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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第2章 メイドと執事と盗賊と
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21 ゴブリン退治


 馬車を走らせていると、そろそろ日が落ちてきたので野営の準備を始める。僕達だけでダンジョン以外での野営は初めてなので、今日はちゃんと起きて見張りを立てる必要が出てくる。


「こういうとき、少人数は困るよね」


「そうかしら? 昼に馬車の中で寝ていればいいじゃない。あなたがいつもやっていることでしょ」


 それはそれ、これはこれだ。


「昼寝は別腹だから」


「一緒よ、というかお腹は関係ないでしょ!」


 そうかな? 昼寝をしても夜は眠たくなるのだけど……。


「ほら、さっさと準備しなさい。今日はバーベキューをするんでしょ」


 あまり他の人たちがいるとバーベキューができないので、人がいない今回はちょうどバーベキューにぴったりだ。

 準備も必要な道具を取り出して並べるのと、肉や野菜を切っておくだけでいいのでそこまで手間はかからない。

 肉や野菜を切るのは委員長とアレッサがやってくれている。


「今日はお肉を焼いて食べるのですよね!」


 マノンのテンションも上がっていて、見ていて楽しい。


「そうだよ、みんなで囲んで肉や野菜を目の前で焼きながら食べるんだよ」


「楽しそうです!」


 バーベキューは料理の腕とか関係ないからいいよね。タレは市販のものだし。


「楽しくて美味しくてみんな大好きなのがバーベキューだよ」


「私も大好きになりそうです!」


「そろそろ始めましょうか」


 委員長達の準備ができたようだ。

 既に熱してある鉄板の上に野菜や肉を置くと、マノンの目が輝く。真っ直ぐに肉に目がいっているけど。


「マノン、焼けたら自分で取って、タレにつけて食べていいよ」


「はい!」


 ある程度焼けると、マノンが我先にと肉を取り食べ始める。


「んー、あつあつで美味しいです!」


「焦らなくてもいっぱい用意してるから大丈夫よ」


 マノン用に多めにしているんだろうね。


「はい!」


 そういいつつも手を伸ばし肉を取る。僕達もうかうかしていると肉が食べられなくなりそうだね。


 ◇


 しばらく委員長が1人で焼いていたので、あまり委員長は食べていない。


「委員長も僕が焼くからもっと食べたら?」


 僕達3人はそれなりに食べたから、委員長にも食べてもらわないと。


「私も時々つまんで食べたからいいわ」


 野菜は結構食べてたように見えたけど、肉はあまり食べていないよね?


「肉はあまり好きじゃないの?」


「そんなことはないのだけど……」


「じゃあ委員長の分を焼いてあげるよ」


「いいわよ、みんなで食べて」


 どうしたんだろ?


「もしかして体調が悪いの?」


 アレッサとマノンも心配そうに委員長を見ている。


「そういう訳じゃないわ、もうお腹いっぱいなだけよ」


「それなら良かった。僕もお腹いっぱいかも」


「そうですね、私もいっぱい食べました!」


「マノンはそんなに食べて太らないのかしら……」


「私ですか? 太ったことはないですね!」


「そ、そうなのね……」


「ほぅ、我も太らない体質だから同じだな」


「へ、へぇー……」


「僕もお菓子とか好きだけど、太ったことはないかも」


「……」


 あれ? 委員長どうしたんだろ? 殺気のこもった目で僕を見ているんだけど?


「……い、委員長?」


「……いいわよね、太らない体質って」


「そ、そうかな……」


「アレッサやマノンは食生活が違うからともかく、あなたは私と同じような食生活なのにどうして違うのかしら……」


 もしかして、太りやすい体質だったり……。


「ほ、ほら、僕は部活をやっててそれでカロリーを消費してたし」


「私もこちらに来てからかなり鍛えているのだけど……」


「体質ってすぐに変わるものでもないし、徐々に変わってきているんじゃないかな?」


「そうかしら……。じゃあ少しずつ変わってきているのかしら?」


「うん、だから心配する必要ないよ」


「そうね、ちなみにダイエット用になにか購入したりしていないのかしら」


 まさかの要望!? さすがにこれは予想していなかったからなー。


「あーほら、恥ずかしいじゃない……」


 嘘だけど、納得の言い訳でしょ。


「それはそうよね……。私も商品購入のスキルが現れないかしら」


 そこまでして欲しいのか、ちょっとテレポートで王宮に行くべきか悩む。

 もしも委員長の体重が増え始めたら行くことにしよう。


「まずは運動してカロリーを消費してしまえばいいんだよ」


「そうね、基本は大事よね」


 離れた位置に歩いていくと、蛇腹剣を抜いて素振りを始める。


「委員長にとって、運動=素振りになるんだ……」



 ◇



 翌日、ホローニに到着した僕達は、いつものように宿を取る。前回は初日は泊まらなかったが、今回こそは大丈夫なはず。


「今回は大丈夫かしら?」


 委員長も前回のことを思い出しているのだろう。


「さすがに大丈夫でしょ、僕も泊まれる時は宿に泊まりたいよ」


「そうよね、私たちはあまり宿に泊まっていないものね」


 王都を出てから、4回しか宿に泊まっていない……。テントをここまで活躍させるつもりなんてなかったのに。


「うん、たまにはゆっくり眠りたいよね」


「……たまには?」


「テントだと眠りが浅いから寝不足になるよ」


「……眠りが浅い?」


 委員長はなんともいえない顔をしているが、委員長にはテントのほうが快適なんだろうか?


「委員長はテントが好きなの?」


「……はぁ、そんな訳ないでしょ」


 それもそうか、嬉しいのは初めだけだよね。


 宿に馬車を停めると、歩いて冒険者ギルドに向かう。その際どうしても視線を集めてしまう。


「凄い見られてるわね……」


 委員長は執事姿だから余計に注目を浴びるのだろう。


「やっぱり女性が男装しているのって珍しいからかも」


「そういうことなのね……」


「メイド服に着替える?」


「着替えないわ、ギルドもすぐそこだし、早く行って依頼を確認しましょ」


 残念、メイド服姿も見たかったんだけど。

 ギルドの扉を開けて中に入る。外では目立つ僕達だけど、ギルドに入れば目立たない―――。


「おい見てみろよ、メイドが来てるぜ」

「どこかの貴族の付き添いか?」

「依頼に来たんじゃねーの?」


 訂正、しっかり目立っていた。


「これしか払えないんだ!」


 ん? 受付でおじさんが受付嬢と揉めているのか? おじさんが受付嬢に詰め寄り、頭を下げて必死にお願いしている。


「しかし大量のゴブリンとなると、どうしてももう少し報酬が掛かってしまいます」


 大量のゴブリンか、あまり面白くなさそうだね。


「その話、我にも聞かせてもらおうか?」


 アレッサが急に受付のところに話を聞きにいった。ゴブリンに惹かれる要素があったかな?


「は? あ、ああ、俺達の村の近くの山に大量のゴブリンが住み着くようになったんだよ。このまま放置しておけば、きっと家畜が襲われ、女達は攫われる。

 だから今のうちに討伐してもらいたいんだ。予算は30万ある、これでお願いできないだろうか?」


 おや? 30万ならそこそこ高いんじゃないの? どうして受付嬢は渋っていたんだろう?


「なんであの金額で揉めてたんだろ?」


「場所に問題があるのかしら?」


「場所じゃなくて大量のゴブリンに問題があるんだよ」


 近くにいたモヒカンが話しかけてくる。

 大量のゴブリンに問題が?


「ゴブリンってのはやりようによっては子どもでも倒せるんだよ、だから討伐しても評価が低い。そのくせ集団でくるとベテランでもやられることがある。あと大量ってのが問題なんだよ」


「大量が?」


 でもしょせんゴブリンでしょ?


「具体的な数字がないと、何匹倒せばいいのかの判断がつかない。50でも100でも大量だろ? しかもゴブリンでも大量に倒せば武器が傷むんだよ。血で切れ味が落ちて最悪折れる。あと大量にいる場合は上位種がいる場合もあるので注意が必要だ。ゴブリンキングなんていたら最低でも100万は貰わないとやってられねーよ。はっきりいって30万なんて、割に合わないんだよ」


 なるほど、ゴブリンはハイリスク、ローリターンな訳だ。でもアレッサは受けるんだろなー。


「分かりやすい説明をありがとう、参考にするよ」


「お、おう」


 解説のモヒカンさん、ありがとうございましたー。


「トーカ、カレン。この依頼を受けよう!」


 また今日も宿には泊まれないかもしれない……。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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