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転生(仮)  作者: 成宮レイ
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精霊の過去

「昔、大きな戦争は2度起こった。1度目は1700年くらい前、2度目は500いや、600年くらい前かな。その1度目の戦争で精霊はほとんど殺された。」

「いったい何が起こったんだ?」

「魔人と精霊の間に子供が生まれたんだ。でも相手が悪かった。当時の魔王の1人娘だったんだ。兄は2人いたって話だったが。その当時の魔王は他種族排斥派で、自分から仕掛けることはないもののいつでも人間や魔獣と争う支度はできていた。そんな魔王が溺愛してる娘が他種族、しかも人ですらない精霊との間の子どもなんて認めるわけがなかった。魔王は怒り狂った。すぐに相手の精霊を殺して王女の子どもも生まれた瞬間殺そうとした。でも、その精霊は王女の絶対精霊だった。娘を溺愛してる魔王は、精霊を殺すと、精霊が持つ王女の魂まで破壊してしまうことを恐れた。王女から核を取り上げようとしたが王女はすでに体内に核を入れてしまっていた。それでも王女は精霊と自分のまだ生まれていない子どもに危機が迫っていることを知り、精霊に助けを求めた。精霊は仲間を呼んで王女を連れ出したんだ。ヨールキ大陸の北側に。そこは今でも知ってる奴は知っているが少数種族が暮らす平和な土地だった。今でいう少数ってだけでその頃はかなりの数がいたがな。エルフや龍種、精霊もそこにはたくさんいた。心優しい王女はそこでみんなから慕われた。だが魔王がそんなことを許すわけがなかったんだ。そこで魔王は噂を流した。魔人だけでなく人間や魔獣のもとにも。『精霊が人を攫って自分たちの領土へ幽閉している。魔人の王女も攫われた。やつらは我々を騙して戦争を始める気だ。人質として近しいものが連れていかれるのを黙ってみているのか?』ってな。もちろん魔人は怒り狂った。国にいる精霊を片っ端から殺しまくった。契約精霊や絶対精霊を殺されそうになって庇った魔人も殺されたり、他人に殺されるくらいならと精霊とともに自殺したものもいた。最初は当てにしていなかった人間や魔獣も、魔人の王女が攫われたことや魔人が精霊を皆殺しにしているのを聞いて噂を信じはじめた。そこからは地獄だったよ。精霊狩りがヨールキ全体で起こったんだ。各地の精霊がほとんど殺されるとその矛先は北側に向いた。心優しい王女はそのことに気が付いて魔人の国に戻って魔王を説得しようと思ったらしいが、今更何を言っても無駄だと精霊たちに諭されたらしい。薄々そのことにも感ずいていた王女は、その場にとどまることを選んだ。魔人、人間、魔獣は結託して『軍』と名乗り、北側へ乗り込んだ。精霊だけでなくエルフや龍種も王女が好きだったし、自分の住処を荒らされたことに怒った。エルフや龍種は当時は人間の半数くらいの人口はそれぞれあったし、何より力があったから戦いは拮抗した。それでも結局数の差がモノを言い、軍が勝ってしまった。王女は心を痛め、攻め込んできた軍の前線に立つ魔王の目の前で自ら命を絶った。そこで我に返った魔王の周りには血の海しか広がっていなかった。王女が死んだことで軍は戦う大きな目的がなくなった。それとは逆に精霊たちは怒り狂った。結局戦線は精霊たち側に有利になり軍を北側から追い払うことで戦争は終わった。二度とこんなことにならないように精霊は魔人と魔人の住む場所の境界に大きなラインを引いた。それが今でいうあのルシュッド川とシュルメール峡谷だ。」


キューリィの話に一段落ついたところでオリが質問する。


「その王女の子どもは?その後北側と軍はどうなったの?」

「北側のことは詳しくはわからん。ただ、王女の子どもはちゃんと生き残ったらしい。軍はすぐに解散した。そもそもあの魔王が人間や魔獣と長く付き合えるわけがなかったんだからな。魔人も人間も魔獣も精霊が扱えるものがいなくなって魔法(マジック)アイテムがほとんどなくなったり、植物や気候が変わったりで大変な騒ぎだった。人はみんな精霊の存在の大きさにやっと気づいたらしいな。だいぶ遅かったが。」


思っていたより大分ひどかった。オリやシャルムは言葉を失ってる。

話を聞いていたらしいティムが話し始める。


「残念だけど、その話には多少誤りがあるわ。まず王女は自殺なんかしていない。魔王に殺されたのよ。戦争の最中、魔王は完全に狂ってしまってた。あの子は『父親の責任は私がとらなくちゃ!』って聞かなくて魔王の前に飛び出したのよ。子供を産んだばかりで衰弱した体にムチ打って。目の前の娘に気づいた王が放った言葉は最低の極みだった。『お前誰だ?精霊側に寝返ったものなどもうどうでもよいわ』ですって。そしてそのまま自らの手で娘であるあの子を殺したのよ。私たち精霊側が負けたのは数のせいじゃない。あの子ができるだけ殺さないでほしいって言ったからよ。私たちにとって、殺さない程度に相手の戦力を奪うなんて難しかった。でもあの子が殺されたことで私たちを止めるものは居なくなった。まあ魔王が自分の娘を殺したって言う動揺が軍全体に広がって戦争どころじゃなくなってたって言うのも事実だけど。あの子が殺されたことで父親である精霊も死んでしまった。私たちはその子供をみんなで大切に育てた。」



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