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俺の出番が……無いんだけど。

すみません。

すっかり続きを書く事を忘れてました←

ヘンディル視点です。

かなり暴力行為の描写がありますので苦手な方は読まない事をお勧めします。自己責任でお読みください。

ファルに想いが通じたどころか想いを返してもらえるなんて幸せ過ぎる俺は有頂天だった気持ちが地に潜り込んでしまう事態に陥った。……いや正確に言えば俺自身に対してでは無いんだけど。


久しぶりに叔父上が怒っているところを見てしまったので幸せ気分が地に潜り込んでも仕方ないと思う。ファルの一応未だ婚約者であるハイルが来ていると言われて、叔父上と話し合った通りにファルの真の姿(何処とは言わないがかなり女性らしくなった体型のことだ)を見せるのは癪だが、自分が何を失ったのか知らせてやりたいとも思ったのでどうせならイチャイチャしているように装ってファルをエスコートした。


そこには叔父上に何を言われていたのか分からないが顔色を青くしているハイルが庭にある白いテーブルに座っていた。


……あー。叔父上。かなり虐めてましたかね。まぁ良いけど。


「お待たせしましたわ、ハイル様」


「俺をっ待たせるなんてっ」


ファルが言えばハイルが瞬間的に怒り出したが隣には叔父上が居る事を思い出したのか、それ以上は口を噤んだ。……と思ったが違ったらしい。


「お前、なんだその格好は⁉︎」


「お前? 僕の可愛いファルに対してお・ま・え?」


あーあ。叔父上がファルを溺愛してるの解ってたくせにその言い方ってコイツ莫迦かと思っていたが阿呆だったのか。


「あ、いや、そのっ。ファル」


「ファルぅ?」


叔父上の殺気に当てられたのか目を白黒させていたハイルがファルの名前を呼ぶが、既に(俺達の中で)ファルの元婚約者認定されたハイルが呼び捨てにするのも叔父上は気に入らないらしい。


……実は俺も最初の頃は認められなくて散々叔父上に笑いながら殴られた。しかも顔なんて分かりやすい所じゃなくて腹だ。顔のように如何にも殴られました。……なんて所を殴るのはシロートの考え。クロートは見えない所を殴るもんだとか言ってた。ちなみに俺は未だ持ってシロートとクロートの言葉の意味を知らない。意味を教わらない言葉は知るとロクデモナイ事にしかならない、と身をもって覚えたからだ。


「ファル……さん」


普段敬称なんて付けないから分からなくてそう言ったらしい。まぁ叔父上が揚げ足を取らないからそれでも良いのだろう。普通はファル嬢だが。ファルは慣れたもので叔父上がようやく黙ったところで首を傾げた。


「格好? ああ。ようやくお父様から本来の姿になって構わない、とお許しが出ましたのでこの姿に戻りました」


ファルも体型の事だと理解したようでアッサリと告げる。


「本来の姿……」


ゴクリと生唾を呑み込む音が聞こえた。オイオイオイ! ファルの事を散々莫迦にしておいて本来の姿に戻ったらソレか⁉︎ 確かにファルの女性らしい身体は同じ健全な男として反応するのは分かるが! そして視線を固定するな! 見るな! 減る!


「そうだ。ファル。デートは楽しかったかい?」


「はいっ! お父様! その。ヘンディルったら紳士的で……エスコートも完璧でしたの。贈り物までして下さいましたのよ?」


叔父上に尋ねられてファルがモジモジと恥ずかしそうに俯きながらそんな事を言ってくれる。紳士的! 完璧! ファルが可愛いっ! あー。でもファル。その可愛い顔を叔父上はともかく、俺以外の男の前で見せるのはダメだぞ? 莫迦がまた生唾を呑み込んでやがる……。


痛めつけていいかなぁ。腕の一本や二本折っても誰も困らないんじゃないかなぁ……。そんな物騒な俺の思考は叔父上の顔を見た瞬間、吹っ飛んだ。


アレはもう俺の出る幕が無いっ!


ファルを性的な対象として見ているハイルに気付いている。その目は確実に獲物を甚振るつもり満々の肉食獣……。怖ぇえよ。俺が下手に手を出したら俺が巻き添え食うヤツだ。こういう目をした叔父上に気付かず近寄って、ちょうど叔父上にケンカを打ってたどこぞの甘やかされボンボンと共に蹴られたのは思い出したくない記憶だ。


一応謝ってもらったが俺に不用意に近づくからだぞ。……なんて笑顔で言われた時に思った。

絶対この人に逆らってはいけない。


ちなみにその時のバカは風の噂で暴漢に襲われた事になっていたが、骨が折れ血を吐き散らして道端に意識を失って倒れていたらしい。そしてそんな暴力に晒された事が無かったのか治療の最中に意識を取り戻したが精神が壊れたそうだ。……叔父上に何をやらかしたんだろうな、あのボンボン。まぁ生きていただけマシだろう。


その時と同じ目をした叔父上を見た俺は速攻で引き下がる事にした。俺は巻き添えを食う気はない。

ところでハイル。お前、現状を理解してる? ファルは俺とデートしたんだぞ?


「そうかそうか。それは良かったな。では着替えておいで?」


叔父上がにこやかにファルを促す。ファルは多少不思議そうな顔をしたものの叔父上大好きなファルが言う事を聞かないわけがない。ファルを見送った叔父上は「さて」とやたら低い声音でハイルを見た。その顔から表情は抜け落ちていて見慣れた俺でももの凄い怖いものだった。


「先ずはファルとヘンディルの2人でデートして来たから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。別に異論は無いよね」


叔父上……耳元で囁くの怖い。見ている俺でも怖い。ハイルは……うん。顔色が青から白に変わっているな。おっ? 叔父上の発言が理解出来たか? 変な顔になったな。


「愛人を作らせた?」


「ん? 君が望んだんだろう? 作れるものなら作ってみろって」


「俺はそんな事言ってない!」


「へぇ。良くそんな事を言えたねぇ」


叔父上はデカデカと写された目の前のバカとファルの親友を騙ってた女のキス写真を突き付ける。


「これはっ」


「ついでにコレな」


かなり大きな音で再生されるバカ2人の会話。白かった顔が死者のような肌にまで変わっている。


「なんっ……このっ」


おそらく「なんでこの会話が聞こえてきているんだ⁉︎」と言うところか。


「俺が発明家って忘れたわけ? こういう会話を録音する機械も周りを写す機械も造ったんだよ。で。ファルの誕生日プレゼントに渡したってわけ。だからファルの誕生日しかこの写真も録音も出来ないんだよね。


ーーなぁ、クソガキ。俺の可愛い可愛い娘と婚約しているにも拘らず浮気なんてフザケタ真似良くもやってくれたなぁ。しかも、ファルの誕生日なんて1年で最高の日に最低の思い出を作ってくれたんだ。たーっぷりお礼はしなくちゃなんねぇなぁ? ああ?」


胸倉掴んで脅しかける叔父上は、日本人だった頃の暴走族のリーダーとやらの時はこうだったのだろうと想像させた。ファルは暴走族を仕事だと思っているようだが、俺は叔父上から聞いている。要するに裏社会の住人的な存在だったことを。そこから好きな女性に出会ってまじめになって表社会に復帰したそうだ。叔父上はその女性に出会わなければ歳を取っても誰かの恨みを買って殺されていたかもしれない、と笑っていたが……。


そんな叔父上に貴族の甘やかされボンボンが敵うわけがないので、当然ハイルも涙目になっている。というか叔父上、それだともうコイツの息が止まるかもしれない……。だが静止して巻き添えは嫌なので俺は黙ったまま。


「こ、こんなことして、済むと、思うか! お、俺は、こ、公爵家の、人間だぞ!」


おー。頑張ったなぁ。この叔父上相手にそれだけ言えれば凄いな。こういうの上等って言うんだっけ。叔父上が言ってたな。


「はん! だからなんだ? テメェとの婚約話も俺の稼ぎ横取りするだけのモンだろうがよっ。俺はテメェのオヤジに断りを入れたんだ。だがなぁ。よりによってテメェのオヤジは断る事を予想していてファルを人質に取りやがった。分かるか? まだ男爵家だったから使用人なんぞ居ない俺の屋敷から1人でいたファルを拐ってきたんだよ! 


オヤジがゲスなら息子もゲスだな。さすがだ。いいか? 俺が伯爵位をもらったのは、テメェのクズオヤジみてぇな輩がまたファルを狙うかもしれないからだ! だからテメェとの婚約が決まって速攻で()()()()爵位をもらったんだよ。ファルを守るためになぁ。


まぁテメェがバカをやらかしてくれたお陰で婚約破棄に持ち込める。コレは複製を作るのが簡単でな。既にテメェのクズオヤジと国王んとこに同じモンを送りつけてある。国王からは速攻で婚約破棄を認めるって連絡をもらってんだよ。テメェん家にやった金は返して貰わなくていいけどな。もう俺んとこから金は援助してもらえねぇことを覚えておきやがれ。……ヘンディル」


「はい」


「コイツ、好きにしていいぞー」


ニヤリと叔父上が笑った。俺も同じように笑う。それはそうだ。ファルを拐ったなんて許される事じゃない。そこまでしてファルと婚約させておいて息子の不始末は知らないなどとは言わせない。


「腕の一本二本はいいですかね」


「おー。いいぞいいぞ」


「ところで叔父上。ファルが拐われたってファルは12歳でしたよね? さすがに拐われたなら叫ぶなり暴れるなりしそうですが」


「あー。それな。ファルは拐われた感覚は無かったはずだ。俺がコイツの家から()()()()()()()から迎えに来てくれって言われてな。帰れない、なんて普通は何か有ったって思うだろ? 


ファルは母親を亡くしている。そんな風に言われたら俺も病気か何かになって死ぬんじゃないかって真っ青になってやってきたよ。本当はその場で叩きのめしたかったがファルの目の前で暴力行為は慎んでおきたかったからなぁ。お前はまだ養子の話が出る前だったから居なかったよな」


「……へぇ。つまり。叔父上が死ぬかもしれない、とファルに誤認させた、と」


「まぁな」


「報復は?」


「これからだよ、これから。直ぐに報復してやりたかったがファルに俺が死ぬかもしれない、と誤認させたからな。ファルが暫く俺から離れられなかった。そんな状態で報復なんか出来やしねぇ」


つまり機会を窺っていたということか。


「じゃあ俺は両腕と両足をもらいます。叔父上はコイツのクズ親頼みます」


「おー。じゃあ行ってくるな。またな、クソガキ。お前があの家に帰る頃にはイイモン見られていると思うぜ?」


クックッと笑った叔父上を見送った後。俺は解放されたとばかりに慌てて距離を取ろうとしたバカの首根っこを掴んで動きを静止させる。遠慮なく先ずは右腕の骨を折らせてもらった。


「ウギャア」


「うるっせぇな。黙れよ、クソガキぃ」


痛い痛いと喚くハイルを蹴って黙らせる。圧倒的な暴力に歯向かう気概のある男じゃない事は分かっていたので、そのまま続けて左腕・両足の骨を折っておいた。


ファルが今日、ここに再び戻って来る事はない。叔父上が伯爵になったことで少しは使用人が居る。その使用人がファルをうまく足止めしていることだろう。ギャアギャアと喚くしか脳の無いバカをもう一度蹴って黙らせた。


出番無いかと思ったけど出番を作らせてくれて感謝する、叔父上。






***

さて。その後。ハイルを荷馬車に押し込んで(両手両足を折ったから仕方なく)公爵家へと送り届けた。その時の惨状はと言えば。


基本的に叔父上は無関係な人間に手は出さないのだがクズの父親だけでなく母親の方も手を出したようだ。父親の方は血を吐いて倒れて呻いているが母親の方も髪の毛がバラバラに切られていて見るも無残な上に容赦なく宝石が付いていた指輪を取ろうとしたのだろう。指が折られている。多分指輪はどうでもいいとばかりに捨てたはずだ。


慰謝料代わりなんて考えてもいないはず。ただ取り上げようとすれば必死に守ろうとするその心を折りたかったのだろう。ついでに指も折ったというところか。相当鬱憤溜まっていたなぁコレ。その他上位の使用人も執事以外は尽く床で這い蹲っているからかなり暴れたらしい。執事が無事なのは城に知らせる役割なんだろうな。とはいえ叔父上のことだ。何も手を打たずに執事を解放するわけがない。


「おう、来たか」


「叔父上」


ついでとばかりに次々と調度品が破壊されている。おそらく叔父上に出させた金で買い集めたものばかりだ。そういう意味では指の骨を折られていた夫人の指輪も叔父上に集った金だろう。ちなみにハイルは屋敷に入った玄関でとっとと捨てている。痛みで喚くばかりでうるさすぎた。


「どうだ? 中々に見応えのある屋敷になっただろう?」


「本当ですね。ところで執事の自由を何で奪ったんです?」


「アイツの妻と娘。家族大好きだからな。きちんとお使い出来たら解放してやるって言っておいた」


そう言って叔父上が部屋の片隅で怯えている女性2人に視線を向けた。……成る程。それはさぞかし言う事を聞いてくれるだろう。


「さて。どうしますか」


「帰る。ファルが待ってるからな」


「ですよね」


そんなわけでアッサリと帰宅した俺と叔父上はニコニコ顔のファルに癒された。


その後の話として。


先ずファルの親友を騙ったアリーは平民に落とされた。自力で生きていけるかどうかは知らないが、彼女の両親が今回の事を知って怒った結果なのでこちらは一切関わりなし。

ハイル一家はさすがに公爵家のやらかした事実に国王自ら処断した。子爵家への降爵。領地没収。未開拓の地を新たな領地として与え領地へ追いやり二度と王都へ戻る事は許さない、という罰だった。治療すらまともに受けられないまま新たな領地へ送られていった。


で。俺は俺の誕生日パーティーの日に国王陛下の許可を得て堂々とファルを婚約者にしてログリオ伯爵家に婿養子として入ることになる、と発表した。婿養子だが女性に爵位は継承されないので俺が次期当主である事も発表された。

そんなわけで日々ファルとイチャイチャしつつ今日を過ごしている。

ヘンディルは生粋の貴族令息だったのですが……。随分と柄が悪い(笑)

朱に交われば赤くなるってやつです。

彼自身は転生者ではないですが叔父上(ファル父)の影響を受けまくってこんな令息に。ファルには多少柄の悪いところを見せてますが暴力行為一切は見せません。

作中ファル父の名前が出てませんが名付けるのが面倒くさ……いえ、なんでもないです。読まれた方がご自分の中で名付けてみて下さい。

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