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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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42話 対戦車榴弾






 しかしここに隠れていても時間が過ぎるだけで先へ進めない。

 俺達がいる場所は岩のすぐ後ろ。

 ちょうど敵陣営からは死角になって撃たれないようで、全然弾が飛んでこない。

 ただしこちらからも攻撃ができない。


 隊長達の乗る装甲兵員輸送車は、完全に林に車両を入れてしまっているので安全みたいだ。


 セメトン戦車が敵の矢面に立って集中砲火を浴びている。

 でも地の利の良いくぼみに入ってるからほとんど車体を露出していない。

 たまに命中弾を受けるが全面を斜めに向けているため、砲弾がすべるように装甲板に弾かれていく。 

 うん、良い角度で車体を敵に向けてるね。

 それに他の戦車の引っぺがした装甲を全面に張り付けている。

 増加装甲ってやつだな。

 

 しかしこんなことしてても弾薬を無駄に消費するだけだ。

 さすがに隊長は斥候を出すことにしたらしい。

 装甲兵員輸送車からハンターが4人降りて林の中に入っていく。

 そのうちの1人がショルダーガンと言われる対戦車擲弾発射機を担いでいる。

 命中率は悪いが威力はそこそこある携帯型の対戦車武器だ。


 お互いに撃っても無駄ということが解ったようで射撃音が止んだ。


 辺りは静まり返り、時折野生動物なのか魔獣なのか何かの声が遠くで聞こえる。


 それを聞きながらエミリーは紅茶をすする。


「エミリーは呑気でいいな。一応戦闘中なんだけどさ」


 俺の嫌味にエミリーが返す。


「それなら暇そうにしてるお兄ちゃんが敵をやっつけてくれば丸く収まるよ」


 ぐぬぬぬ、エミリーめ。

 あー言えばこー言う。


 そんな兄妹喧嘩をしている時だった。


 誰かが叫んだ。


「敵戦車!」


 その声に俺は敵陣営を岩陰から除く。


「エミリー、敵戦車が林から出てきやがった!」


 エミリーとミウも岩陰から除いてるから見えてるはずだ。俺がわざわざ大声で言うこともなかった。

 でも大声にもなる。

 敵戦車の種類がヤバすぎだからだ。


「お兄ちゃん。あんなの見たことないよ。それに凄くおっきいよ、おっきい!」


 エミリー、トロルの時もそうだがその言い方ワザとだろ!


 前部で3両の戦車が出てきたのだが、初めに出てきたのは3型37㎜砲装備の戦車で次が3型50㎜砲装備の戦車、そして最後に4型75㎜砲装備の戦車が躍り出た。

 4型戦車は43口径の75㎜砲を装備した強敵だ。

 4型戦車なんてこの辺では見ないタイプ。

 もっと高ランクの魔獣が暴れまわっている地域で使われる高ランクハンターの戦車だ。

 この辺りにいる戦車が正面切ってかなう相手ではない。


 いや、こっちにも75㎜砲装備のセメトン戦車がいた。

 75㎜砲装備と言っても18口径しかない。

 解かりやすく言えば敵が43口径もある長い砲身の75㎜砲で、こちらは18口径しかない短い砲身の75㎜砲だ。

 もっと解かり易く言えばセメトン戦車の短砲身75㎜砲では威力が足りないのだ。

 速射砲というより榴弾砲だからしょうがないか。

 対戦車戦闘には向いていない。

 初速が足りない、つまり砲弾の速度が遅いから装甲貫徹力も低いのだ。


 案の定、セメトン戦車の撃った砲弾が4型戦車の正面装甲を叩くが、簡単に弾かれて明後日の方向へと飛んでいった。


 あのさ、4型戦車にはその砲じゃ通用しないからせめて3型戦車を撃ってよ。

 3型戦車ならば十分通用するからさ。


 しかしそんな思いは届かず、セメトン戦車はなおも4型戦車に短砲身75㎜砲を発射した。


 するとまたしても4型戦車に見事砲弾は命中した。


 どうせ弾かれるんだろっと思っていた俺は予想外の結果に驚いた。


 なんと、4型戦車の全面装甲板を貫通したのだ。


 それを見た瞬間、俺はある砲弾を思い出しつぶやいた。


「あの戦車、対戦車榴弾を隠し持っていやがった!」


 エミリーとミウが「何それ?」って顔をしてるので簡単に説明した。


 対戦車榴弾とは非常に高価な砲弾であり、高初速の砲弾を撃ち出す砲では逆に使用できない。

 セメトンが装備するような低初速の砲だからこそ使える砲弾だ。


 こんな低ランク魔獣しか出ない辺鄙な場所で仕事する戦車が、まさか対戦車榴弾を持っているとは思わなかったんだろう。

 いや、俺だって想像できなかったし。


 エミリーとミウに説明はしたのだが「「ふ~ん」」と言っただけで興味なさそう。


 説明するんじゃなかった!


 4型戦車は1発の砲弾も撃たないで、大きな火柱を上げて燃え上がった。


 続いて3型37㎜砲装備の戦車がどす黒い煙を発しながら停車した。

 しかしこれはセメトン戦車の攻撃ではない。


 斥候で林に入っていたハンター達の攻撃だ。

 

 見ればかなりの至近距離から側面攻撃したようだ。

 あのショルダーガンならば至近距離でないと当てられないからな。

 命中率が極端に悪いからだ。


 うん、よく当てたな。


 残るは3型の50㎜砲装備の戦車だ。

 さて、俺達の出番かな。


 ホーンラビットを移動させ敵3型戦車を37㎜砲の射界へ入れる。


 何も言わなくてもミウが“命中”の魔法を掛ける。


 俺は徹甲弾の装填完了を告げる。


 3型戦車が後退を始めた。


 逃がすか!


 エミリーがさらに道路へと車体を露出させる。


 そして満を持してミウが37㎜砲の引き金を引いた。


 砲口から発射炎をパッと瞬かせると、激しい振動を残して敵戦車の前面装甲板へと37㎜砲弾が吸い込まれる。


 俺達3人はその光景を固唾をのんで見守るのだった。






次話投稿は明日の予定です。




明日もどうぞよろしくお願い致します。




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