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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第3章 聖王国脱出
92/129

12 落とします


 マノンが降参したので小休憩。その間に治療のためロッタの怪我を見たのだけど、ロッタの腕を確認すると既に傷が塞がっていた。


「あれ? マノンにナイフで斬られたよね?」


 服も切れてて血が付いているから間違いないはず……。

 斬られてからそんなに経っていないのに、斬られた傷跡は残っているが、それだけだ。


「ああ、あたしは怪我の治りが早くてな、だからこれぐらいならすぐ治る」


 いやいや早すぎでしょ! 今もこうして見ている間も少しずつ傷跡が消えていっている。まるで自然治癒の場面を早送りで見ているようだ。


「ほら治った。すげえだろ、おかげで薬いらずだぜ!」


 ほら治ったじゃないだろ! 傷跡も綺麗になくなり、まるでさっき斬られたのが嘘のようだ。

 そういえば教会を抜け出した理由が派閥だの権力だのって言っていたけれど、この能力が原因で巻き込まれたんじゃないのかな……。

 この分だと多少の毒でも大丈夫そうな気がする。


「ロッタは光魔法は使えるの?」


「使えるぞ。と言っても下級のものだけだけどな」


 高い身体能力にあの回復力、さらには下級とはいえ光魔法か……。教会にとってロッタの価値はロッタが思ってる以上に高かったんじゃないだろうか?


「十分だよ。ロッタは1撃でやられさえしなければ、戦い続けることができるわけだ」


 囮としてはこれ以上ない好物件じゃないかな。とはいえロッタがうちにいることを教会が知れば、教会にも追いかけられそうだよ。


「お、そろそろ向こうの準備も終わったようだな」


 アレッサとマノンが来たようだ。作戦は決まったのかな?


「みたいだね、ロッタはともかくあまり2人に怪我をさせないでね」


「あたしはともかくって何だよ! まああたしの怪我はすぐに治るけどさ」


 分かっているじゃない。アレッサとマノンは治療しないと治らないから、戦闘中には治せないんだよ。アレッサが光魔法を覚えてくれたらいいんだけど、むしろ本人は闇魔法を覚えたがっているし……。


「3人とも準備はいい?」


 委員長が前に出てくる。


「うむ」

「はい!」

「いつでもいいぜ」


「では、始め」


 委員長の合図でアレッサとマノンが飛び出すかと思いきや、アレッサとマノンが下がり、マノンがアレッサを庇う位置に立つ。

 守りに入ったわけだね。ロッタもこうなると攻めようとするだろうね。

 アレッサが杖をロッタに向けた。


「風よ、気高き風よ――」


 呪文の詠唱を始めたアレッサに、ロッタが驚く。

 あ、魔法禁止とは言ってなかった……。


「おいおい、武術を教えるんじゃないのかよ!」


 慌てながらもアレッサの魔法を止めるため、アレッサに向かって走る。

 マノンはロッタを迎撃するためしゃがんで足を攻撃するが、ロッタはジャンプしてマノンの頭上を飛び越える。


「甘いんだよ、おらっ!」


 そしてその勢いのままアレッサに蹴りを突き出す。

 アレッサはその蹴りを体を捻り避けると、杖でロッタの顔を狙いフルスイング。

 ロッタは避けられるとは思っていなかったのだろう。慌ててアレッサのフルスイングを腕でガードして防ぐ。そこにマノンが走ってきてロッタの背中を蹴り飛ばす。


「うおっ!」


 蹴られてバランスを崩したところを、アレッサとマノンが左右から攻撃を仕掛けていく。アレッサが杖を振り下ろし、マノンが水平にナイフを振るう。だが、ロッタは少ししゃがんで前に跳び2人の攻撃を回避する。


「危ない危ない。魔法ははったりだった訳か、危うく攻撃を食らうとこだったぜ」


 バランスを崩した時点で終わったかと思ったけど、上手く逃げたものだね。

 アレッサとマノンは悔しそうだ。2人も作戦通りに進み、勝利を確信していたのだろう。


「どうした、もうお終いか? だったら行くぜ!」


 ロッタがアレッサとマノンに向かって走る。アレッサとマノンは間を少し空けて横に並び、迎撃態勢だ。

 まだ2人は諦めていないようだ。ロッタは2人の意図が分からず、とりあえずマノンに攻撃を仕掛けていく。マノンはロッタの攻撃を下がって防ぐ。そしてアレッサがロッタの背後から杖を振り下ろす。

 ロッタがアレッサの杖を腕で防ぐと、アレッサに攻撃を仕掛けていく。アレッサは下がりつつ防御をし、今度はマノンがロッタにナイフでロッタを斬りにかかる。


 2人の戦い方は面白いね。アレッサが防御に徹すると、マノンが隙を見てロッタに攻撃を仕掛ける。ロッタがマノンに攻撃を仕掛けると、2人も攻撃と防御を切り替えてマノンが防御に徹し、アレッサが攻撃を仕掛ける。

 ロッタも防御に徹してしまわれると、なかなかダメージを与えることができず、死角からの攻撃に苦戦しているようだ。それでも、2人の技量ではロッタに及ばず、少しずつ押され始めていく。


 アイデアは面白いけど、ロッタをなんとかできるだけの実力がまだないからね。


「あっ!」


 アレッサの杖が、ロッタの蹴りで飛ばされていく。そしてマノンのナイフも蹴り飛ばされる。


「くっ!」


 2人の武器が、離れた場所に落ちる。

 こうなると、2人に決め手がない。


「……負けました」


 アレッサが悔しそうに負けを認めた。マノンも悔しそうにしている。

 負けはしたけど、いい戦いだった。ロッタ相手に不得意な武器でこれだけ粘れたのだから、十分だろう。これに魔法と弓を組み込めば、実戦でも通用すると思う。


「悪くなかったぜ! ただもう少し気合が欲しかったところだ!」


 ……気合? 脳筋の意見はあまり参考にはならないね。


「まずは経験を積むことかしら。ロッタは素手だから、手数の多さと色んな角度からの攻撃に振り回されて、防御が間に合っていないところが多かったわね。あと攻撃のときは、もっと思い切っていくべきかしら。何度か躊躇して、タイミングを逃していたわね」


 お、委員長からちゃんとした意見が。戦いを見ながら、もどかしい思いをしていたのかもしれない。


「片方が防御、もう片方が攻撃という形は面白かったよ。ただ防御している人が、防御に徹しすぎていたかな。攻撃をする必要はないけど、攻撃するふりをすれば、ロッタを警戒させることができて、攻撃回数を減らせたかもね」


 完璧に防御ができるなら、攻撃のふりなんて必要ないけどね。さすがに2人にそれは難しいだろう。


「……うむ、経験とフェイントか。参考にさせてもらおう」


「はい!」


「うん? 気合もだぞ」


 実際、近接だと必要ではある。でも遠距離だと気合よりも技術とか集中力とかの方が重要視されそうだから、あまり理解されないのかも。


「よしマノン、今日の戦いの復習をするぞ!」


「はい! 次こそ斬り落としてやります!」


 マノンがナイフを水平に振る。ちょうどロッタの首の高さだ。斬り落とすってもしかしてロッタの……。

 2人は離れた訓練のため、場所に歩いていった。


「……あたし、寝ているときに襲われたりしないよな?」


 ……………。


「おいっ! なんとか言えよ! さすがに寝ているときに襲われたらあたしでも死ぬぞ!」


 ロッタならなんだかんだで大丈夫そうな気がする。


「アンデッドにはならないでね」


「殺すなー! 助けろよー!」


 忍者マノンの誕生はここから始まるのかもしれない。


「死ぬときはお前も道ずれにしてやるからなー!」


 成仏してください。


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