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魔王の娘  作者: 瑞希
家族
2/16

[そういう日常1]

キーンコーンカーンコーン


「あー。やっと終わった」

音澤おとさわ 絢斗あやとは、豪快に欠伸をして疲れ果てたように言った。


「いってっ!何すんだよマーヤ!」

「授業は、授業を受ける時間。寝る時間じゃない。」

そんな絢斗の頭を、仇篠あだしの 真綾まあやが国語の時間で使う辞書で殴った。

それを見ていた『男子が痛そー!』と笑い声をあげると、それが合図だったようにクラスの人が一斉に話し出した。


『アヤトくんイビキうるさ過ぎ~。』とどこからか女子が言うと、他の女子たちも、うんうん。と頷いた。


「起こしてくれりゃ良いじゃねーか」

浴びせられた非難の声に絢斗がこっそり不満気な声をあげた。


「何回も起こしたわよ?ね、真綾」

操辻あやつじ 遙華はるかが真綾に言うと、周りの女子たちも頷いた。


「はいはい。帰るなり部活に行くなりしなさーい」

担任の碓氷うすい 燈果とうかが生徒たちを促すと、みんな部活や家に向かって教室を出て行った。


絢斗は自分から注目がそれた事にホッとして、遙華と真綾と共に、西校舎へ向かった。

西校舎は、廃校舎と化していて関係者以外立ち入り禁止となっており、数々の怪談がある。


「例えば!西校舎には

 夜な夜な女性のすすり泣く声が聞こえるとか…」

遙華が指を折り数えながら、真綾や絢斗に向かって話していた。


「んなこと有るわけねーだろ」

絢斗がため息交じりに、呆れた声を出した。


「えー、でも見た人も居るって~!」

「私は幽霊なんて見たことない」

現実主義の真綾も無表情のまま、遙華に言った。


「居るったら居る~!」

「………ハルカがそう言うなら」

さっきまでの言葉とは一変、真綾は顔をほころばせ、遙華側についた。

一方味方が居なくなった絢斗は不利に。


「わーったよ、居る居る」

幽霊が居る居ないに情熱を持っていない絢斗もすぐに折れた。


「ふふん」

勝った遙華は誇らしげに鼻を鳴らした。


そうしていると三人は目的地に着いた。

西校舎は廃校舎と化しているにも関わらず、一番奥にあるこの部屋だけは綺麗に片付いている。

三人は慣れた様子で、躊躇なく部屋に入った。


ここは特殊能力部。

三人の所属している部活だ。

何故、部がこんな場所に有るのか、それは一般人にうっかり会話を聞かれないため。

何故、一般人に聞かれてはいけないのか、それは教師も含めた全員が能力者だから。

何故、能力者が集まっているのか、それは悪魔を倒し互いの身を守るため。


「どもー」

「失礼しまーす」

「失礼します」

三人は部室の中に入り次々と挨拶をした。


「やっぱり真綾ちゃんが一番丁寧ね」

そう言った女性は特殊能力部顧問であり、三人の担任でもある碓氷うすい 燈果とうか


「まあ、愛想は無いがな。

 全然笑わねぇもん」

絢斗は自分の荷物を隅に起き、欠伸をしながら言った。


「え?いつも笑ってるよね?」

遙華もその隣に荷物を置きながら首を傾げて言った。


「う、うーん…。いつも、では無いかな?」

「シスコ、ん゛!?」

燈果がフォローしようとするも、絢斗が余計なことを言ったため、真綾から一発食らった。


「どうしたの?」

しかも、遙華かが目を離している隙に。


「…あっ!今日はハッピーカラーで見回りよ!」

燈果が空気を変えるためか、にこりと微笑み、今日の活動内容を言いながらお菓子の準備を始めた。


「ところで何故お菓子?」

「…美味しいじゃない?」

真綾の質問にキョトンとした顔で答える燈果。


「いえ、そうでなく。何故学校でお菓子?」

「………美味しいじゃない?」

真綾が首を振ってそうでなくと言うも、燈果からは同じ答えしか返ってこなかった。


「…………」

諦めた真綾は皿に盛られたお菓子を大人しく食べ始めた。


「トーカさんって基本、天然だよな」

「え?そう?ってトウカ先生ね!」

注意された絢斗は特に気にせず、お菓子を食べてお茶に手を出した。


「ぐっ…ゴホッゴホッ」

お茶を飲んだ途端、絢斗は咳をしてまた悶え苦しんだ。


「アヤト!?大丈夫?!」

驚いた遙華が腰を浮かせて絢斗の背中を撫でた。


「トーカさん!?

 お茶んなか何入れました!?」

絢斗は舌をヒーヒーと出しながら、お茶を指差しながら言った。


「何って…普通に砂糖を…」

「燈果先生それは砂糖ではなくデッドソースです」

燈果の持った器には、真っ赤なドロドロとした液体が入っていた。


「んでそんなもんあるんですか!?」

「え…なんでかしら」

二人がそんなやり取りをしてる間に、遙華は汲んできた水を絢斗にあげた。

一気飲みしてようやく落ち着いたようだ。


「砂糖とデッドソースをどうしたら間違えんだ…」

絢斗が溜め息を着くと、真綾は普通にお茶を飲んでいた。


「マーヤの舌って一体…」

自分の妹の味覚を心配に思いながら、食べ終わった皿を洗い始めた。

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