脱出方法
え。
今のってこの美少年のセリフ?いやいや、ダメでしょう。こんなきれいな顔してるのに見た目とのギャップ激しすぎるよ。
「取り敢えず、黙っとけ。」
目の前の美少年はそうやって呟くと、片手をサーペントにかざす。次の瞬間にはあたりには静寂が満ちていた。俺は何が起こったのか理解するのに数秒かかった。多分、氷なのだろう。一瞬でサーペントに対して魔法を使い、やつを氷漬けにしたようだ。
「・・・これでしばらくは邪魔が入らないか。改めて、久しぶり、ソーマ。」
「もしかしてお前が、キースなのか?」
記憶のない俺にとってはまったくの初対面だが、話の流れからしてこいつがキースなのだろう。
「そっか。まあソーマがなんの障害も持たずに再び会えるってことの方がおかしいか。でもまさか、記憶をすべて失っているなんて、ね。まあ、記憶があろうがなかろうが僕がソーマに救われた事実は変わらないし、僕の忠誠が揺らぐことはないよ。」
ち、忠誠?
「ソーマ、キースは私と同じで「僕が自分で自己紹介するからいい。」
ティムの言葉をさえぎって話し始めるキース。こいつ勇者だな。
「僕はキース。ティムと同じ幻想種で、ディーリルビー種。純血は僕が最後かな。んで、僕は氷と水の魔法を使える。敢えて言うなら無属性も。幻覚や騙し討ちは僕の得意分野。この場所のセッティングも僕がしたんだ。まあサーペントに魔力奪われかけたのは想定外だったけど。」
「幻覚?」
「そうそう。例えば、あそこの氷柱見て。」
キースの指さす先には大量の金貨が氷漬けにされているように見える。
「あれ、お金に見えるでしょ。実際はノアが調合した爆薬が入ってるだけだから。氷柱壊そうとしたら間違いなく死ぬよ。」
つまりは幻覚で金貨が見せられてるってわけか。でも待てよ?精霊って自然から生まれるんだよな?それなのに複数の魔法を使う、ましてや無属性っておかしくないか?それを考えると、純血って言葉にも違和感が・・・。
「それは私たちが幻想種だからよ。私たちは一応精霊だけど、普通の精霊とは根本的に違うのよ。今となっては正確なことはわからないけど、幻想種の私たちがアポルに誕生した最初の意志を持つ生物って言われてるわ。ただの伝説だから本当か嘘かなんて誰にもわからないわよ、何億年も前の話だし。で、私たちがどうやって生まれたのかはわからないけど私たち幻想種は子孫を残すことが可能なの。今、どこにでもいる精霊たちは私たちの子孫って言う説もあれば、大昔の幻想種が創ったって説もあるわ。つまり、幻想種は子供を産めるのよ。普通の精霊は自然から生まれて自然に還るけど、私たちは親から生まれて無に還るのよ。あ、幻想種と人の間にも子供はいるわよ。そもそも無属性の魔法自体が発端は幻想種って聞いたわ。私たちの血が混じった子のうち、才能ある子が無属性魔法を使いこなせるようね。本来無属性魔法は私たちが使うそれぞれの魔法だけ、つまり3種類しかないけれど、いろんなところで血が濃ゆくなったり薄くなったり、混ざったりして今は多種多様な魔法が生まれてるみたい。」
へー。アポルもいろいろあるんだな。
「早くここから出ようよ。僕がどれだけこの山に籠ってたと思うの。」
キースに急かされてそれもそうかと思う。でも、またあの大軍を突っ切るのは面倒だなと思う。
「ソーマ、僕が何のためにここに自らを封印したと思ってるの。ここからなら簡単に出られるからだよ。僕たち限定で。この場所探すのに苦労したなぁ。外から入るのは困難で、出ることができるのは身内だけっていう場所。みんなついてきて!」
キースの後を3人でついて行く。若干フォルドの顔色が悪い気がするのは気のせいか?
「ここだよ。」
キースに連れてこられたのは、洞窟の奥深く。そして目の前の景色に言葉を失う。ゴーゴーと物凄い濁流が果てしなく流れているのだ。
これ、落ちたらさすがの俺でも死にそう。
足元に落ちていた拳サイズの氷を投げ込むと、一瞬にして流れに呑まれて見えなくなる。しかも、沈んだというより流されたようにしか見えない。多分氷が沈む速度より流れの方が早いんだろう。
「ここを通れば一切敵とは遭遇せずに外に出られるよ。」
「外には出れても流れから脱出できるとは限らないわよ。」
「何を言ってるの、ティム?流されたらフジュールの最深部に行きついて死んじゃうよ。もちろん、流れに逆らって泳ぐんだよ。」
サーーーーーッ
三人とも顔から血の気が引く。ってかフォルドの顔色が悪かったのはこれが原因か。
「因みに、フォルドがキースを封印した時はどうやって地上に戻ったんだ?」
「キースにここを教えられたが、何かの冗談だと思って普通にもう一度すべての層を通った。幸い儂は飛べるからほとんど負担にはならなかった。」
「なんでだよ!?ここ通ったらすぐ地上なのに!」
キースって頭大丈夫なのか?こんなとこ通れるわけないだろ。
「まあいいや。仕方ないからソーマだけじゃなくてティムたちも乗せてあげるよ。」
そう言って、キースは単身濁流に飛び込んだ。




