36 エピローグ
2章はこれで終了です。
3章は7日投稿予定です。
ギルドを出ると、1日ぶりに宿に戻ってくる。
「あんた達、無事に帰ってきたんだね。馬の世話はしといたよ」
宿に入ると女将さんが声をかけてきた。
「ありがとう、今夜は泊まるからよろしく」
「あいよ、今夜は何もないといいわね」
不吉なことを言わないでほしい……。
女将さんから鍵を受け取ると、部屋に入る。そして昨日のように、ベッドに飛び込む。
「今日はもう、宿から出ない」
「そうね、洗い物もしたいからゆっくりしましょう」
委員長の着ている執事服はもうかなり汚れているもんね。どこかに執事服を売っているところがあればいいのだけど。
「まだちゃんと観光もしていないよね、せっかくホローニに来たのだから、美味しいものも食べないとね」
元気がなかったマノンが反応する。やはりマノンの原動力は食事なのだろう。
「はい! まずは食堂で食事しましょう!」
そうだね。美味しいものを食べるのは旅行の醍醐味の1つだよね。
「私は先にこの服を洗うわ。早くしないと汚れがとれなくなるし」
委員長は洗濯だね。鎧を着ていけばよかったね。代わりの執事服と洗濯道具を出して、委員長に渡す。
「アレッサは?」
「我はカレンの手伝いにいこう。洗濯は我も得意なのでな」
さすがはメイドといったところか。アレッサにも学生服を渡す。
「うん? なんなのだこの服は?」
「学生服だよ、約束忘れたの?」
魔物が堀にたどり着いたら学生服って話をしたよね。
「ほう、これが学生服というものか、デザインも悪くはないな、生地もなかなか良いものではないか」
アレッサが学生服を眺め終わると黒ローブや皮鎧を脱ぎ、学生服に着替える。
「ふむ、悪くはないな」
似合ってるな。外国人の留学生みたい。うちの学校にこんな生徒がいたらモテモテだっただろうね。
「うん、似合っているよ」
「そうね、私も執事服よりそっちのほうがいいのだけれど……」
着慣れているもんね。僕のメイド服よりも学生服のほうがいい。
「じゃあ僕とマノンは食堂に行くね」
「はい!」
◇
「やはりベッドでゆっくり寝ることができるっていいよね。安心して眠れる」
「あなたはいつも安心して眠っているじゃない、起こすのも大変なのだけど」
そうかな、寝起きはいいほうだと思うけど? たぶん他の人が早起きなんだよ。
アレッサとマノンはいない。おそらく食堂だろう。
僕もいつものようにメイド服に着替えると、食堂に行く。
「おはよー」
「おはよう、相変わらず起きるのが遅いな」
そんなことないのに……。
「おはようございます!」
マノンは今日もかわいい。テーブルに並んでいるほとんどがマノンの朝食だ。アレッサが小食に見えてくる。
「今日は観光にいくよ、美味しいものを探しに行こう」
「それは楽しみです!」
マノンは喜んでくれる。アレッサはマノンの前に並んだ料理を見て、まだ食べるのかと少し呆れている。
「メイドはいるかー?」
宿の扉を開けて隊長さんが入ってくる。マノンの顔が一気に落ち込んでいく。
ごつい男が執事服を着ると違和感が凄いね。
「この宿にメイドはいませんよ」
「そうか、邪魔したな……ってそこにいるではないか!」
周りを見てもどこにもメイドの姿が見えない。
「何を探しているのだ? メイドなどお前しかいないだろ」
やはり僕のことを言っていたのか……。
「僕はメイドと言う名前ではないし、メイドをやっている訳でもないので」
「何をいっているのだお前は?」
くっ、理解力が足りないのかこの男は!
「それで、僕に何の用ですか? 執事さん」
「ああそうだった、領主様がお会いになっていただけるそうだ。すぐに用意しろ……だれが執事だ!」
反応遅いね。疲れているのかな?
「じゃあこの後観光があるからその後に行くと伝えてくれるかな、執事さん」
前回は領主に会ってすぐに街を出たから、今回は先に街を観光しておいたほうがいいだろう。
「すぐに用意しろと言っただろ! ……あと私は執事ではない!」
こっちの都合も考えないで、これだから貴族って嫌なんだよね。
「面倒だけど行こうか、それで馬車でも用意しているの? 執事さん」
あんまり待たせると、マノンがストレスを溜めて死んでしまいそうだから、さっさと終わらせよう。
椅子を立つと、宿の入口に向かう。
「表に用意している。……だから執事では……もういい……」
なにやら疲れているようだね。少しは僕の気持ちが分かったかな?
表に停めてある馬車に全員乗り込むと、馬車がゆっくり進み始める。
今回は変な人がいませんように……。
◇
領主の館に着き中に入っていく。マノンは緊張して顔が強張っている。うん、可愛い。
そのまま部屋に通されると、少し待たされることになるようだ。
座ってお茶を飲みながら待っていると領主が執事を……いや隊長さんを入ってきた。
見た目は、ひげを生やした優しそうなおじさんに見える。動きもゆったりとしている。
「待たせたかな?」
「いえ、特には」
「そうか、今回の戦いではずいぶんと君たちに助けられたようで、私からも感謝をさせていただこう」
マノンは領主が喋るたびに反応する。ぴくぴくして可愛い。
「いえ、あれだけの被害を受け、それでも耐え抜いたのは、彼らの日頃の鍛錬の賜物でしょう」
「そう言ってくれると彼らも喜ぶだろう。それで、君たちは騎士に興味はないかい?」
騎士なんてなると、マノンがストレスで死んでしまう。
「お気持ちはありがたいのですが、僕達は冒険者が合っていますので」
僕が断ったので、マノンが振るえ始める。いったいどんな想像をしているんだろ?
「そうか、ではメイドはどうだろう?」
何を言っているんだこの領主?
「……いえ、まるで興味がありません」
理解に苦しむよ。
領主も対応を間違えたと気がついたのだろう。少し気まずそうな顔をする。
「そ、そうだろうな。では、君たちになにか褒美を与えようと思うのだが、何か欲しい物はないか? なんでも言いたまえ」
欲しい物と言われても……だいたい買っているから特にはないような……。
「そうですね、では執事服を」
「ふむ、執事に興味が――」
「ありません!」
全く、何を言っているんだろ。
「分かった、用意させよう」
◇
「無事に終わってよかったね。マノンはまだ固まっているけど」
「でも執事服を褒美にもらうって意味が分からないわよ」
でもこれと言って欲しい物がなかったんだよね。
「委員長は欲しい物があったの?」
「……ないわね」
ないんだ。
本当に欲しい物があるなら、秋人に頼んだほうがいい物が手に入るからね。
「じゃあ時間もあるから、観光と行きますか」
「そうね、どこか食事処に連れて行けば、マノンも元に戻るわよね」
「そうだな、できるだけ良い香りがする店に連れて行こう」
マノンの反応が楽しみだね。
いつもお読み頂きありがとうございます。
よろしければ『ブックマーク』『評価』をよろしくお願いいたします。




