第二話 料理人が来たって!?
「お館様! 凄いのが来ました!」
え? 何? 何が来たの? なになに? 言ってよ蘭丸。
「料理人です!」
きたあああああああああああああああああ!
「ケン? ケンか? やっとケンが来た?」
『信長のシェフ』という漫画がある。平成や令和から来ていてあの漫画を覚えている奴を並べてストーリーを整えさせた。
うろ覚えでも三人寄ればなんとやら。あの漫画の信長が羨ましかった。あいつのとこにはちゃんと役に立つスキルを持った人が行ってるのに!
俺のところに来るのはハズレばかり。ハズレタイムスリッパーというか、ハズレ転生者というか。
ITエンジニアが何しにきたんだという感じだ。
お前のその "public static void main(String...args)" でJavaのエントリーポイントを作るという知識は、多分この世界では役に立たない。
そうかそうか、ついにケンが来てくれたか!
「ようこそようこそ、織田信長です。いやいや、料理人なんだってね」
俺は相好を崩し愛想よく肩を抱きながら話しかけた。
「あ、はい……料理人といっても」
「いっても?」
「僕がいたのはチェーン店でして」
なんか話が違わないか?
「オペレーションに従ってやってただけで、さほど料理が得意というわけでは……」
「え? じゃああれできないの? 金平糖を砕いてわたあめ作る奴とか?」
「……ちょっと分からないです」
「醤油の作り方は?」
「知りません」
俺は蘭丸を睨みつけた。蘭丸も幻滅している。料理人じゃなくて、アルバイトの人じゃんこれ。
「俺、豚骨ラーメンっての食べてみたいんだけど、作ったことある?」
「それはメニューにありました」
「作れる?」
「材料さえあれば」
「何が必要?」
「まず業務用スープです。麺は製麺所から買ってきて──」
ガッカリである。
しかし! 今日はまだ戦力になりそうなのが来ているのだ。令和のトラックは今日もガンガン男子高校生を撥ねている。転生って本当はトラックの運ちゃんの能力なのではないのだろうか。
さて今度は農業高校の学生だ。
これならきっと現代でも役に立つ。そう期待して話をしてみるのだが、四百年も離れると前提知識が違いすぎる。燐鉱石だの加里塩だの硝石だの、この国ではあまり取れんじゃないか。どうするのか聞いたら「コーナンに売ってます」そのコーナンをタイムスリップさせてきやがれ。
設計技師は便利かと思ったけど、開口一番「CADはありますか?」お前は義務教育を受けてきたのか。寝てたんじゃないのかと小一時間問い詰めたい。16世紀にCADがあったらフォン・ノイマンは何を発明するっていうのか。
「殿、フォン・ノイマンはCADを発明してません」
「だからその前提となるコンピュータを発明する必要がないって意味だよ」
「わかりにくいですね。令和の子どもはそういう一捻りしたのは受け入れません。オヤハラですね」
「なにそれ?」
「オヤジ・ハラスメントです」
「そんなもんねえだろ。蘭丸くん、今作ったでしょ?」
「てへ。あ、ランチはカレーらしいですよ」
タイムスリッパーがレトルトのボンカレーを持ってきていて、俺たちはめっぽうハマっていた。今では明から死ぬほどスパイスを買っている。
ターメリックとかクミンとか。俺も鬱金じゃなくてターメリックだもんな。ずいぶん毒されてきたものだ。




