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王子の婚約者がくじ引きで決まりました!

ネスティーラ王国は、運命を重んじる不思議な国だった。運命こそが、人を幸福に導くと信じられていたのである。


特に『運命』に信仰心の厚かったネスティーラ王国の王様は、自分の妃までもを運命に委ねた。


妃の決め方はなんとくじ引き!


国に住む未婚の女性、全員を対象にしたくじ引きだった。選ばれる女性は、身分も年齢も関係なかった。中には八十歳の老婆が選ばれた事もあれば、産まれて間もない赤ん坊が選ばれた事もある。


今回決めるのは、王子の婚約者であった。くじ引きの日程のお達しが来ると、国の未婚の女性達は色めき立った。中には結婚を取りやめる女性もいたとか、いないとか。


「ふ~ん」


ルオラは、一週間前の新聞を読み、くじ引きの話を知った。下人である彼の手に新聞が渡る頃には新聞の日付が一週間過ぎていた。

彼は産まれてから屋敷を出た事がなく、外の世界を知らなかった為、新聞紙は一週間前のものでも大切に読んでいた。


「くじ引きは一週間後……って事は、今日か」


ルオラは新聞を畳み、焼却炉の燃料としてくべた。他の新聞も同じようにくべてしまうと、畑へ向かった。


ルオラは、この田舎の領地一帯を収める貴族、バレッティ卿に仕えていた。ルオラはバレッティ卿の妾の子であった。母親は幼い頃に亡くなり、文字の読み書きだけは辛うじて習う事が出来た。


バレッティ卿には年頃の娘がいた為、ルオラは屋敷の庭に建てた小屋に住んでいた。


畑仕事や園芸の仕事を与えられ、毎日手を抜くことなく励んでいた。


畑に着いたルオラは、鍬の持ち手の先にコガラがとまっているのを見て、笑顔になった。


「その鍬今から使いたいんだけどなぁ」


そう言って、ポケットから巾着を取りだした。その中に入っていた乾燥したトウモロコシの粒を手の平に乗せて、コガラに差し出した。


コガラはひょいっと飛んで、ルオラの手の平に乗った。そのままトウモロコシを一粒づつ丁寧に食べ始めた。


「これを食べたら帰るんだぞ」


するとコガラは、「ディーディー」と甘えたような鳴き声を出した。


「ルオラ!」


その時、遠くからバレッティ卿の声がした。その声でコガラは逃げてしまい、ルオラも急いで残りのトウモロコシの粒をポケットに突っ込んだ。


「はい! 旦那様!」


「ティアナが! ティアナが選ばれた!」


「……はい?」


まるまるとした恰幅の良いバレッティ卿が、汗を垂らしながら畑を横断してきた。その様子に、ルオラは驚いた。今まで畑に入ってきた事がなかったからだ。

「だから、選ばれたのだ!」

自慢のピカピカな革靴に土が飛び散っている。一体何があったというのだろうか。


「……何でしょうか?」


よく見るとバレッティ卿の手には、質の良さそうな羊皮紙で書かれた手紙が握られていた。「くじ引きに選ばれたんだ! 王子の婚約者に、我が娘のティアナが選ばれたんだ!」


「え!」


「これを見ろ!」




ティアナ・バレッティ様へ


本日くじ引きにより、婚約者に選ばれました。つきましては、城にて顔合わせをお願いしたく存じます。


日時 六月二十二日 午後三時


お一人で登城下さい。 


国王グリトベル・アルフォンス・ネスティスより




「ほ、本物じゃないですか!」


差し出されたくしゃくしゃの手紙の内容は、確かに国王からティアナに向けてだった。


「そうだろう! そうだろうとも!」


「顔合わせは明日ですよ! 旦那様、ティアナ様にはもうお伝えしたのですか?」


ルオラがそう聞くと、バレッティ卿は喜び勇んでいた表情を一転、深刻な顔になった。


「……それが、」




昨日の記憶を思い出していたルオラは、溜息を吐いた。


「溜息は幸せが逃げます。お控え下さい」


「す、すみません」


「もう少し声は高く」


「は、はいっ」


馬車の向かい席に座るメイド長に注意を受け、ルオラは姿勢を正した。


結論から言うと、ルオラは身代わりにされていた。何の身代わりかというと、勿論ティアナの身代わりである。


ティアナには、心に決めた人がいた。相手は御者の青年で、平民であった。


貴族のティアナとはつり合わない。それはティアナも相手の青年も分かっていた。


認めるわけにはいかなかった。そのうち熱は冷めるだろうと、バレッティ卿は放っていたが、それがいけなかった。


くじ引きの日の明朝、ティアナは青年と駆け落ちをしてしまったのである。直ぐに人を雇って捜させた。


バレッティ卿は保険のつもりでルオラを代役にした。彼はティアナと年が近く、父親が同じ事もあり顔立ちが似ていた。

蜂蜜のように光沢のある金髪に、海を閉じ込めたような碧眼。丸みのある輪郭に唇は小さく、十八歳にしては幼い顔立ちだった。

それにルオラは屋敷の中で住んでいたので、人に顔を知られておらず、好都合だった。


ルオラは風呂場に連行され、ドレスを着せられ、ヒールを履かされた。


しかも、言葉使いや立ち振る舞いを頭にたたき込まれる事になったのである。溜息くらい自由に吐かせてもらいたいものだ。


結局、保険が最終手段になってしまった。


メイド長と共にルオラが馬車に乗って向かう先は、お城だった。

とりあえず、簡潔まで頑張りたいです! おねしゃす!! うぃっす!!

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