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Ancient Alchemist Online  作者: はむだんご
一章
31/39

1-31




 AAO 初の公式イベントが終わり、王都は今までに見ないほどのお祭り騒ぎとなっていた。なぜそんなことが分かるかというと、もちろん王都にいるからである。イベント終了一日前に全ての攻略を終えたこともあって燃え尽きたかのように拠点でトランプやら麻雀やらに興じてダラダラ過ごしていたのだが、それも飽きてきて暇つぶしに生産活動をし始めたのだ。つまり何が言いたいかというと


「ありがとうございましたー」


 その売り子という名の在庫処理を押しつけられていたというわけだ。イベント期間中に作りまくっていたせいで、皆の生産ジョブのレベルや練度が跳ね上がり、昨日一日でイベント期間中に売った数の50%に及ぶほどの量を作れてしまった。そのこともあって、イベント終了から今に至るまでずっとせっせと商品を売り続けているのである。


 ちなみに、ランキングが発表されてからお客さんの皆には「生産ランキング1位絶対あんただろ(笑)」という、若干呆れ混じりのお言葉を頂戴したが、口に人差し指を当ててニッコリ笑顔で「ヒ・ミ・ツ・です♡」で押し通した。まあ実際、1位は俺ではなくぶっちぎりでリーゼであった。


 なぜかというと、リーゼの持つスキル<錬金>によるものである。錬金スキルのレベルが15になると複製という魔法を覚えるのだが、コレがまた便利で、元の品質よりも一段階下がってしまうが同じアイテムを10個まで同時に作ることが出来るのだ。ただし複製元となるアイテムは消滅し、複製で出来た物を再度複製することは出来ない。


 まあそういうわけもあって、リーゼは俺のポイントの十倍近くある。あ、ちなみに俺は2位だったぞ。


「……よっ」

「あ、ノエルちゃん。い、いらっしゃい」


 店の前に現れたのは、エルフの少女ノエルちゃんだ。まあ絶対に来るだろうなぁ、とは思っていたが。


「……いろいろ、追求、しに来た」

「ド直球だなっ!?」


 追求したい、というのは十中八九イベントのことだろう。まあノエルちゃんには、包み隠さず聞かれたことを話して懐柔してこいとのお達しが出ている。……ホントに姉さんとメノウは何と戦っているんだろうか?まあ逆らうとお話という名のお説教が待っているので、素直に従うしかあるまい。


「取りあえず待っててくれ」

「……手伝う?」

「いや、それはありがたいんだけど……ここ、狭くて一人しか入れないんだよね」

「……わかった。……あそこで、待ってる」


 そういって、指さした方にある喫茶店のようなお店の中に入っていった。


 ……よしっ、さっさと売り切ろう。






「お待たせしました、ライチティーです~」

「あ、ども」


 注文した物を店員さん受け取り、改めて向かいの席に座るノエルちゃんの方に向き直す。


「えっと……それで、話ってなんだ?」


 わかりきっていることだが、一応聞いておく。


「……無論、ランキング、のこと」

「デスヨネ」

「……言いたく、ないなら、無理に、聞かない」

「いや、それは気にしなくてもいい。ただ、他の人には……」

「……わかった。……他言は、しない」


 っほ、よかったぁ~……。


「……ただし」

「へ!?……ただし?」

「……後で、モフらせて」

「……」


 ノエルちゃん、ちょっと目が怖いんですけどっ!?


 しかし、ここでノエルちゃんの要求を断れば下手な拷問よりつらい"お話"が待っている。それに比べて、モフられるのはどうか?相手が気持ち悪い男であったならば鳥肌物だが、幸い相手は可愛い女の子だ。可愛い女の子にモフられるなんて、場合によってはお金を払うまである。うん、何も問題は無い。むしろご褒美だっ!


「わかった。気が済むまで好きにするといい」

「……そう(ニヤァ)」


 ……やっぱり早まったかもしれない。


「……楽しみに、してる。……それより、聞きたい、ことが、いっぱい、ある」

「お、おう。何でも聞け!」

「……なら、遠慮無く。……あなたたちの、イベントの、成績、教えて」


 いきなりそこか。まあ、まどろっこしいのはあまり好きではないので、直球に聞いてきてくれるのはありがたい。


「個人は1位から5位、パーティーは1位だ」

「……まあ、予想通り。……なら、あの、石版は、何、だったの?」

「石版って、塔を攻略したら手に入るやつのことか?」

「……ん」

「え~と、全部手に入れたら新しいダンジョンへの階段が現れる、っていうアイテムだな」

「……新しい、ダンジョン?」

「そう。神の試練とか言って、四つの塔のボスが同時に出てきてな……」

「……マジ?」

「マジ」

「……わかった。……なら、次。……ヨシノの、今の、レベルは?」

「今は上級47レベルだな」

「……高、過ぎ、ない?」

「王都に着いたのは、ゲームが始まってから三日後だったからな。すぐに上級ジョブに転職出来たんだよ」

「……マジ?」

「マジ」






「……大体、聞きたい、こと、聞けた。……ありがとう」

「それならよかった」


 あれから30分ほどいろいろと質問され、包み隠さず素直に答えた。


 主に聞きたかったことは最初の方に質問したことだけだったようで、そこからは普通に世間話みたいなことをしていた。


「……さて、そろそろ……」

「え、え~と……ノエルちゃん?こ、ここでするのっ!?」

「……ふふふ、待ちきれない」


 ノエルちゃんが手をワキワキさせながらこちらににじり寄ってくる。


「み、みんな見てるから!せめて違う場所で――」

「――もんどーむよー」


 ――ベシィンッ!


「……むぅ、痛い、リリア」

「……あんたは何をやってるのよ!今からイベントの報酬何を取るか皆で決めようって、何回もメールしたはずなんだけどっ!」

「……ひゅー、ひゅー」

「……わざとなのね?そう……わざとなのねっ!?」

「……いひゃい、いひゃいっ、ひひあっ」


 ノエルちゃんは、リリアに頬を引っ張られながら連行されていった。


「……ほほえへほほー(おぼえてろよー)


 ……ノエルちゃん、それ三下が吐く台詞……。



























































 ――モフモフ


 俺の手は、なぜか自分の耳をモフモフしていた。


 べっ、別に残念だなんて思ってないんだからねっ!!




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