本当に、ここどこですか? ④
「リィオ・アーナミ・・・・・。
何か・・・、振っ切れたような顔をしていますね」
俺の顔をじいっと観察しながら、テンダさんはそう言う。
「気持ちを前向きにして、自分を奮い立たせているんです。」
「いきなり知らない世界に来て、その気持ちの切り替えの早さには目を見張るものがありますね。
あなたの前に召喚された聖女さえも、数日は動揺を隠せずに過ごしていましたよ」
「そんなたいしたものじゃないです。たぶん元の世界には還ることが難しいんだろうなという事を、理解して自分の中に受け入れようとしているだけです」
「リィオ・アーナミは、気持ちの切り替えが早い方だと思いますよ」
俺が行き交う人々を観察していると、テンダさんが『コホン』とせき込みながら。
「そろそろ教会に向かいましょうか、グズグズしていると日が暮れてしまいます」
俺は慌てて「申し訳ございません、無駄に時間を使ってしまって」と言いながら、前を歩き始めたテンダさんの後をついて行く。
「テンダさんそれにしても、なんで俺に優しく対応してくれるんですか?城の人たちの俺に対する対応は、もっと辛辣と言うか冷たい対応だったのに」
「・・・・・、それは違いますね」
そうボソッと言ったあと、テンダさんは静かに立ち止まり。俺の方を振り返って、俺の目をじっと見て喋りだす。
「リィオ・アーナミ、・・・あなたは甘いですよ」
「えっ・・・」テンダさんがどういう意味で言っているのか理解できず、困惑してしまう?
「それはあなたの性格なのか、あなたの世界の生活環境が原因なのか知りませんが。
リィオ・アーナミ、あなたの考えは甘いです。甘すぎですよ!」
その指摘に俺は「・・・・・」と、絶句してしまう。
「あなたは人にありがとうございますと、ちゃんと感謝を伝えられる人です。・・・なので、それに免じて特別に、お教えしましょう」
「あなたは人を信用しすぎです。言葉どおりに受け取るのではなく、まずは疑うことなんです。
このドギア国では特に、人の言う言葉をそのまま受け止めるのではなく。その言葉に裏があるのか、どんな意図・意味があるのか、疑って考えるべきなんですよ」
「私の事だってそうです。リィオ・アーナミは私の事を、なんで優しく対応してくれるんですかと尋ねましたけど。あなたをこうして教会まで連れて送り届けているのも、司祭に教会まで案内しろと言われたからです。司祭にあなたの対応を頼まれていなければ、城にいる者と同じく辛辣に冷たい対応をしていたでしょう」
「先ほど王女様とリィオ・アーナミが口論しょうとした時に、あなたの肩を掴んで止めたのだって。厄介ごとにしない為ですよ。もしあのまま二人の口論が続いていれば、リィオ・アーナミのイルア村の派遣が取り消される可能性がありました。司祭が国王に進言してイルア村の派遣が決まったのです。」
「イルア村の派遣が取り消されれば、司祭が国王に進言したメンツ・面目が立ちません。王女が激怒してリィオ・アーナミに何らかの処罰を行った場合、国王は司祭にイルア村の派遣の事を発言をしたからだと憤慨するかもしれません。そうすれば、司祭にとがめられるのは私です。」
テンダさんは、俺に聞こえないくらいに「司祭はきっと、なんで止めなかったんだ・お前は何していたんだと。ずっとネチネチ言うに決まっている」小声でボソボソと言っている。
「リィオ・アーナミがドギア国に召喚されてから、期待されたり優しくした者はいないと思っていいでしょう。この国で生きて行くのならば、人の言葉を疑うことです。意味・意図・打算がないかをもっと考えるべきです。つまり、人を簡単に信用しない事です。」
「そうしないと、この国では生きていけませんよ。
生きて行けたとしても、良いように利用されて使いつぶされるだけですね。現にあなたはこの国の都合で召喚され、この国の都合でイルア村に派遣されるわけですから。
そのことをよく念頭に置いて、考えて行動した方がいいです」
テンダさんの言葉に、俺は圧倒されて「・・・・・・」ただひたすらに無言でいると。
「・・・私とした事が、語りすぎてしまいましたね。」 「普段はこんなアドバイスなんてしないんですが」と、後半小声になってから。「話しはもう、終わりにしましょう」と、言う。
「さぁ、行きましょうか。もうすぐで教会につきますので」
そう言ってテンダさんは、前を歩きだし始めた。
俺はそれを見つめながら、テンダさんに思うこ事を話す。
「テンダさん!俺はテンダさんを、冷たい人だとは思いません。もし本当に冷たく対応する人なら、何も言わないと思います。無関心で何もしないと思います。こんなにアドバイスをしないですよ。」
俺が話しかけると、テンダさんは立ち止まり振り向く。
「でもそうですね、・・・確かに。ここは、日本じゃないですから。もっと人に対して、疑って・注意して・警戒しないといけにですよね。わかりました、そのことを念頭に入れて考えを改め直します。
テンダさん本当に、ありがとうございます。」
俺はテンダさんに向かって、深々と頭を下げる。
「ですから、簡単に人を信用するなと言っているでしょう。
フゥゥ・・・あなたが長生きするかはわかりませんが、せいぜい気を付けるのですね。まったく私も、何でこんな事を言ってるんでしょうか?」 「何も知らないで召喚された、異世界人に同情したのかもしれませんね」と、後半は小声になって、何を言っているのか聴き取れない。
「さぁ、本当に行きますよ。いつまでもこうしていると日が暮れてしまいます」
そう言い、再び歩き出すテンダさん。それに今度こそ俺も、テンダさんについて行き歩き出す。
それからしばらく歩いていると、かなり大きな教会が見えてくる。教会の横に連なつて二階の建物がある。教会の横の建物の入り口の前に、小さな少年が一人元気よく走っている。すると少年は、何かにつまづき盛大に転んでしまう。
そこにそれに気づいた、若いシスターの格好をした人が近づき。少年の足元に手をかざしたかと思うと、手から緑色の光が発光し出す。
すると少年は元気に立ち上がり、シスターに笑顔で話しかけている。
テンダさんはその前まで行くと、シスターに話しかける。
「患者でもない者に治癒行為をしていると、また怒られますよ。
・・・・・聖女様」
テンダさんがそう言う相手を見て、俺は「えっ・・・」と、声お漏らす。
「きみが・・・・・・・・・・」
「 聖女。 」




