29 一緒に怒られます
ゴブリン、ウルフを筆頭に、オーク、オーガ、ケンタウロスがゆっくりと近づいてくる。2000って聞いていたけど、3000近くいるよね。
魔物との距離があと5分といったタイミングで委員長を呼ぶ。
「そろそろぶつかるし、その前に広域魔法を撃つよ」
「撃ってもいいのかしら……。せめて報告ぐらいしたほうがいいと思うわよ」
広域魔法は迷宮ならかなり撃っていたけれど、迷宮を出てからは一度も撃っていない。迷宮だと撃っても被害はその階層のみだが、外で撃つと狙った場所はもちろんのこと、爆風などでそれ以外の場所にも被害が出てしまうからだ。
「遠距離攻撃って事にしておけばいいよ。僕が許可する!」
「あなたは広域魔法を撃ちたいだけよね……」
当然! 怒られるとしても後だろうし気にしない。
「僕が中央を狙うから、委員長は左側をお願いね」
命中精度は委員長のほうが上なので、端は委員長にやってもらう。
「はぁ……分かったわ、どうせなら盛大にいくわよ!」
「うん、魔物の出鼻を挫いてやるよ!」
ベッドの恨みを思い知れ!
「「エクスプロージョン!!」」
僕達の撃った魔法が魔物の群れの中で2つの大爆発を起こす。ドーーン!!っという音と共に炎が広がり魔物達を焼き払う。爆風が僕達の間を煙と共に通り過ぎていった。
今から戦おうとしていた兵士も騎士も冒険者もあまりの衝撃で呆然と立ち尽くし、無事だった魔物達も混乱状態に陥っている。
「出鼻は挫けたみたいだね」
「味方の出鼻も挫けた気がするわ……」
後ろを振り返ると、みんな呆然と立っている。どうしたんだ?
「……トーカ、カレン、さっきのはなんだ?」
「エクスプロージョンだけど?」
何を驚いているんだろう? 委員長も王宮でエクスプロージョンの説明を受けたと言っていたし、幻の魔法と言う訳ではないはずだ。
「私の知っているエクスプロージョンはもっと大きさも威力も小さいのだが……」
なるほど、規模が違うのか。たぶん魔力やスキルの関係かな。
「しかも2人とも剣や槍が得意だから、魔法はおまけ程度だと思っていたので驚いた……」
委員長は職業魔術師だから、むしろ本職なんだけどね。
「僕も委員長も前衛、後衛、両方できるんだよ。アレッサとマノンが後衛なんで僕達が前衛をしてたんだよ」
エクスプロージョンの衝撃で、前方に大きなクレーターが2つできている。そして、その周りには大量の魔物が倒れている。魔物達も衝撃からの動揺が続いているようだ。
やはり迷宮の外で広域魔法を使うのは控えたほうがよさそうだね。
「出鼻を挫いたのはいいけど、魔物が来ないとこちらからも攻撃ができないよね」
「ちょっと魔力を込めすぎたようね。私も少し気合が入っていたみたいだわ」
「でも、これだと何匹倒したかさっぱり分からないよね。数えに行くわけにもいかないし」
「それは諦めましょう。むしろ、どれだけ怒られるか心配だわ……」
戦場で魔法を撃って怒られるとは、異世界も世知辛いね。
「リーダーは僕だし、怒られるのは僕1人でいいよ」
撃てと言ったのが僕なんだから委員長に責任を押し付ける訳にはいかないよ。
「いいわよ、私も撃ってスカッとしたし、一緒に怒られましょ」
委員長が凄く優しい。やはり戦場が嬉しくて仕方がないのかもしれない。
ちゃんと見張っておかないと、迷宮みたいに魔法をバンバン撃って魔物を全滅させかねないね。
「臆するな! 我らの戦いに敗北などない!」
「やつらの魔法は強力だったがそれまでだ!」
「次に撃たれる前に倒してしまえばよい!」
「「「我らの戦い、やつらに見せてやれ!!!」」」
魔物達のほうから大きな声が聞こえてくる。その鼓舞により、魔物達が戦意を取り戻し、走ってやってくる。
……どこかで聞いた事があるんだけど、この声、このハモリ具合、この暑苦しさ……。
「……もしかしてあれかな」
「……ええ、おそらくあれでしょうね」
……まさかまたあれと遭遇することになるとは。
魔物が近づいて来たので、みなに準備をさせる。
「遠距離攻撃の準備をしろ! 近接も魔物が来るぞ!」
「「「「おう!!!」」」」
弓を持つものは矢を番える。魔法を撃つものは詠唱を始める。冒険者達も雰囲気も切り替わる。
魔物が近づいて来る距離を、測りながら待つ。魔法と弓が当てられる距離が約100メートル。早く撃てと号令するとあまり当たらないし、遅いと近接との入れ替えが慌しくなる。微妙なタイミングのずれが味方の損害を増やすのだ。
「撃てーーー!!」
僕の号令と共に一斉に矢と魔法が飛んでいく。その攻撃が当たるかどうかを見ずに、次の号令を出す。
「前後の入れ替えをしろ!!」
すぐに攻撃を撃った者達が後ろに下がり、近接隊が前に出る。初めてにしてはスムーズな動きで驚く。
僕達左翼の攻撃に続き、他の部隊からも矢と魔法が飛んでいく。
「近接、戦闘準備はできているな!」
「「「「おう!!!」」」」
「もし手に負えない魔物がいたら数人で倒せ! それも無理そうなら僕か委員――じゃなくて、執事服の花蓮を呼べ! いくぞ、ボーナスステージだ!!」
「「「「おーーー!!!」」」」
僕と委員長を筆頭に近づいてくる魔物を倒していく。一応指揮と言う立場を勝手にやっているとはいえ、僕の言葉で死なれるのは後味が悪いので、僕は左翼全体のフォローに回るつもりだ。
「……なんか主人公っぽくない。こういうのって先陣切って戦うものだよね……」
委員長にも強い魔物がいたら率先して倒して欲しいとお願いしているので、委員長のほうが魔物をどんどん倒して、主人公っぽい立ち位置だよね。今の僕って客観的に見ると、主人公の友人枠的な立ち位置?
「うだうだ考えていても仕方ないか……。そこのモヒカン! 前に出すぎるな!」
よく見ると、解説のモヒカンさんだ。この人も左翼にいたんだね。
「す、すまん!」
素直に下がってくれる。やっぱいい人なのかも。けっして恐れられているわけではない……はずだ。
中央と右翼を見ると、中央が少し押されているようだ。オーガの群れとケンタウロスが中央の部隊を襲い、隊が少し混乱しているようだ。
……少しまずいかも。中央が崩壊すると、そのまま街に入られるかもしれない。一応後詰もいるが、貴族とその騎士が30人ほど。彼らが精鋭ならいいのだけれど……。
右翼はギルドマスターが前で剣を振っている。すさまじく強く、魔物をバターのように斬り裂いている。あの人が無事なら右翼は問題ないだろう。
僕達左翼は余裕がある。委員長がいるし、アレッサやマノンも活躍している。冒険者達の士気も高く、強者が多いように思える。ギルドマスターがこちらに上位ランクを多めに集めたのかもしれない。
「……中央、助けるか」
こういう場合、後詰を何人か中央のフォローに入れればいいのに……。
いつもお読み頂きありがとうございます。
よろしければ『ブックマーク』『評価』をよろしくお願いいたします。




