43話 37㎜砲の威力
すいません、短めです。
37㎜徹甲弾は3型戦車の正面に命中した。
ど真ん中だ。
俺は握りこぶしを作って「やっしゃあ」と言おうとしたのだがその言葉を飲み込んだ。
37㎜砲弾は3型戦車の前面装甲を抜けなかったのだ。
「な、なんで? 400m位しか離れてないんだぞ。この至近距離で弾かれるか!」
俺の言葉にエミリーが反応する。
「ねえお兄ちゃん。この37㎜砲ってどのくらいの威力があるの?」
俺はそれに答えながら次弾装填をする。
「解からん。そもそも製造元も型式も不明だからな――装填完了」
ミウが即座に37㎜徹甲弾を発射する。
発射し終わるとエミリーはしゃべりながらも車体を再び岩影に隠す。
「あっ、また弾かれた。あの戦車の前面装甲は撃ち抜けないみたいね.ねえ、あの戦車の装甲ってどのくらいの厚さがあるの?」
「3型戦車だろ。50㎜砲装備のタイプだと50㎜くらいじゃなかったかな。あっ、そうなるとそもそも37㎜砲程度じゃ撃ち抜けないか――装填完了」
エミリーが車体を岩陰から道路側へと移動させる。
岩影から出た瞬間だった。
激しい衝撃が俺達3人を襲った。
ミウが衝撃で車外へ吹っ飛ばされて「にゃ」っと言いながら空中で体をひねり、足と手で地面に降り立った。
猫か!
さすが獣人だな。
俺は前のめりにぶっ倒れて操縦席のエミリーに覆いかぶさる。
「な、なにしてんのよお兄ちゃん、その手をどかしなさいって!」
一瞬意識が飛びそうになった俺だが、エミリーの右フックで現実に戻された。
「痛たたたた。ミウの方は大丈夫か?」
「はい、びっくりしましたがなんとか大丈夫です」
よくよく見るとエンジンからどす黒い煙がもくもくと上がっている。
どうやらエンジンに砲弾を喰らったらしい。
敵の50㎜徹甲弾は右側面の装甲を貫いて、エンジンを損傷。そして左側面の装甲を破ってどこかへ飛んでったようだ。
徹甲榴弾だったら終わってたな。
っていうかあと10数㎝ずれてたら俺の体がバラバラだったてことだ。
考えたくもないけどな……
「2人とも早く戦車から離れろ。いつ誘爆するかわからねえぞ。自分の荷物忘れんなよ!」
愛用の短機関銃と自分のバックを握ると、大急ぎで戦車から離れる。
エミリーとミウも同様、荷物を持って俺の近くへ走ってきた。
敵戦車は後進状態でぐんぐんと距離を広げていった。
退却するらしい。
セメトン戦車の勝利、いや護送部隊の勝利か。
敵戦車が元の隠れていた林の中へと入っていく最中、セメトン戦車はやっと砲弾の装填が終わったようで狙いすました1発を放った。
セメトン戦車が放った75㎜砲弾は3型戦車のキャタピラに命中して爆散。
対戦車榴弾ではない、徹甲弾でもない。普通の榴弾みたいだな。
もしかしたら対戦車榴弾は1発しか積んでなかったのかもしれない。
高価なものだからね。
動けなくなった3型戦車というと、ハッチが開き搭乗員達が飛び出してきた。
斥候に出たハンター達がライフル銃でそれを撃ち始める。
しかし搭乗員達は林の中へと消えていった。
あれ?
思ってたよりもアベンジャーズのメンバーって大したことない気がするんだが。
何より俺達が勝利したくらいだから。
それよりも目の前にある問題を解決しないといけない。
撃破されたホーンラビットを遠目に見ながら、どうしたもんかと考え込む俺達だった。
次話投稿も明日の予定です。
明日もよろしくです。




