新たな犠牲者?
原田学の葬儀会場に刑事がいた。
「あのペンダントヘッド付きチェーンはきっと凶器なんです。あれを手にした犯人は、又人を殺すかも知れません。だから、何があっても未然に防ぎたいのです。ソイツは木暮の兄貴を冒涜してる。俺が見た限り、あれには魂が憑依しているのです!」
瑞穂は力説した。
刑事が信じてくれないかも知れないけど、霊感で見えることも打ち開けていた。
「そう言えば君の高校の第二の事件の時、そんな話を聞いた覚えがある。君の力が事件を解決したそうだね?」
「いや、あれは違います。俺が録音したテープを聴いたから、千穂は死を選んだのだと思います」
聞いていて一瞬ヤバいと思った。瑞穂はこともあろうか、自分が死に追いやった千穂ちゃんの名を出していたのだ。
「すいません。今の話忘れてください」
俺の意を汲んだか、瑞穂が言った。でももう遅い……
「友達思いなんだね。君とその人ことは磐城探偵からも聞いているよ」
(えっ!? 今確かに俺の名が出た)
俺は更に聞き耳を立てた。
「えっ、叔父さんにですか?」
「君が受けたショックを気にしていたな。二つの事件を招いたのは自分だって思っているから、そっとしておいてくれってさ」
「千穂を死に追いやってしまった俺を、寛大な両親は許してくれのです。でも腸は煮えくり返っているはずだった。千穂は一人娘だったから目に入れても痛くないほど溺愛していたのに」
瑞穂は又千穂の名前を出していた。
「そうだ。これは言って良いだろう。色々と調べた結果、木暮君のお兄さんと原田学は、君達のように保育園からの親友だ。そうだ」
「俺達が親友だと良く解ったね」
「何言ってるんだ。二人がお互いを思い合う様こそ親友と呼べるんじゃないのかな」
刑事は嬉しいことを言っている。俺は物陰から頭を下げた。
俺はその後家に帰った。でも瑞穂はその後であのゴールドスカルのペンダントヘッドを見つけたらしい。
「刑事さんと別れた俺達は原田学とお別れをするために焼香の列に並んでいた。その時、何かが光った気がした。それが何なのか物凄く気になり俺は其処に目をやった。あっ、あれはチェーンだ。あの色はボンドー原っぱが持っていたのに似てる。何気にそう思っていた」
俺が其処にいたとは知らない瑞穂は、県警の刑事と会った場面から語り始めた。
「帰り間際に気が付いた。レポーターの質問攻めにあっている男性の首にあのチェーンらしき物が掛かっていることに……」
「あのチェーン? もしかしたら?」
その場面は見ていなかった。だから驚いた。彼処にそんな人がいたなんて……。もしかしたら、ボンドー原っぱの様に次なる犠牲者となり得るからだった。
「そうだよ。ボンドー原っぱの首に掛かっていたゴールドスカルのペンダントヘッドだ。だから俺はわざとソイツの前に出て行った。その男性は俺がさっき気になった人だった」
だろうと思った。瑞穂は霊感が強いからでそれが何かを見極めたかったのだろう。
「あっー、やっぱり。って思った。すれ違いざまに確認すると、それは確かにあのペンダントヘッドの付いたチェーンだったんだ。俺は木暮に目配せをして、それを見るように仕向けた。本当は遣ってはいけないことなのに、俺は黙っていられなかったのだ」
木暮君のことを考えると、瑞穂がそう思ったことを納得した。木暮がお兄さんの首を落とした原因になったであろうゴールドスカルのペンダントヘッドが付いているチェーンは見たくはなかったと思ったからだった。
「想像した通り、木暮の顔から血の気が引いていく。俺はそんな木暮を気遣いながら、そっとその場を後にした」
(何を今更。それを遣るなら、見せないことだ)
俺の心が葛藤していた。きっと瑞穂もだろう。
「木暮ごめん。俺は自分勝手のバカモンだ。って思った。幾ら謝っても済むことじゃないと解っていながら頭を下げた。『いいんだよ磐城。本当は見たくなかったけど、何が凶器になったのか知っておきたかったから……』って言ってくれた。木暮は相変わらず気遣い上手だった」
「本当だな。そんな時に言えるもんじゃないな」
「俺は直ぐさま刑事さんを探し、ゴールドスカルのペンダントヘッドを見つけたと話した。刑事さんは同僚の刑事さんと一緒だったが、何はさておきとばかりに二人で駆け付けてくれた。もう一人の刑事さんもみずほの事件も担当していたので、俺の姿を見た途端に一大事が起きたと思ってくれたようだ」
「瑞穂の霊感は県警でも有名か?」
おちょくった訳ではないが、つい口をついた。
「俺達は善は急げとばかりにさっきの場所に駆け付けた。でも男性は其所から居なくなっていた」
それでも瑞穂は続けてくれた。
「『あの時俺が此処に残ってさえいれば』木暮が辛そうに言った。『ところで磐城君、この人は?』木暮のことを知らないのか、同僚の刑事さんが言った。そこで俺は、第一の被害者・木暮敦士の実の弟だと教えた」
又教えてしまったかと思った。でも言わざるを得なかったのではとも考えた。木暮君はいたたまれなかったのではないのだろうか。
「ゴールドスカルのペンダントヘッド付きェーンをしている男性。手掛かりはそれしかない。それでも大きな一歩だったと言える。『本当は彼処に居たくなかったんだ。あのままだったら、あの男性に食って掛かって行ってたかも仕方ないから……』って木暮が言った。『木暮ごめん。俺、木暮の気持ちも良く考えずに行動していた』って言うと『良いんだよ。もう気にするな』って木暮は言ってくれた」
それでも瑞穂は語ってくれる。
「『磐城君、悪いがその男性の特長を教えてくれないか?』って刑事さんは言った。『あっ、はい解りました。髪はロン毛の茶髪です。それにピアスをしていました』って答えた。『あれっ、家の兄貴に似てるな?』木暮はそう言いながら、持って来た携帯の画像を刑事達に見せていた」
「木暮君のお兄さんって茶髪のロン毛だったんか? 確かボンドー原っぱと同じスキンヘッドだったんじゃ」
「いや、スキンヘッドは亡くなる日に奥さんに頼んでやってもらったそうだよ。木暮の兄貴の奥さんは有名なヘアメイクアーティストだったそうだから」
「ヘアメイクアーティスト?」
「芸能人なんかのヘアスタイルやメイクを担当している人だそうだよ」
「そりゃ凄い」
確か木暮君のお兄さんと奥さんは同郷だと聞く。そんな有名人が近くにいたなんて信じられない気がしていた。
「叔父さんの待つ事務所にこのまま帰る訳にいかなくて、俺と木暮は夕刻近い街を当てもなく歩いていた。『叔父さんに何て言おうか?』って俺は言った。すると木暮が『何か解るかも知れないと思ったから、原田学さんの葬儀に出席していたと正直に言ったら』と言ってくれた。『でも結局、何も解らなかったな』と俺。『いや、出身地が此処だと解っただけでも進展があったと言えなくもないよ』と木暮が続けた。『それもそうか』俺は何故か木暮の言葉に納得したんだ」
瑞穂も木暮君も肝心なことを忘れている。原田学の事件の真相を探る依頼は俺が出したってことを……
この事件はこのままでは終わらない気がしている。でも今は、あのゴールドスカルのペンダントヘッドをした男性が新たな犠牲者にならないことを祈るしかない。
茶髪のロン毛の男性が新たな犠牲者になるのだろうか?




