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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第2章 メイドと執事と盗賊と
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25 鳴り響く幻聴


 村長へ報告を終えたので、ゴブリンをインベントリに仕舞い、昨夜泊まった空き家に戻ろうとすると、村長に止められた。


「すまない、こちらの報告では100匹程度だと言っていたのに、実際は500以上いたなんて。残りのゴブリンはわし等で戦うので、気にしなくてもいいぞ。わし等も嬢ちゃん等に負けておられんからな!」


「おうよ! ゴブリンごときに負けていられっかよ!」


 村長たちの言葉に村人達が賛同する。どうやら僕達の仕事はここで終了のようだ。


「嬢ちゃん達には報酬を上乗せさせてもらうよ。100万支払わせてもらうよ」


「アレッサどうする?」


 今回のリーダーはアレッサだから、アレッサに決めてもらおう。こっちは報酬度外視だったから、報酬には期待していなかったし。


「わ、我か!?」


 振られると思っていなかったのか、慌てている。


「うん、今回のリーダーじゃない。最後まできっちりやり遂げないと」


「いいのか? 我の好きにやらせてもらうぞ」


「好きにするといい」

「ええ、任せるわ」

「はい! やっちゃってください!」


 僕達の返事に笑みを浮かべると、村長のほうを向く。


「では100万頂こう!」


 ……


「ただし! うち70万をこれからゴブリンと戦う勇敢な戦士達と、そしてゴブリンの被害に遭った人達への救済の為に使って欲しい!」


「なっ!?」


「だそうだよ村長、そもそも僕達はお金の為に来た訳じゃないからね」


「なら何の為に?」


「ふっ、決まっているだろ。我らは困っている人達を助ける為に来たんだよ」


 アレッサがわざわざ受けた依頼だから興味本位なんだけどね。

 うちのパーティーとしても意味のある依頼になったと思うし、僕も暴れられたし、お金以上の価値があったよね。


「では依頼料も無料にして下さい!」


 何言ってるんだこの村長は……。


「ふっ、いいキャッ!」


 アレッサの頭を殴る。ちょっと調子に乗りすぎ。

 アレッサが頭を抱えて蹲っている。ちょっと涙目だ。


「駄目に決まってるでしょうが!」


 村長を睨みつけ、少し威圧する。


「あまりふざけたことを言ってると踏み潰しますよ!」


「すみません、調子に乗りました!」


 村長が土下座する勢いで頭を下げる。

 絶対ろくでもない村長だろこいつは……。


「報酬はきっちり30万、残りはまず被害に遭われた方に、残りを今回討伐に参加する人達に、残った時は武器や罠の購入に使用してください」


「わ、分かりました……」


 村長から報酬を受け取ると、馬車に向かう。

 村人達も何故か付いてくる。

 僕達が馬車に乗り込むと、昨日のギルドに来ていたおじさんがやって来た。


「今回は本当にありがとう。もし嬢ちゃん達が来なかったらこの村は本当になくなっていただろう。だから嬢ちゃん達はこの村の救世主様だ。もし近くに来る事があればいつでもこの村に来てくれ。歓迎するよ」


 感謝を伝えにやって来たんだね。アレッサがちょっと感動しているけど、そこまでかな?


「じゃあまたね、機会があればまた会いましょう」


 僕はインベントリから迷宮コアの杖を取り出す。


「テレポート!」


 僕は馬車ごと転移魔法で村を跳び去った


 馬車がいきなり消えたのを見て、村人達は呆然と立ち尽くす。


「おい、馬車が消えたぞ……」

「あの嬢ちゃんは伝説級の魔術師だったんだな……」

「ははは、どうりで……、ゴブリンキングを簡単に倒せるわけだ……」



 ◇



 ホローニの近くに跳んだ僕達は、再びホローニの街に入る。

 街に入った僕達は、昨夜泊まり損ねた宿に行った。


「おや、あんた達、また来たのかい? 今日はあんた、メイド服じゃないんだね」


 昨日来た時にいた女将さんだ。やはり服で覚えられてるのか……。


「討伐の依頼があったんだよ、さっきそれが終わったとこ」


「そうなんだね、今日は泊まっていくのかい?」


「「もちろん!」」


 委員長と声が重なる。やっぱりゆっくりできる宿はいいよね。でもそのうち一戸建てが欲しいかも。秋人のスキルで買えないかな……。


「おや、元気だね。昨日と同じ4人部屋だね、ほら鍵だよ」


 女将さんが笑いながら鍵を差し出してくるので、受け取る。これでやっと宿でゆっくり休める。


「ギルドにゴブリンの報告に行かないのか?」


 行くとまたトラブルがやってきそう……。


「明日でいいよ、休めるときは休む。冒険者の鉄則だよ」


 知らないけど……。


「うむ、それもそうだな」


「私も宿の食事が楽しみ!」


 マノンはいつだって可愛いな。いっぱい食べていいんだよ。


 部屋に入るとベッドに飛び込む。やっぱり寝るには布団が一番だね。委員長も隣のベッドに座ると、そのまま倒れこむ。


「いつか自分の部屋が欲しいわね……」


「いいですね! 自分で買ったベッドで寝たいです!」


「悪くないな、我も自分用の部屋が欲しいな」


 そうなると家を買うなり借りるなりしないといけないけど、どこかいい場所があるかな?


「それなら庭も欲しいわね、花なんかも植えてみたいし」


 庭? 花を植える?


「私は牛を飼いたいです!」


 それ、食べるんだよね……。


「我は魔法の練習場が欲しいな」


 3人の意見を詰め込むと、かなり広い庭が必要になるよね……。


「初宮さんは何かないの?」


 委員長が僕を見ながら聞いてくる。

 僕か、僕の願いは決まっている!


「迷宮を作って恐竜ランドを作りたい!」


「却下よ!」


 ええーーー!!


「迷宮を作ることがそもそも不可能じゃない……」


 迷宮コアがあるんだしなんとかならないかな?


「迷宮って何なんだろうね?」


「迷宮主に聞けば分かるかもしれないけど……」


 迷宮主か、未攻略の迷宮にでも潜ればいるかな?


「スフランで迷宮の攻略をするべきだね」


 そして今度こそ迷宮を手に入れてみせよう。


 カーン! カーン! カーン! カーン!


 もうすぐ夜なのに、鐘を打ち付ける音が響きわたる。まるで非常警報のように聞こえるのは気のせいだよね?


「む! これは街に危険が迫っているのを知らせる鐘の音だな、我らも直ぐにギルドに行く必要がありそうだな!」


「「…………」」


 聞こえない、鐘の音なんて聞こえない。きっと疲れて幻聴が聞こえているんだろう……。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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