表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第3章 聖王国脱出
82/129

02 逃げられて、逃げられて


 盗賊女の両手両足をロープで縛って動けなくして馬車に詰め込んで走っていると、どうやら盗賊女が起きたようだ。

 横からゴソゴソと体を動かす音が聞こえてきた。


「なんだこれは! 取れねえじゃねえか!」


 ロープから抜け出そうと体を捻っているが、かなりきつく縛ってあるので抜けることは不可能だろう。


「起きた? 抜けられないように縛ってあるから無駄だよ」


 盗賊女が僕を見て怒り始める。


「てめえ、この縄を外しやがれ! うちの盗賊団に逆らってどうなるか分かっているんだろうな!」


 どうなるもなにも、既に壊滅状態なんだけどね。もしかして忘れているのかな?


「えっと、頭大丈夫?」


「頭は大丈夫だよ! 足が痛いんだよ!」


 そういう意味で聞いたんじゃないんだけどね。


「それなら大丈夫。特に毒とかは塗ってないから危なくないよ」


「毒!?」


 盗賊女が驚きこちらを見る。

 そんなに驚くことかな? 盗賊なんだし毒とかも使うんじゃないのかな?


「毒とか卑怯だろ! お前らは強いんだから正々堂々と戦うべきだろうが!」


 この人の卑怯の基準がよく分からない……。


「でも盗賊女さんも強いよね、なのに集団で戦っているじゃない」


 あれだけマノンの矢を避けて、掠っても走れるって相当タフだと思う。


「そうか! これでも鍛えているから………盗賊女ってあたしのこと?」


 やっぱり鍛えているんだね。反射神経もかなり良かったし。


「そうだよ、名前は知らないから。それにしてもやっぱり鍛えていたんだね」


 盗賊女が頭を抱えている。やはり頭に問題があるのかも……。


「誰が盗賊女だ!!」


 あれ? まさか……。

 どうやら僕は、やらかしてしまっていたようだ。


「ごめんなさい。男性でしたか……」


「違うわー!!」


 え? それなら何も問題ないよね?


「不思議そうな顔をするな! 確かにあたしは盗賊をしていたし、女だけど、盗賊女なんて呼ばれたくないんだよ!」


 ふーん。


「どうでもよさそうな顔をするな!!」


「血だらけ疾走女」


「ぶっ殺すぞ!」


「回避上手女」


「センスが悪いんだよ!」


「頭おかしい女」


「それはただの悪口だろうが!!」


 いったいどうすればいいんだ。この女、文句が多すぎる! いっそ馬車から捨ててしまおうか。

 僕が馬車の外を見ると、盗賊女が怪訝な顔をする。


「お前今、あたしのことを外に捨てようとか思っていなかったか?」


 盗賊だし問題はないでしょ。川があったらポイッて捨ててしまおうかな。


「おい! 否定しろよ! 怖いだろうが!」


「アレッサー、近くに川とかないかな? 池や湖でもいいよ」


「水は危ないだろうが! あたしは泳げないんだよ!」


 どのみちロープがあるから泳ぐのは無理でしょ。


「川や池はないが、もうすぐ海が見えてくるはずだぞ」


 そうだね、次の街は港町だから、魚介類が楽しみだ。


「海の中には魔物はいるのかな?」


「もちろんいるぞ、海の魔物は戦うのが難しいと聞くけどな」


 海の魔物か、できれば戦いたくないね。

 でももし戦う必要があるなら、やはり釣るのが一番かな。今なら使えそうな餌もあるし。


「おい! なんで今、あたしを見た? あたしを使って何をする気だ?」


 盗賊女は意外と勘がいいよね。心を読む系のスキルでも持っているのかな?


「意外な使い道がありそうで良かった。盗賊女さんなら死んでも心が痛まないからね」


「カルロッタだ! 決して盗賊女なんて名前ではない! ってどうして死ぬことが前提なんだよ!? お前らは強いんだから何とかできるだろ!」


 いくら強くても、海の中で戦うのは危険だからね。


「ロッタも強いから手伝ってくれるよね」


 役割は餌だけど。


「そういうことなら任せろ!」


 言質、頂きました。そのときがきたら存分にその言葉に甘えましょう。


「海が見えてきたぞ、もうすぐ街だ!」


 海は久しぶりだね。こっちの海は初めてだけど、ちゃんと青くてよかった。大きな船がいくつか浮かんでいるのが見える。

 僕達が海を眺めていると、「じゃあな!」と言って、ロープを外したロッタが馬車から飛び出して逃げ出していく。


「あれ? かなりきつく縛ってあったのに……」


 さすがは盗賊ってことか、縄抜けとかはお手の物なんだね。ロープを見てみると、切れたり引き千切られたりした形跡はない。意外と侮れないね。


「まだ狙えますが、撃ちますか?」


 マノンが撃ちたそうにしているが、逃げるなら放置でいいだろう。


「いや、怪我させるとまた世話をしないといけないから、自然に帰してあげよう」


 もう悪い人間には捕まるんじゃないよ。

 マノンは残念そうにしているが、あまり関わらないほうがいいと思う。


「マノン、ノヴァージェで美味しいものをいっぱい食べようね。港町だから、他では食べられない食材がいっぱいあるから買い込むよ」


「はい! 魚に貝に海老、楽しみですね!」


 きっとマノンも満足するはずだよ。



 ◇



 ノヴァージェに着くと、恒例の宿探しだ。門の近くのよさげな宿を見つけると、入っていく。

 ちなみに今回、初日には冒険者ギルドには行かない予定にしている。アレッサが残念そうな顔をしていたが、翌朝1番に行こうと言ったら何故か嬉しそうだった。


 宿が無事にとれると観光だ! やはり港町だけあって、海の男的な活気がある。

 魚や貝ももちろん売っており、買い占めようとしたが1つ懸念が……。


「委員長は魚ってさばけるの?」


 もちろん僕は無理だ。3枚おろしって何? ってレベルです。


「できるわよ、でもあまり難しい魚は無理よ」


 さすが委員長。一家に一人は欲しいよね。


「じゃあマノン、どんどん買うよ!」


「はい!」


 いろんな店を回り、魚を買っていると、どうやら僕達をつけて来ている人達がいるようだ。


「委員長気がついている?」


「ええ、完全につけられているようね」


 ちょっとかっこつけて言ってみたけれど、気がづいたのは委員長の様子が変だったから、そこから察しただけだったりする。


「数は4人だと思うけど、何が目的なんだろうね」


「……気持ち悪いし、話を聞きに行きましょうか」


「うん、3、2、1、ゴー!」


 合図と同時につけている連中に向かって走り出す。ストーカー達は、僕達が走ってくるのを見て、慌ててバラバラに走って逃げ始めた。


「速い!?」


 思った以上に対応も足も速い。追いかけようかとも思ったが、土地勘のない僕達だと迷子になる可能性が高いので、追うのを止めた。


「トーカ、カレン!」


 アレッサとマノンも急に走り出した僕達が気になって、追いかけて来たようだ。


「あの手際のよさ、ただのストーカーではなさそうよね」


「となると、いよいよ国が動き始めたかな……」


 もしくは委員長の熱烈なストーカーだったりするかも……。


いつもお読み頂きありがとうございます。


よろしければ『ブックマーク』『評価』をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ