02 準備をしよう
武器屋に入るとまずアレッサの杖を探す。
「これなんか我にぴったりではないか?」
杖の先端に赤い宝石が付いておりその左右に黒い鳥の翼が広がっている。
「委員長?」
さて判定は?
「却下ね」
残念、あまりいい杖ではなかったようだ。
「これにしましょ」
委員長が指差したのはこの店で一番高い杖だ。黒い杖に銀の装飾が施され、シンプルだが高級感のある杖だ。
「む! しかしこれはなかなかの値段なのだが?」
アレッサが値段を見て遠慮している。杖1本560万は確かに高級品だ。
「命の値段に比べれば安いものよ」
それに対する委員長の返事が男前過ぎる。アレッサもキャラを忘れてちょっと感動しているよ。
「う、うむ。確かにこの杖は我に相応しい杖だ。遠慮なく使わせてもらおう」
店主から渡され、恐る恐る杖を受け取っている。
「弓も必要よね」
「弓? 弓は1つ持ってるけど?」
「1つだけでしょ、それは予備にして、マノンに合った弓を買うわよ」
確かに予備は必要だね。僕も迷宮で2本も槍を折ったし。むしろあれだけ戦って無事な委員長の蛇腹剣が凄いよね。
「だってマノン、使いやすいの選んでいいよ」
「はい!」
「これなんか良いと思うぞ、このフォルムなかなか素晴らしいではないか」
アレッサが髑髏がいくつも付いた真っ黒い弓をマノンのとこに持っていく。
それを見たマノンが引きつった顔をしている。
「いえ! 私にはまだ早いです!」
上手い交わし方だね。にしてもどうしてこんな変な弓があるんだ? 店主のほうを見るとサッと目を逸らされた。
店主、お前もか! 意外とこの世界にも中二病が流行っているのかも……。
マノンが気に入った弓を持ってくる。
「それと矢が必要だよね。店主、矢をあるだけ頂戴」
店主と新メンバーの2人が驚いているが、買える時に買っておかないとね。
店主が奥から矢の束を持ってきた。
「さすがに全部は困るから、300本でいいか?」
「いいですよ」
「後はナイフも人数分買っておきましょ」
「そうだね、2人も自分の使うナイフを選んで」
「はい!」
「ふふふ、我に相応しいナイフを選ぶとするか」
相応しいって、使いやすいってことだよね。
「店主、全部でおいくら?」
「そうだな、これだけ買ってくれたし、少しまけて750万でいいぜ」
インベントリからお金を出し、支払う。新メンバーの2人がそのお金に驚いているが、たぶんこれからもっと驚くことになるはず。
◇
次は防具屋に来た。
「防具と言えば、お2人が着ているのは騎士の鎧ですよね。お2人は騎士様なのでしょうか?」
そういえば僕達の着ているのは騎士の鎧だったよね。軽装タイプなのでそこまで防御力が高いわけではないけど。
委員長も鎧の上にマントを着ている、この世界の魔法使いは迷宮に潜る場合にローブの下に薄手の鎧を着込んでいる。
「違うよ、僕たちはあくまで冒険者だし」
「そもそも騎士がこんなところをうろうろしてないわよ」
「ほぅ、となれば騎士が好き過ぎてそういう格好をしているのだな! わかるぞ、その気持ち」
何か凄い納得されている。この格好がコスプレかなにかと思われてるのか……。
委員長がアレッサの顔を掴むと、指に力を入れアイアンクローをする。
「あなたと一緒にしないで頂戴!」
「いだだだだだだだ!」
はたから見ると横暴な騎士がいたいけな令嬢を苛めているように見えるよね。
「これは一応借り物だよ、だから鎧そのものは本物の騎士の鎧。でもそうだね、僕達も紛らわしいから他の鎧を着たほうがいいよね」
「それもそうね、じゃあ私たちの分も買いましょうか」
よし! じゃあ冒険者らしく皮の鎧だよね。
「この漆黒のローブは我に似合うと思うのだがどうだろうか?」
アレッサが黒いローブを手に持ち見せてくる。
「別に動きやすければ何でもいいわ、下に着る鎧も買いなさいよ」
「ふむ、では漆黒の鎧を探すとしようか」
黒が好きだよな、明るい色のほうが似合うと思うのに。
「これはどうでしょう?」
マノンが皮鎧を見せてくる、深緑色で森の中とかだと隠れて動くのに適していそうだ。
「いいと思うよ。森の狩人って感じで」
「ありがとうございます!」
嬉しそうに服を大事そうに持っている。癒されるね。
委員長は金属鎧のコーナーにいる。目が合うと、僕に手で手招きしてきた。
僕が近づくと、目の前にある金属鎧を指を差す。
「あなたはこれね!」
「……え?」
「前衛だからこのくらいの鎧は必要よね」
「いや、僕は皮鎧を買おうかと思っているのだけど……」
「私たちはAランクを目指しているのよね、それならこれくらいの鎧は着るべきよ!」
「でもそういうのはランクを上げつつ良いのを買えばいいんじゃないかな?」
「それはお金がないからそうなるんでしょ、お金がある私達には当てはまらないわ」
う……馬鹿貴族っぽくて嫌だなぁ。
「はぁ、分かったよ。で、委員長も金属鎧?」
「ええそうよ、とは言ってもあなたのよりは軽装よ」
軽装の鎧の上にコートを着るようだ。
僕もそれぐらいでいいんだけどね……。
「我らは決まったぞ」
2人も決まったようだ。僕も着替えてくるか……。
僕が着替えて出てくると3人が待っていた。
「似合っているじゃない」
「うむ、なかなか悪くないな」
「凄く似合っています!」
「ありがと……」
できれば皮鎧を着てそう言われたかった。
会計を済ませ、店の外に出る。
「あの? お2人の着ていた鎧や大量の矢はどうしたのですか?」
「ん? しまってあるよ。僕のスキルでね」
「ほぅ、面白いスキルを持っているのだな。我の至上空間のようなものだな」
至上空間!? 何それ、凄そうなんだけど!
「なんですか? その至上空間というのは?」
「では使って見せよう」
え? こんな人前で使うの?
周りの人も何事? って見ているんだけど。
アレッサが手のひらを下にして前に出すとテーブルと椅子、そしてティーセットが出てきた。
アレッサがティーセットでお茶を淹れ、椅子に座ると優雅に飲み始める。
………え? これだけ?
周りも「え?」って顔になっている。
「アレッサもういいわ、邪魔だから仕舞いなさい」
「おや、もういいのかい?」
アレッサが立ち上がり、手を払うと消えてなくなった。
「微妙……」
「微妙よね」
「貴族様っぽいです!」
「このスキルのおかげで、我はいつでもどこでも美味しい紅茶を飲むことができるのだ」
「さてじゃあ宿を取ろうか」
「そうね」
「はい!」
「ほぅ、我のスキルに嫉妬したか。これはユニークスキルゆえ嫉妬するのも仕方ないぞ」
「はいはい、行くよー」
「え? ちょっと、ユニークなんだぞ、選ばれたものだけが有するスキルなんだから!」
「でも4人全員ユニークスキル持っているわよ」
「私も持ってます!」
「マノン持ってるんだ、さすがマノン!」
マノンの頭をなでなでする。
「え? 全員持ってる? っていうか我とマノンの扱いが違うのだが!」
「マノンは年下だし、可愛いし」
なでなですると笑顔になる。凄く可愛いな。
「我もなでなでしてもいいのだぞ」
話をしているうちに宿屋に着いた。
「さぁ、入るよ」
「ちょっ、話を聞いてーーー!」
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