36 BではなくCだよ!
誤字報告、ありがとうございました。
「メイド! やはりここにいたな」
人が気分良くいるしてところに、またしてもメイド……。誰だ!? 死にたいやつは!
殺気を放ちながら、僕をメイドと呼んだやつを見る。
「うお! お、おい、そんな怖い顔で睨むなよ……」
そこにいたのは隊長さん。生きていたのか。
「僕をメイドと呼んでいいのは、殺される覚悟のあるやつだけだ!」
「なんでだよ!」
……なんでだろ?
「それで何のようですか? 眼鏡でも見つけましたか?」
「眼鏡? なんだ目が悪いのか?」
眼鏡じゃ伝わらないか。まあギルドのことはギルドに任せておけばいいか。
「……いえ、それでご用件は?」
僕を探していたようだし、何のようだろ?
「ああ、助けてもらった礼を言いに来たのだ。しかもうちの隊も助けられたようで感謝する」
わざわざその為に来たんだ。お礼なんて良かったのに。
「それからそっちの黒ローブと弓使いのお嬢さんが、もしかしてアレッサとマノンなのか?」
ん? なんで疑問系なんだ? オークマジシャンとの戦いで共闘していたと聞いたけど?
「うむ、隊長殿も無事で何よりだ」
「は、はい! そうです!」
アレッサはいつも通りだが、マノンは騎士が相手で少し緊張気味だ。
「そうか、2人の援護にも助けられたようで、感謝する。やはり一流のパーティーには一流のメンバーが揃うのだな」
僕達を見て感心している。
「う、うむ。我もまだまだだがな」
「は! 恐縮でありましゅ!」
アレッサは嬉しそうに照れている。マノンは緊張して噛んでいるし。委員長は我関せずと空気になっている。
「1つ聞きたいのですが、もしかして倒れていたのですか?」
アレッサ達にあの場でお礼を言っていないのは、律儀な隊長さんにしては変だよね。
「ああ、オークマジシャンの一撃で吹き飛ばされてな」
ふーん、騎士の誇りを賭けていたんだよね……。
「じゃあ執事服でいいよ」
「……は?」
「隊長さんは鎧着ているとき以外は執事服だからね」
さすがに仕事中に鎧を脱げとは言わないけど、仕事中以外ならいいよね。
「い、いったい何を言っているんだ?」
「もう負けない! 騎士の誇りに懸けて! そう言っていたのは誰でした?」
忘れたとは言わせないよ。
言った事を思い出したのだろう、隊長さんが焦り始める。
「いや、別に負けたわけではないだろ。現に彼女達のおかげで勝利をした訳だから……」
「ふーん、別にいいよ。でも隊長さんにとって、騎士の誇りってその程度のものだったんだね」
がっかりだよ。
「そ、それは……」
あと一押しだね。
「執事服、もちろん着るよね!」
笑顔でプレッシャーをかける。
「き、着させていただきます……」
泣きそうな顔をしているが、僕と同じように、執事と呼ばれてしまえ。
「期間は隊長さんが決めていいよ。隊長さんの騎士への誇りがどの程度あるのかが、この期間で証明される訳だね」
悩んでいる。短すぎても駄目だし、長すぎても嫌だし。しばらく悩み、答えを出したようだ。
僕の顔色を見ながら喋りだす。
「さ、3ヶ月でどうだ? 別に負けた訳でも、誰かに被害があった訳でもないからこのぐらいが妥当だと思うのだが……」
意外と長いね、正直1ヶ月ぐらいでよかったのだけど、でも聞いてくるということは、おそらく、もう少し伸ばせるよね。
「もう一声!」
「よ、4ヶ月でどうだ?」
「まだまだいける!」
「5ヶ月だ! これ以上は駄目だ! 私にも隊長としての立場があるのだ!」
5ヶ月も執事服で過ごせば、既に手遅れだと思うけど……。
「大丈夫! 人が付いてくるのは服にではなく、中身にだから! きっとどんな格好をしていても、みんな隊長さんに付いてきてくれるよ」
「そうか、……そうだよな」
安心したところにもう一発。
「うん、だから自分を信じてあと1ヶ月!」
「ああ、わか――」
「これ以上は止めておいたほうがいいでしょう。部下への示しも大事ですが、隊長殿が変な格好をしていると市民に不安が広がります」
ギルドマスターが現れた。盗み聞きとはいい趣味じゃないよ。
「そうだな、やはり3ヶ月にしておこう」
残念、どのみち僕達は見ることはないだろうけどね。
「それがよろしいかと、お前もそれでいいな!」
「もちろん、期間は隊長さん任せですから」
「そういうことにしておいてやる」
信じてないなー。嘘はついてないのに。
「それでギルドマスターはその為に来たのですか?」
「おっと、今回のお前達の報酬についてなのだが、ランク評価はともかく報酬が決まらなくてな……」
あー、色々やらかしたから減額って訳だ……。これに関しては素直に受け止めよう、面白かったし。
「報酬? 左翼のリーダーならそれ相当の額ではないのか?」
隊長さんが口を挟んでくるが、別に僕はリーダーの依頼を受けたわけではないのだよ。
「いえ、恥ずかしながら本来はうちの副マスターが指揮をするはずだったのですが、開戦前に逃亡してしまい、代わりに彼女がやっていたという訳です」
やはり眼鏡さんは逃げたんだね。
「なるほど、だがそれぐらいなら数十万付ければいいではないか」
「それだけならそうなのですが、開戦前の2発の広域魔法は聞けば彼女達が撃ったそうなのです」
隊長の顔がこちらを向く。怒った顔をして……いない?
どうやら驚いてるようだ。
「彼女達? まさかこのパーティーのメンバーが撃ったのか!?」
隊長さんは、なにも知らなかったんだね……。
「はい、このメイドと執事が撃ったそうです」
メイドって言うな!
「メイドは何でもできるのだな……」
ん? それは僕のことを指しているんだよね。メイドって言うな!
「はい、あの魔法での討伐数、そしてその後の功績など入れれば、いくらになるか全く分からず……」
「そういうことなら、私のほうからも領主様に口ぞえしておこう。悪いようにはならないはずだ」
領主と聞いてマノンの目が死んだ。相変わらず権力者には弱いからね。
「そうですか、ではお願いします。お前達も良かったな」
誰も喜んでいないのがうちらしいね。
「では」
隊長さんはそのままギルドから出て行った。
「報酬の件は理解しました。それでランク評価についてはどうなるのですか?」
アレッサも期待した目でギルドマスターを見ている。アレッサはこういうのが好きだからね。
「現在DランクのだがBランクにする予定だ。Aランクでも通用しそうだが、私の権限ではBが限界でな」
「Bランク!!」
アレッサが興奮している。よほど嬉しいのだろうね。マノンは……まだ死んでいる。委員長も特に興味はなさそうだ。
「じゃあCランクでお願いします」
「ちょっと待ちなさい! BランクよBランク! どうしてCランクになるのよ!」
アレッサが憤慨している。僕もランクが上がるのは嬉しいけど、どうせSランクがないんだからゆっくり上がればいいよ。
「Bに上がれば依頼を15回受けただけでAランクに上がるんだよ。そんなのすぐでしょ!」
Cなら30回だよ、そっちのほうが面白くていいよね。
「む、うーむ、まあ我らならすぐBランクになるだろうが……」
そうそう、もっと楽しまないと!
「……お前達は、依頼を失敗するとは思わないのか」
そのときは誰かが罰ゲームだろうね。
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