27 穴掘りメイド
アレッサのいらない気遣いのせいで、僕達も参加することに……。用紙を破り捨てようか悩んだけど、アレッサを1人で行かせるわけにもいかないからね。オークぐらいなら何とかなるだろうけど、オーガは接近されると対処に苦しむだろうし。
委員長は平静に見えるがテンションが低い。まだベッドが諦めきれてないんだろう。僕は明日のベッドの為に、今日のベッドを諦めることにしたよ。
「明日の宿代はアレッサの奢りだからね」
「何だと!? どうしてそうなる?」
宿代と言っても4人分なら今回の参加で魔物1匹分の報酬なんだけどね。
「そうよね」
「そうですね!」
委員長とマノンの同意も得た。2人とも宿に期待していたから。
「むむ? よく分からんが、みなの賛同があるなら仕方がないな」
納得してない顔だが自分に原因がある事は理解した様だ。
「よし、参加者はみな集まってくれ!」
ギルドマスターが前に出てきた。どうやら手続きや配置などが決まったのだろう。眼鏡さんの姿は見えない。逃げたのかそれとも痛い目にあった後なのか……。
僕達も話を聞くためギルドマスターの方を向く。
「作戦はシンプルだ。陣形の中央を騎士や兵士で固め、その左翼と右翼に我々冒険者が配置に就く事になる。そして遠距離攻撃ができる者は、初撃で一発撃った後下がり、後方からの援護になる」
あまりややこしい陣形にしても冒険者では上手く合わせる事ができないから、こういう単純な陣形なんだろうね。
僕も委員長も近接と遠距離の両方できるけど、近接と記入しているので、アレッサ達とは別行動になりそうだ。委員長は職業魔術師なんだから、遠距離でもいいと思うんだけどね……。
「では今から私と南門に向かうので、付いて来てくれ」
こんな時間から戦闘か……、最悪真っ暗な中、戦うことになるんじゃないのか?
魔物も明日来ればよかったのに……。
ギルドマスターの後を冒険者達が付いて行く。他にもギルドの職員が数人付いてくる様だ。薬や包帯などを箱に詰めて出発の準備をしている。
僕達も冒険者たちの後を付いて南門に向かった。
◇
南門から出ると、既に兵士や騎士たちが即席の防御陣地作りの作業をしていた。土嚢を並べたり、浅いが穴を掘っている。冒険者はそれを眺めたり武器の手入れをしていたりする。
僕達は手伝わなくてもいいようだ。依頼内容は魔物の討伐だから、手伝っても報酬が出るわけでもない。
僕はインベントリからスコップを取り出すと、穴掘り作業をしている兵士達の下に行く。
「メイド!?」
僕の服装を見て、兵士が驚く。そういえばメイド服のままここに来ていたね……。
着替えてもいいが、後でもいいよね。
「そんなことよりも、真っ直ぐ横に穴を掘っていけばいいのかな?」
「あ、ああ……」
メイド服が珍しいせいか、作業を止めて凄く見てくる。
返事も聞いた事だし、僕も穴を掘っていく。僕が声をかけた人が「サボるな!」って怒られてるけど、なにやってるんだろ……。
ステータスに物を言わせて一気に掘り進めて行くと、他の人達もポカンと僕を見ている。こいつら何をサボっているんだろ。ここの兵士はサボりが多すぎる!
こういうときラノベの主人公なら土魔法で堀を作ったり壁を作ったりするんだろうな……。僕はスコップで手作業だけど……。
そんなことを考えているうちに、堀が完成した。我ながら頑張ったよ。
兵士達から予定より早く完成したとお礼を言われ、気分よく宿に帰る。
「どこに行く?」
ギルドマスターが宿に帰ろうとする僕に声をかけてきた。
「作業も終わったので、宿に戻ろうかと」
「お前は魔物を倒しに来たのではなかったのか?」
……穴掘りが楽しくて忘れてた。
「まだ魔物は見えてないですし、適度に気を抜くのは大切なことですよ」
「お前は気を抜きすぎだろ、誰が穴を掘れと言った! 魔物を舐めていると死ぬことになるぞ」
舐めているのは否定できないかも。今回の2000という数も何とかなると思っているからね。
今回、心配しているのはアレッサかな。マノンは状況が悪くなればちゃんと見極めて逃げそうだけど、アレッサは無謀なとこがあるからちょっと心配……。
「死ぬつもりも仲間を死なせるつもりもないですよ。他の人はどうでもいいですけどね」
「そうか、仲間のことも考えているのならいい……」
それだけ言うと、どこかに歩いていった。
仲間を失ったことがあるのか? 意外といい人なのかな。
僕も委員長達のところに戻ろう。離れていても、委員長の執事服とアレッサの黒ローブが目立っているのでよく分かる。ギルドマスターが舐めていると言っていたが、客観的に見るとマノン意外は悪ふざけにしか見えないね。
「戻ってきたわね。いきなり穴掘りに行くから驚いたわよ」
「でも堀は勢いを殺すのに使えるので大切です!」
マノンは経験者なのか?
「堀にたどり着く前に、全ての魔物を我の魔法で撃ち倒せば問題ない」
うん、魔物を一番舐めているのはアレッサだ。
「じゃあ魔物が堀にたどり着いたらアレッサはドレスね」
「ちょっ、ちょっと待って! ドレスだけはやめて頂戴!」
ドレスに嫌な思い出でもあるのか? さすがに無理強いは良くないね。
「分かった、学生服で我慢しよう」
「学生服? 聞いた事のない服だな」
こっちだと学生服はないんだね。
「学校に行くために着る服だよ。だからそこまで変わった服ではないよ」
「うむ、ならばそれで我慢しよう」
そんなにその黒ローブ、気に入っているんだ……。というか、制服が黒ローブの下に見られているようで嫌だな……。
「冒険者はこちらに集合しろ!」
集合がかかった様だ。そろそろ魔物が近づいていたのかな? これ以上遅くなると完全に夜になってしまうから、そろそろ魔物にも来てもらいたいものだ。既に何箇所かでは明かり用に、焚き火が作られている。
「今から配置を伝える! 呼ばれたパーティーは左翼、呼ばれなかったパーティーは右翼だ!」
一応パーティーごとに固まるわけだ。
「まずは、ニューロード! どこにいる?」
いきなり呼ばれたし……。
「はいよー」
声を上げ、手も上げる。
「お前か、あの辺りに立っていろ! 左翼のパーティーはこのメイドの近くに集まるように!」
誰もいない場所を指される。集合場所の目印って訳だ。あとメイドって言うな!
次々とパーティー名が呼ばれ、僕の周りに人が集まってくる。
「残りは全員右翼だ! 右翼は私の指揮下に入るので、そのつもりでいろよ!」
あれ? 左翼は誰の指揮下に入るの? もしかして眼鏡さん?
「左翼の指揮はセルジオがする。もうすぐやってくるはずだ! 先に陣の左翼の辺りに集合していろ!」
やっぱり副マスターの眼鏡さんだ。あの人戦闘できるんだね。
「じゃあ僕達も行こうか」
「そうね」
「うむ」
「はい!」
スコップとシャベル(ショベル)、どっちにするか凄く悩みました。
調べてみると、東日本なら大きいものをスコップ、中部以西はシャベルと言うとか。シャベルは英語でスコップはオランダ語なんだそうです。
JIS規格だとショベルなんですよね。
困ったので幼女戦記を読みスコップを使用していたので、スコップを採用させて頂きました。
いつもお読み頂きありがとうございます。
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