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15話 酔いどれウサギ

ついに自走砲という名の戦車が登場です。






「ケンさん、大丈夫ですか。結構痛そうですけど」


 ミウが心配してくれているが、さすがに大怪我でもないので治癒ポーションは使ってくれませんね。

 その前に恥ずかしすぎる状況。

 助けに入ったつもりがボロクソにやられちまいました。


 今はエミリーが応急キットで俺の顔の傷を治療中である。


「お兄ちゃんは弱いくせに直ぐに無茶するんだから」


「いやまふぇ! 俺は今回れんれんむひゃしてないひょ。やふらが無茶したんだろうふが」


 くそ、まだロレツが回っておりません。


「あんな奴らほっとけばいいのよ。最近名前を聞くようになったハンターよ。ハンターランクは3等級らしいよ」


「ふ~ん。それで何してたんだよ。壁ドンなんかされやがって。俺はてっきりカツアゲされてんじゃないかと思ってだな――」


 おお、ロレツが戻ってきた。


「違うわよ、普通にナンパされてただけよ。ちょっと強引だったからびっくりしただけだから」


「ミウも大丈夫だったか?」


 ミウが元気に答える。


「はい、私には声を掛けてきませんでしたので全然大丈夫でした!」


 いや、それはそれでなんか不憫ふびんじゃないか。

 獣人はやっぱり避けられるのかな。

 こんなに可愛い尻尾と獣耳があるのにな。


「ケンさん? 何を見てるんですか」


 やば、ジロジロ見過ぎた!


「あ、そうひえばハンター協会へのほうひょくは終わっはのかな」


 ロレツで誤魔化したった!


「はい、こちらは問題なく終了しました。ケンさんの方はどうでした」


 俺は頬を腫らしたまますっくと立ち上がり、自慢げに駐車場に置いてある“ホーンラビット”を指差す。


「あれが俺達の一撃必殺、無敵の“ホーンラビット”だ!」


 ふっふっふっふ

 こいつで大暴れして、俺達もすぐに有名になって3等級、2等級とランクアップするのだ!


 エミリーとミウが若干不安そうにホーンラビットを見る。

 そして2人は無言のまま近づいて行き、直ぐそばまで来てからエミリーが37㎜砲を触り始める。

 ミウは車体の装甲板の厚さを確かめる様に、車体のあちこちを触り出す。


 俺は何かを言わなくちゃと思うのだが全く言葉が出てこない。ただただ「あうあう」と言葉にならない音を口から発するだけだ。


 しばし沈黙の後、エミリーがポツリとつぶやく。


「なんか弱そう」


 続けてミウも


「なんかやられメカっぽいです」


 エミリーはミウが同じような考えだったことに気をよくしてさらに口撃は続く。


「そうよね。雑魚っぽいよね。しかもホーンラビットって雑魚魔獣じゃないの。それに運搬車の上にいきなり対戦車砲が載ってるって変。ブサイクよ」


「はい、私もエミリーさんの意見に激しく同意いたします。なんかバランスが悪いです。はっきり言ってドン引きです」


「おい、お前ら! 言わせておけば勝手なことばかり言いやがって!」


 俺が声を荒立てたにも関わらず、エミリーは言葉を続ける。


「だってかっこ悪くなってるし。これって普通に対戦車砲を接着剤でくっつけただけじゃない。それに、お兄ちゃんのネーミングセンスもどうかと思うし」


「模型じゃねえから! 接着剤とか使ってねえし。それに車体側面の“ホーンラビット”のイラストは俺が考えたんじゃねえからな。店のおやじが好意で描いてくれたもんだからな、勘違いすんなよ。それから『一見弱そうに見えるけど角の一撃は怖い』って意味での角ウサギだから、悪い意味じゃないからな!」


「そう……まあ意味を聞けば納得もできるけど、それを知らなければただの笑いものじゃないのよ。まあいいわ。折角お店の人が好意で貼ってくれたデカールだしね。それで買い取りはどうだったの、ゴブリンの戦利品」


 ちょいちょいうざいな。

 デカールとか言ってるし。

 手描きのペイントだからな。


「ゴブリンが持ってた宝石は大した金額にはならなかったんだけどさ、毛皮が結構な金額になったんだよ。なんと占めて5,500シルバだぞ」


「思った以上じゃない、お兄ちゃんやったね」


 エミリーは俺からそのお金を受け取ると、依頼料の1,200シルバとゴブリン報奨金の分だけ抜いて残りをミウに渡す。


「はい、ミウどうぞ。これは依頼主であるあなたの稼ぎよ」


 お金を受け取ったミウが困った様子で口ごもる。

 尻尾が丸まってるな。

 可愛い……


「えっと、でも……」


「遠慮しないで。そういう契約依頼だったでしょ。ねえ、お兄ちゃん?」


 エミリーめ、そうきたか。

 ま、しょうがないか。

 モフモフは正義だしな。


「そうだな。そういう契約だから受け取っておけよ。その代り明日から早速チーム活動が始まるからな。この自走砲、ホーンラビットでバシバシ稼いでもらうから大丈夫だ」


 ミウは目をうるうるさせながらうなずくのだった。


 その後、3人で宿に向かい、宿に併設のバーで祝杯を上げた。


 俺は頬の腫れを気にしながら深酒した。

 もちろん未成年者用にと魔法で作られた疑似酔いする酒だ。

 それでも嫌なことが多かった日のせいか悪酔いした。

 俺につられていつもは飲まないエミリーも酒を飲み、ミウと一緒に悪酔いした。

 

 そして酔った勢いでハンター協会の受付に乗り込み、チーム申請をしていたようだ。

 そのチーム名というのが『酔いどれウサギ(ドランキーラビッツ)』だった。


 問題はその記憶が3人ともほとんどない事だ。


 次の日の朝早く、手に握りしめている申請書の控えを見て、3人で反省会をしたのだった。





次回、戦車での依頼をついに獲得!


16話は明日投稿予定です。

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