19 新しい仲間?
間に合いましたので、投稿します。
翌朝、領主の館に報酬を貰いに行くため、メイド服に着替える。
早くスフランに着かないと、僕を見た人がみんな僕をメイドだと勘違いしてしまう。
「テレポートでスフランに行ければいいのに……」
ある程度正確な座標を知っていないとどこに跳ばされるか分からないから危険なんだよね。
「それなら馬車は必要なくなるでしょ」
それはそれ、これはこれでしょ。
「自分で言い出したことなんだし、しばらくその格好で我慢しなさい」
「過去の自分を殴ってやりたい!」
「障壁で防がれて痛い目見るのだけよ」
なんて卑怯な!
「そんなことよりさっさと領主の館に行くわよ」
領主の館と聞いて、マノンが行きたくなさそうな顔をしている。権力者が苦手なんだろね、その気持ち分かる。
「領主がマノンに何かしようとしたら、僕が領主を殴ってあげるから大丈夫だよ。もしそれで問題になったらすぐにこの街から出るから」
マノンの顔が真っ青になる。どうしたんだろ? 体調不良かな?
「領主様を殴る……領主様を殴る……領主様を殴る……」
さらにブツブツ言いながら震え始めた。
「マノンが壊れたー!」
「あなたが脅かすからでしょ。大丈夫よ、領主様を殴ったりなんてしないわ」
「……ほ、本当ですか?」
涙目で委員長を見ている。なんか可愛い。
「ええ安心して、初宮さんが変なことをしようとしても、私が止めてあげるわよ」
「あ、ありがとうございます……」
マノンが委員長の胸で慰められている。
え? 僕が何か変なことをすると思っていたの? そんなことするわけないのに。
「トーカもあまり意地悪は良くないぞ」
意地悪しているつもりはなかったんだけど……。
「さ、さて行きますか」
変な空気になってきたので、早く領主イベントを終わらせてしまおう。
「そうね、メイド服はともかくお金は必要だから、貰っておきたいものね」
メイド服も何着かないと洗濯ができないんだよ。
◇
馬車に乗って領主の館に行くと、マルティナ嬢に出迎えられた。どうやら僕が報酬を取りに行くということを事前に聞いていたらしい。
「いらっしゃいませ、トーカお姉さまとそのパーティーの方々。トーカお姉さまのその格好はどうなさったのですか? もしかしてうちでメイドをされるとか?」
「しないよ、するわけがないよ」
何を言っているんだこの子は。
「ところでマルティナ嬢、領主様は戻っておいでかな?」
「はい、昨夜戻ってきましたわ。すぐに部屋まで案内しますね」
よかった、ちゃんと戻ってきていたようだ。
「ありがとう、よろしく頼むよ」
マルティナ嬢に前回と同じ部屋に案内され、ドアをノックしている。中には領主と執事、そして騎士団長がいた。
「お父様、トーカお姉さまがいらっしゃいましたわ」
ちゃんとお父様って言ってるんだ。
「うむ、入りたまえ」
マルティナ嬢がドアを開け中に入り、僕達もその後に続く。
「掛けたまえ」
僕達がソファーに座ると、領主とマルティナ嬢も対面のソファーに座り、領主の背後には執事と騎士団長が立つ。
「まずは娘と女性達を助けてくれたことに礼を言おう」
「いえ、無事で何よりです」
「それと盗賊達のことだが……」
言いづらそうにしているけど、まさか負けたのか!?
「追い詰めたのだが、あと一歩のところで逃がしてしまったのだ。ボスは仲間を数名連れて何処かに行ってしまった……」
他の出口があったのか、先に人質を確保できて良かったと言うべきかな。
「そういえば領主様が率いていた2つ目の隊は、到着が遅かったようですが何があったのですか?」
かなり遅かったし、盗賊との戦闘があったのか、それとも罠が仕掛けられていたのか。
「そ、それは……」
それは?
「それは私が、話しましょう」
騎士団長が話すそうだ。領主が少し慌て始める。
「ちょ、ちょっと待―――」
「簡単に言うと、2つ目の隊は迷っていたのです」
はい? 迷っていた?
「ですが、領主様が指揮を執ると言っていたはずでは?」
「はい、この領主様は昔から重度の方向音痴なのです」
「それは……、しかしそれを分かっているなら他の人が方向を指し示せば良かったのではないですか?」
「それも他の者が行ったそうなのですが、自分の道が正しいと根拠もなく言い張り、おかしいことに気がついても、そのまま突き通した結果があの大遅刻につながった訳です」
だから騎士達の鎧に戦いの痕跡が全くないのに、変に疲れていた訳だ。終わらない迷子と早く行かないといけない焦りが疲れをもたらしていたのだろう。
「なるほど、つまりはサボっていた訳ですね」
「残念ながらそういうことになります」
「しかもそのうえ盗賊のボスを逃がしたのでは、参加した意味もない」
「うっ!」
「はい、トーカ殿達を参加させたことだけが、唯一の功績でしょう」
領主が小さくなっている。
「結果的に娘が無事に戻ってきて盗賊達も退治したのだから、それでいいではないか……」
そのために使用した金額や労力を考えると、あまりいい結果とはいえないかな。
「それなら領主様がいなくても無事に事を終えたでしょう」
「うっ……」
「まぁまぁ、騎士団長殿もその辺りで。今日は報酬の件で来ただけですので、あまり僕達が内部の事情を知ってしまうのはよくありませんから」
変な空気になると、報酬の件も時間が掛かってしまうかもしれないからね。
「そうだな! その為に来てもらっているのに待たせる訳にはいかないな!」
領主がよく言った! って顔で見てくるが、別にあなたのためではないですよ。
「では報酬と例の物を」
「はい」
執事がドアから出て行くと、すぐに袋を置いた台を運んで入ってくる。後にはメイドが続き、その手に大きな風呂敷を持っている。
「こちらになります」
ソファーの間にあるテーブルにその袋と風呂敷が置かれる。
僕はさっそく風呂敷の包みを開けると、中からメイド服と、執事服が出てきた。
「うん、これはいいものだ!」
騎士団長とマルティナ嬢が不思議そうな顔をしている。
「トーカお姉さまはメイドでも雇うのですか?」
「違うよ、自分で着る服だよ」
「もしかしてどなたかに仕えているのですか?」
「いないよ、この服は罰ゲームで着ているだけだから、普段は普通の格好だよ」
「そうですか、良かったです」
いったい何が良かったんだろ?
「時にトーカお姉さまは新しい仲間をお探しではありませんか?」
今のところは必要ないよね。
「特に必要とはしていないけど?」
「なんと今なら優秀な重戦士がいるのです!」
いやだから、必要とは―――。
「それは駄目だ! マルティナにはまだ早い!」
仲間ってマルティナ嬢か……。
「パパ、私ももう大人です! もう冒険者としてやっていけます!」
大人って……、この子10歳ぐらいだよね……。
「まだ10歳じゃないか! パパは許しません!」
やっぱりか、てかここにいると巻き込まれそうだよね。
「では、僕達はこの辺で……」
報酬をインベントリに放り込むと、ソファーから立ち上がり部屋を出て行こうとする。
「待って、トーカお姉さま!」
マルティナ嬢が僕の腕に捕まってくる。
逃げ損ねた……。
「マルティナ嬢、気持ちは凄く嬉しいよ。でも今の僕達の実力と、マルティナ嬢との実力との差がありすぎてて残念ながら組むことができないんだ」
「それでも頑張りますから!」
「じゃあそうだね、騎士団長を倒すことができたなら僕達の仲間に入るっていうのはどうだい?」
騎士団長が苦笑いをしているが、これなら諦めてくれるだろう。
「分かりました、必ず倒して、トーカお姉さまと同じパーティーに入って見せます!」
頑張ってくれたまえ、僕達は今日この街を出るけど、それは別に言わなくてもいいよね。
「うん、じゃあ倒したら僕達のパーティー、ニューロードを見つけてごらん。見つけるまでが試験だからね」
「はい、必ず見つけて見せます!」
「待っているよ、じゃあ僕達はこれで失礼しますね」
「ああ、ご苦労だった」
ドアから出てメイドに案内され外に出る。そしてそのまま馬車に乗り込む。
マノンはまた気絶していたのでアレッサに馬車の操縦をお願いする。
「さあ、次の街へレッツゴー!」
「逃げ出している気分なのは気のせいかしら……」
……それは、気のせいではないと思うよ。
僕も同じ気持ちだから……。
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