41話 見えない敵
俺達護送部隊の車列は、待ち伏せの可能性のある街道を堂々と進みだした。
こもまま行けばあと10分くらいで山を抜けるトンネルに差しかかるはず。
トンネルを抜けるとしばらく1本道だが10㎞も走ると枝道がいくつか現れる。
ということはトンネルからその枝道までの10㎞の間で待ち伏せだろうな。
アベンジャーズの目的は俺達の撃破ではない。
あくまでもミカエの救出だ。
ミカエがいないのがばれてない場合だけど。
いっそ「ミカエはいません」って証言しようかとも思ったんだけどね。でもさ、ミカエはいないけど、同じ戦車に乗っていたメンバーの4人はいる。
結局は攻撃されるってことだ。
車列の先にトンネルが見えてくる。
そしてついにトンネルに突入する。
これで逃げることは難しくなった。
長いトンネルを抜けると眩しい日の光が俺達を迎えてくれる。
さて、ここからが問題だ。
どこで襲ってくるんだ?
トンネルを抜けて3㎞ほど走った辺りだった。
車列が急に止まったのだ。
俺達は一番最後尾に位置しているため、なぜ車列が止まったのかわからない。
俺は立ち上がって車列の先を見る。
「ん、なんかこっちに向かってくるぞ。戦闘準備!」
無線がないから状況が入ってこない。
でも前方から何かが近づいてくるのはわかる。
俺は双眼鏡を覗き込み、土埃が舞う前方の街道を確認する。
「お兄ちゃん、何か見えた?」
エミリーの問いに俺は答える。
「なんか待ち伏せとは違うな。う~ん、輸送車両の隊列に見えるけど一応警戒はしておけよ。手を振りながら攻撃してくるかもしれないからね」
エミリーとミウは黙って頷く。
前方から近づく隊列は輸送トラックが2台とその前後を守るように戦車が1両ずつ、そして一番先頭を偵察装甲車が走る。
ごく一般的に見かける輸送車両の隊列だ。
俺は徹甲弾を装填してミウに目配せをする。
短機関銃もいつでも撃てるように準備する。
それと手榴弾もすぐわきに置く。
輸送の車列が近づいてくる。
そして俺達の護送の車列に差しかかる。
すると向こうの装甲車の乗員がハッチから顔を出して手を上げる。
攻撃の合図か?!
いや、違った。
その合図で車列が止まったのだ。
それに合わせてこちらの車列も止まる。
どうやら無線で話をしているようだ。
もしかして普通に輸送をしている車列だったのかな。
そしてら俺達に助太刀を――無理か。向こうも護衛と輸送の任務があるからな。
せめて弾薬を譲ってもらえないか交渉する事くらいか。
あるならだけど、37㎜砲弾を安く譲ってくれないかなあ。
そんなことを考えていた時だった。
輸送部隊の最後尾の戦車の後部が炸裂した。
敵襲か?!
俺はすぐに状況を確認すると前方の街道の数百メートル先からの発砲炎を確認した。
さらに続けざまに輸送部隊の最後尾の同じ車両に再び被弾。
その命中弾で防備の薄い後部を見せていた戦車は、どす黒い黒煙を吐き出し始めた。
「敵襲~~!」
誰かが叫び超え声を上げた。
そんなのわかってるって!
俺達が輸送部隊に掩護をお願いしてると思ったんだろうな。
それでたまらずこの距離でも攻撃を仕掛けてきたんだろう。
でもあっちも輸送車両を抱えてるのに戦力を分けてもらえるはずないだろ。
アベンジャーズのメンバーは意外と頭悪いのかも。
もしかしてミカエがいないとダメなんじゃないか。
そんなことを考えながらも俺はエミリーに指示を出す。
「エミリー、右の路肩の岩の後ろに移動させろっ」
本来ならば護送車両の護衛をしなければいけないんだけど、この戦車じゃ1発喰ったら終わりだからね。まずは少しでも安全を確保しないとお仕事になりませんから。
輸送車両の部隊はというと全速力で移動を開始しました。
もちろんトンネルの方へを向かってですよ。
そりゃあ輸送車両を守りながら逃げるに決まってますよね。
戦車1両やられちゃったし。
無線でどこまで話をしたのかわからんけど、襲われてることは伝えたはず。
それなら少なくともあの輸送部隊が街へ到着すれば応援が駆けつけてくれるはずだ。
でもそれが何日先になるかはわからんが。
護送車両を牽引する兵員輸送車も路肩の林に退避する。
先頭を走っていた2型戦車が20㎜機関砲を激しくぶっ放しながら兵員輸送車を守る。
突撃砲型のセメトン戦車も主砲の75㎜砲をぶっ放すのだが、2両とも敵は見えてないようだ。
敵の撃ってくる辺りに適当に射撃しているに過ぎない。
発砲炎しか見えないんだからしょうがないんだけど、俺達にはそんな無駄弾は撃てない。貧乏性だからね。
「ミウ、敵の位置が解るか?」
一応聞いてみたけどミウは横に首を振る返答だった。
「エミリーは?」
続いて一応エミリーにも聞いてみた。
「解かるわけないじゃん」
という返事。
聞いた俺がばかだった。
2型戦車の砲塔に砲弾が命中した!
数秒後、2型戦車内から血だらけの搭乗員が1人だけ這い出してくる。
無意識に俺は助けようと身を乗り出す。
しかしエミリーの「あっ」という小さな叫び声に俺は行動が止まった。
這い出した戦車搭乗員が機関銃掃射で撃ち殺されたからだ。
「アベンジャーズの奴らめ、ひどいことしやがるな。お前らだって元ハンターだろうに」
「お兄ちゃん、どうするの。ここに隠れていてもしょうがないよ」
そのエミリーの言葉で少し考えて俺はミウに聞く。
「なあミウ、命中の魔法って目標が見えてなくても当たるのか?」
するとミウが答える。
「いえ、目標が確認できないと発動しません」
「やっぱりか。ここからだと発砲炎しかみえないからなダメか。林が邪魔で回り込むこともできないしな。まあ、この場所だとお互いに前へ出ることもできないからな。他の輸送車両が通るの待つのも手だな」
他の輸送部隊が通ったら便乗して車列に交じって逃げる算段だ。
味方のセメトン戦車は道路左の路肩のちょうどいい感じのくぼみに入ったようで、そこから散発的に榴弾を敵に向かって発射している。
すげえな。
やっぱり75㎜砲だと全然威力が違うよな。
そんなことを思いながら俺は他人事のように戦闘を眺めるのだった。
次話投稿は明日の予定です。
明日もどうぞよろしくお願い致します。




