちゃ怒ってるじゃん。
どうしよう? すげー怖いんだけど……
「……優しい優しい上司が、(今回はこんな感じのプランで行こうね? そしたら、君も楽しめるからね)って丁寧に言ったのにそれをガン無視して、違うプランで行くって上司に対してなんかあるってことだよね?」
「ま、まぁ俺は優しい上司だからそんな部下の意見も受け止める度量はあるんだけど、ガン無視はちょっとね……」
俺はバサシのお家芸をお借りして土下座をしつつ平謝りを始めた。
「申し訳ございません! 言い訳させて貰えるなら、一言言わせてください! 創ちゃんのプランで楽しみながら行きたかったんですけど、いきなり嫉妬君が来てイラついてしまい、ついスキルを盗ってしまっただけなんです! 本当はじっくりゆっくり、テンポを大事にしつつ行きたかったんです!」
「な! そう話してたもんな! な! バサシ! ……? ……おーいバサシくーん」
「……おーい、バサシ君?」
じょろじょろじょろー
「え? じょろじょろ?」
「……おい! お前もしかして!」
バサシは盛大にお漏らししていた、見た目だけなら最高にイケてるオヤジなのに、それはもう盛大に漏らしていた。しかも、立ったまま失神している……
どんな時も味方です! って言ってたのに創ちゃんの一声で失神しやがったな! ……まぁ無理もないか、俺もほぼ全力で力を入れてるから大丈夫だけど。それでも凄くこえーもん。
バサシの名誉の為に言っとくが、こいつがビビりすぎなんじゃなくて、創ちゃんがやばすぎるだけ。なにせさっき俺が起こした神様は創ちゃんが来た時点でお漏らしして、大きいのも出して泡吹いてからの失神だから、バサシの方が全然ましだ……
バサシに頼れない以上、自分だけで頑張るしかない。
「ほら、バサシ無視してるじゃん! やっぱり僕のプランはダメなんだ! 本当は文句あるんでしょ! ハッキリ言ってよ!」
くそめんどくせー、どうみたってバサシはシカトしてるんじゃなくて失神してるだけじゃねーか! ……怒ってるより拗ねてる方が強いか? その分命の危機は感じなくなった。てか、こういうのって結局どう言ってもダメなパターンなんだよな。
なんとか、誤魔化さないと、創ちゃんのプランは勧善懲悪とか色々あって面倒そうだったけど異世界は楽しめそうなプランだったし、そこら辺を攻めたら行けるか?
それとも……
「いつまでも黙ってないでハッキリ言ってよ! 僕の事無能な上司って思ってます! ってハッキリさ!」
なんか、話題がずれてきてる……
「そんなこと、まったく思ってませんよ! 創ちゃんなら俺の心読めるんですからわかりますよね! 本当に俺達は創ちゃんのプラン通りに行こうと思ってましたよ!」
「……つーさん、最初すげービビっててチートをフルで使ってたでしょ? だから今もつーさんの心は読めないのよ。つーさんが成長してチートを使いこなしてくれてるってのは、上司として嬉しいんだけどね……」
マジかよ? 些細な事とはいえ創ちゃんの力を跳ね返したの? ……マジすごくね? 俺。
あー誰かに自慢してー。唯一話せる相手は失神してるけど。
まぁそれは置いといて、これを突破口に攻めてみるか?
「……そうなんですか! 確かに鍛練は怠ってませんでしたが、そこまで成長できていたとは……これも全て創ちゃんのチートがスゴすぎるからです!」
「……え? 僕のチートが?」
「そうですよ! 俺の力なんて些細なもんなんですから! 全部創ちゃんのチートの力ですよ!」
「……全部」
「です! だから、この世界の最強格の大罪シリーズが来ても瞬殺で終わってしまったんですよ! ……もちろん、俺がついスキルを盗ってしまったのも原因なんですが……」
「でも、創ちゃんのチートが強すぎて、"俺つえー”しすぎてしまったんです。ハッキリ言って創ちゃんのチートにこの世界が耐えられなかったんですよ! 本当の創造神のチートがやばすぎて!」
「……全知全能の僕がそんな読み違えをしてしまっていたのか」
「……残念ながら創ちゃんの"規格外”のチートはすごすぎたんですね」
「で、ですから! 次は強者が多い世界に転移させて貰ってこのスーパーチートを思う存分振るいたいと思います! その世界で勧善懲悪したいです!」
「……そうか、この世界ごときでは、俺のチートを思う存分ふるえないか。……確かにそうだな、例えどんな異世界でもつーさんのチートをフルパワーで使える世界なんて存在しないけど、もっと力を出せるところに行かせてあげた方がいいか」
「恐れながら、俺のチートではなく、創ちゃんか授けてくれたチートです」
「いいのいいの! それを使いこなしてるのはつーさんなんだから! それはもうつーさんの力だよ」
「ありがとうございます!」
「……願い事が一個貯まっていたので、それを使っていいでしょうか?」
「いいけど、このタイミングで何に使うの?」
「ありがとうございます! では、この世界は短すぎたのでこのままもう次の異世界へ転移させてもらえますか? つぎはしっかりと職務を全うしたいと思います」
「素晴らしい心掛け……天晴れである!」
「んじゃ、とびきり強い奴がいそうな世界にランダムで行ってもらおう! 頑張ってね! ……っとその前に」
「おい! サンバン! 俺達はもう行くから、もっとまともなスキルを創っとけよ? 自信作ができたら会いに来る権利をやる、でも中途半端なの創ったら……」
「はい! このサンバン、身命をかけて賭けて究極のスキルを作成いたします!」
「りょうかいでーす。微妙だったら門前払いだからね、ばいばーい、もういっていいよ? 俺たちも帰るから」
……うわ、今までで一番適当な名前。もちろん悪い意味で。別れ際もあしらってる感じ。
しかも、いつもみたいな締めもないし
「いいのいいの、こんな世界は適当でいいのよ」
「! あれ? 心読んでます?」
「気が緩んだみたいだね? ほぼ全力チートじゃないとダメみたいよ」
「そうですか、まだまだ修行が足りませんね。……では次の異世界にお願いします!」
「うん! じゃあ願い事を一個消化しちゃうよ? では! 今から出発してきて! いってらしゃーい」
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諸事情により、二十九日まで更新ができません。ここで終わることなく絶対に完結はします。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
二十九日の二十時迄には投稿再開致します。
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