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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第2章 メイドと執事と盗賊と
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18 馬車購入

明日は投稿できないかもしれません。


 テレポートでレンツェの街まで戻ってくると、馬車を売っている店を見つけた。


「ねえ委員長、馬車を買うっていうのはどうかな?」


 やはり冒険に馬車は付き物じゃないかな。


「でもあなた、動物の世話とかしないでしょ」


 言い切られた!? でもたしかに可愛がるのは好きだけど、世話するのは得意ではないかも……。


「み、みんなで交代で世話をすればいいんじゃないかな?」


「馬は生き物なのよ、言い出したあなたが世話をしないというなら誰が世話をするというのよ!」


 さすがは僕らのお母さん、ごもっともな意見だ。


「うむ、馬の世話なら我もできるぞ」


「私も動物の世話は大好きです! 馬の世話もしたことがあります!」


 おお、2人から援護射撃が来たー。期待を込めて委員長を見る。


「はぁ、仕方ないわね。でもあなたもちゃんと世話するのよ」


「もちろんだよ。じゃあまず、かっこいい馬車を買おう」


「馬車に大切なのは乗り心地でしょ」


「たぶんそれは期待できないよ」


 僕達はどうしても、日本での乗り物を基準に考えてしまうから。


「黒氏君に車でもお願いすべきだったかしら?」


「車もバイクもあるよ。でも人前では乗れないからそのうちかな」


「確かにあれは目立ちすぎるわね。それにしてもあなたはこういうときは用意周到なのに、どうしてそれを他には生かせないのかしら?」


「それは色んなラノベを読んでいるからだろうね。でもその範囲外のことには対応できないんだよ」


 興味がないこととかもね。


「私もライトノベルを読んでおくべきだったかしら……」


「読む? あるよー」


 こっちは自分で読みたくて用意したやつだけど。


「あなたは意外と侮れないのよね……」


 どうして意外なんだろ?


「それで委員長的にはどの馬車がいいの?」


「そうね、大きすぎる必要はないし、この幌馬車ぐらいでいいんじゃないかしら?」


 10人ぐらいが乗れそうな屋根つきの馬車だ。

 この普通チョイスは委員長らしいね。


「うん、これぐらいの大きさがいいかもね」


 車はこれでいいとして、あとは馬だね。


「馬の良さなんて分からないけど、委員長はどう?」


 鑑定持ちの委員長ならいい馬が分かるはず。


「私も馬の良し悪しなんて分からないわ」


 委員長も結構おっちょこちょいだよね。


「それは知ってる、僕達が馬に接する機会なんて動物園ぐらいしかないし」


「ならどうして聞いたのよ」


「鑑定して欲しかったのだけど……」


「あ! そ、それならそうと言いなさいよ」


 委員長が恥ずかしそうにしながら、馬を1頭ずつ確認している。

 アレッサとマノンも馬を見ていたので声をかける。


「いい馬はいた?」


「うむ、この馬はどうだろうか? 黒くてずっしりとして力がありそうな馬だぞ」


 少し太めだが、体も大きく体力もありそうな馬だ。


「私はこの馬です! 赤くて綺麗で足も速そうです!」


 こっちの馬は競馬場にいそうなスラッとした美しい馬だ。


「そんな貧弱そうな馬だとすぐに足が折れるだろう。こっちの馬にするべきではないか?」


 ん?


「いえ、そんな鈍重そうな馬だといつまで経っても目的地にたどり着けません!」


 あれ?

 なぜか2人が睨み合っている。


「それで委員長の意見は?」


 2人の視線が委員長へ向く、いや睨んでいる。その圧力に委員長の顔が引きつっている。


「わ、私も2人の選んだ馬がいいと思うわ……」


「カレンはこの黒い馬がいいと思わないか?」


「カレンはこの赤い馬がいいと思っていますよね?」


 2人に詰め寄られて委員長はタジタジだ。


「ど、どちらの馬もいいと思うわよ」


 あー、言っちゃいけない言葉を……。


「こっちのほうがいいじゃないか!」

「こっちのほうがいいじゃないですか!」


 委員長の目が助けてと僕に言っている。仕方ない。


「店主!」


 離れて様子を見ていた店主に声をかける。


「お決まりですか?」


 店主が近づいてきた。


「この2頭を貰おう」


「ありがとうございます」


 僕達の会話を聞いて、アレッサとマノンが呆然としている。僕は1頭しか買わないなんて言ってないんだけどね。最初から2頭買うつもりだったし。


「それならそうと言いなさいよ!」


 委員長の中でそれ、流行っているのかな?


「2頭いたほうが何かあったとき、安心でしょ?」


「それは、そうだけど」


「1頭だと引っ張るのも大変だろうしね」


「別にこれぐらいの馬車なら1頭でも大丈夫みたいよ」


 確かに街中を走っている馬車も1頭が多い。馬の頭数が多いと、馬車の質も良くなっている。


「馬の数は金を持っているかによるのかな?」


「馬は買うのも世話するのも、お金がかかるってことでしょうね」


 たしかにそこそこのお値段しました。でもアレッサとマノンの喜んでる顔を見たら、いい買い物だったと思う。


「さあ、黒炎号。今日からは我が世話をしてやるぞ」


「レッドユニコーン、これから一緒に旅に行きましょう!」


「……アレッサは納得のネーミングだけど、マノンもかなり酷いね」


「……そうね、レッドユニコーンはどうかと思うわ」


 レッドユニコーン、ユニコーンが聞けばキレるんじゃないかな?


「2人とも変わった名前を付けたんだね。でも街中であまり名前を呼ばないほうがいいよ」


 主に僕らが恥ずかしいから。


「そうか? いい名前だと思うのだけど」


「私も前から考えていた名前です!」


 前から? いや、あまり考えないようにしよ。


「お客様は馬車の扱いは初めてでしょうか?」


 店主がやってきて尋ねてくる。


「ええ初めてです。馬とのつなげ方や操作の仕方などをレクチャーして頂きたいのですが」


「そういったお客様用に1万エルで教習コースがありますが受けられますか?」


 そういうのがあるんだ。


「受けます」


「分かりました。裏手に簡単に走らせられるところがありますので、そこでやりましょう」


「じゃあアレッサとマノン、行っておいで」


「あなたが受けるんじゃないの?」


「全員で受ける必要はないでしょ。それに馬に慣れている2人のほうが、早く覚えられるだろうからね」


 あとで2人にゆっくり教えてもらえばいいし。


「うむ、そういうことなら」

「分かりました!」



 ◇



 教習も終え、馬車に乗り、宿までやってきた。昨夜は結局泊まらなかった宿だ。


「馬車も買ったし、明日は領主のところに行って報酬を貰って、その後ホローニに向かうよ」


 この街に長くいると領主親子が面倒事を持ち込んできそうな気がする。


「たいして観光もしてないけどいいの?」


「うん、観光ならホローニでもできるからね。なんでもホローニは美食の街らしいし」


「美食の街ですか!?」


 食いしん坊のマノンが飛びついてきた。


「うむ、確かに肉やパスタ、チーズが美味だと聞く」


 アレッサも知っているんだ。


「行きましょう! ホローニ楽しみです!」


 本当に食べることが大好きだもんね。


「じゃあ明日から食の旅にレッツゴー!」


「おー!」


「食の旅じゃないでしょ……」


 委員長のため息が、そっと聞こえた。


いつも、お読み頂きありがとうございます。


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