↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/35

真実を俺に……

瑞穂が事件の真相を語る。

 「このコンパクトは、俺が始めて叔父さんから貰った給料で買ったんだ」



「ちょっと待て、俺は給料なんかやった覚えはないぞ。お小遣いの間違いじゃないか?」



「何言ってるんだ。お小遣いじゃないよ。やだ忘れちゃったの?」



「そうだったか? あっ、思い出した。『さっきみずほちゃんがこのアパートを見ていたような気がする』って言った後だったな」



「そうだよ。俺は『嘘だーい』って言った。でも本当に見ていたようなんだ」



「やはりそうだったか?」



「うん。話し変わるけど、そのコンパクトにこんな文字が書いてあった。その文字が泣いていたんだ。みずほの心を……、みずほの痛みを俺に伝えようとしているかのように……その時俺の霊感が覚醒されたんだ」



「これは酷いな。みずほちゃんは虐められていたのか?」

その質問に瑞穂は首を振る。

瑞穂はあの事件の真実をまだ話していなかったのだ。






 「『今度は誰が死ぬんだろう?』ってクラスメートの町田百合子が言った時、『えっ!? ああ、例の三連続?』そう言ったのは、福田千穂だった」



「三連続?」



「そう三連続なんだ。この殺人ゲームは……このまま続くのか!? って俺は思った」



「殺人ゲームとはまた穏やかじゃないな。もしかしたらみずほちゃんはそれに巻き込まれたのか? 確か三連続で死が発生すると言う迷信があったな」



「所謂こじつけだけどね。一人が死に……次の人が死ぬ。そんな時、死が飛ぶとか言って恐れたのだったね。注意しろと言う暗示らしいけど、それを悪用されてみずほは殺されたんだ」

瑞穂がそう言った途端に涙が溢れて頬を流れ落ちた。





 「ところで瑞穂。さっき福田千穂とか言わなかったか?」



「ごめん、叔父さん。千穂が死んだのは俺の責任なんだ。千穂は俺が好きだったらしい。でも俺はみずほに夢中で、千穂のことは眼中になかったんだ。だから町田百合子の悪巧みに乗ってしまったんだよ」



「町田百合子ってのは千穂ちゃんと一緒に屋上から落ちた娘か?」



「うん。町田百合子はある人のストーカーだったんだ」



「ストーカー! それはまた、穏やかじゃないな」



「そうなんだ。だからソイツの後を付け狙っていたんだ。その時、ソイツは『サッカーの試合に磐城瑞穂が来なければいいな』って言ったのを聞いて、俺を殺す気になったんだ」



「えっ!? 狙いは瑞穂だったのか? それだったら何故みずほちゃんが……」



「千穂が、望んだんだ。平仮名表記のキューピット様でいわきみずほって百合子が強引に書き込んだ時に」



「キューピット様って?」



「あっ、所謂コックリさんだよ」



「へー、懐かしい。ところで、まだそんなのが流行っているんか?」



「いや、町田百合子がいわきみずほって書くために始めたんだ。あれは鉛筆での自由表記だから」



「自由表記って?」



「キューピット様は他の邪悪な占いと違い、鉛筆を使用するんだ。その手軽さが小学生にうけて一気に広まったんだ。はい、いいえ。そのくらいしか要らないから」



「そう言えばコックリさんは確か十円玉だったな。鳥居の下に平仮名を全部書いた気がする」



「うん、そうだよ。それがないからキューピッド様は楽なんだよ。一人の女生徒が、藁半紙の上にハートマークを書く。そのハートの真ん中にへ百合子が矢を足したんだ」



「その時、いわきみずほって書かれたのか?」



「『この次に死ぬのは誰ですか?』って、あまりにも唐突な質問だった。でもみんな、鉛筆の先を見つめていた。そしてその答えが、いわきみずほだったって訳だ」



「いわきみずほって二人いるな」



「だから『そうだ。男なのか女なのか聞いてみて』そう言ったのが千穂だった」



「でも何でそんなことが解るんだ。まさか……」



「そう。みずほのコンパクトが熱をもち、俺に見させてくれたんだよ」

瑞穂は更に泣き出した。





 「そして放課後。岩城みずほは屋上へ呼び出されたんだ」

瑞穂は声を詰まらせた。瑞穂の感じた事柄を俺に話しても良いのか戸惑ったからだ。もう既に始めてしまったのに……



瑞穂はみずほちゃんの返事を聞きたくなって、コンパクトを又握り締めた。でも何も答えてはくれなかったようだ。



「『昨日キューピット様を遣ったら、あんたが死のお告げがあったの。だからあんたは死ななきゃならない 』そう言いながら百合子がコンパクトを見せて、『恋人もあんたの死を望んでいる』と、徐々に屋上の柵に追い詰めて行ったんだ。俺は慌ててコンパクトを閉じた。それ以上見るのが怖くなったんだ」

瑞穂はやっと言えた。それで俺はみずほちゃんの事件の真相を知った。





 「瑞穂!!」

俺は瑞穂を抱き締めながら頭に手をやった。



「辞めてよ、叔父さん」

瑞穂は照れくさそうにその手をほどいた。



「キューピッド様。聞こえは良いが、ようするに狐狗狸さんだ。狐に天狗に狸。邪悪な……そう思えてならなかった」




「以前何かの雑誌で読んだ事がある。キューピッド様だか解らないけど……。学校で遊んでいた時帰ってくれなくなったらしい。十円玉から指を離すと死が待っている。そう思い誰も帰れなくなったそうだ」



「その話は叔父さんから以前聞いたよ。『余りに帰宅の遅い子供を迎えに学校へ父兄達が集まった時は、みんな半狂乱になって泣きながら机を囲んでいた』と言っていたよ。実はキューピッド様は四人以上でやると厄を招くそうなんだ。あの時はそれ以上いたようだ」



「そんな邪悪な方法で、みずほちゃんの死がもてあそばれたって訳か?」



「そうだよ。だから俺は始めたヤツを許せないと思ったんだ」



「だから見えたのか? その時と同じように、あの男性のゴールドスカルのペンダントヘッドから……」

俺の質問に瑞穂は頷いた。





 「不思議だった。何故見えるのか、解らなかった。俺が心を込めて贈ったコンパクトはみずほを綺麗にするためではない。だってみずほは充分美しくセクシーだった』



「確かそのコンパクトって」



「うん、この探偵事務所でアルバイトした初めての給料で買った物だった。だからみずほは心から喜んでくれたんだ。ま、何処でアルバイトしているとか言ってなかったけどね」

何故瑞穂が言えなかったのか解る気がした。俺が面白がって女装などさせていたからだと思った。




「『瑞穂のためにもっと可愛い女性になるね』ってみずほは言ってくれた」



「いや、みずほちゃんは元々可愛かったよ」

俺が言うと瑞穂は頷いた。






 「俺はみずほの残したコンパクトを通して事件の真相を知ろうとした。でも何故俺にそんな能力があるのだろう? それは俺自身も解らないから、きっとみずほの心が見せてくれたのだと思ったんだ」



「瑞穂に真実を伝えるために……かな?」



「でも、そしてそれが……新たなる悲劇への始まりになることなど……俺には知る由もなかった。そうこの事件はこのままでは終わるはずがなかった。三連続で死が発生する。これはまだ序章に過ぎなかったのだ」



「でもまさか千穂ちゃんが……」



「だから誰にも言わないで。全ては千穂を愛さなかった俺の責任なんだから……」



「違うよ瑞穂。千穂ちゃんは双子の兄妹みたいな存在だったからだよ。そんなに自分を責めるな」

俺の言葉で瑞穂が解放されるとわ思わない。でも何かを言ってやりたかったのだ。



「でも千穂の両親には言えないんだ。俺が千穂を愛さなかったためにみずほが殺されたなんて……俺って本当に腑甲斐無いヤツだよね?」

瑞穂は俺に救ってもらいたかったのかも知れない。でも俺は嬉しい。瑞穂に頼りにされたと実感したいだけだけど……



「でも、みずほは違っていたんだ。そうだよな。みずほにとっても木暮は大切な友人だったんだ。だからこうやって見せてくれたのかな?」

瑞穂は木暮君のお兄さん事件を、みずほちゃんがずっと引き摺っていたと思っていたのだ。

同じ高校へ通わなかった木暮君を常に気遣っていたからだ。

だから、みずほちゃんのコンパクトで瑞穂は意識を垣間見ることが出来たのかも知れない。





 あの時。

瑞穂はスキンヘッドに動揺していた。それが何なのか今はっきりした。きっとみずほちゃんのコンパクトが瑞穂に頼ったから見せてくれたのだろう。

それがこの男性とどう結び付くのかはまだ判断は付かない。

でも俺達は、やっとたどり着けたのだ。





 「首が落ちている。いや、落ちて来た。それも突然俺の目の前に降ってきた……」

瑞穂はスキンヘッドの彼が首に掛けていたゴールドスカルのペンダントヘッドから見えた一部始終を語り始めた。俄には信じられないけど俺は身構えた。

瑞穂の口から出て来る木暮君のお兄さんの意識に耳を傾ける俺がいた。それがどうスキンヘッドの彼と結び付くのか判らないけど、謎を解く鍵になり得るからだ。



「みずほちゃんのコンパクトを通して見えたのか? 凄いなー」



「うん、そうだね」



「犯人探しかな?」



「それもあると思うけどね。その時……ゴールドスカルも垣間見た。それは野次馬の中の……奥さんへストーカー行為をしていた奴が手にしていたんだ。その時、兄貴は思い出した。さっき乗ったエレベーターの中に帽子を目深にかぶったソイツがいたことを……」



「ソイツが犯人か?」

俺の質問に瑞穂は頷いた。

俺は思い出していた。スキンヘッドの彼がストーカーと言った時に瑞穂の態度が変わったことを……

きっと、彼のゴールドスカルのペンダントヘッドから垣間見た映像と重なったからだと思った。

みずほちゃんのコンパクトがこんなにも力があったとは? みずほちゃんの亡くなった過程が見えたことを俺はやっと理解した。





みずほちゃんの遺したコンパクトは凄い力を秘めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。