22 クラーケンが…
59階層は58階層と似たような空間になっているが、道を外れた場所には大量の水が溜まっているため落ちてもすぐに道に戻れば大丈夫だろう。
ただおそらく水中に魔物が生息しているのだろうから、すぐに上がらなければ攻撃されたり引きずり込まれたりするかもしれない。
「そろそろ休もっか、今日は散々だったし」
「そうね、気持ちを一度リセットしたいわね」
「そうですね、私も少しゆっくりしたいです」
そうと決まると食事とテントの用意をする。
「まだ迷宮の半分もきてないんだよね」
「ええ、進化したので最下層が125階層と言われているわね。50階層を超えてペースも落ちてきているから何日かかるか分からなくなってきたわね」
「魔物の数が多くて時間を取られることが多くなってきましたよね」
数が問題だよね、サンクチュアリみたいな魔法がもっとあれば捗りそうなんだけどね。
「広域魔法でドカンといければいいんだけどね」
「いくつかはあるわ、魔力の問題で今までは使えなかった魔法も今はレベルが上がっているから使えるはずよ」
あるんだ、それならそれを使って進めるのもありだよね。
「以前はサンクチュアリを使えませんでしたから、私の魔力もかなり上がっていますよ」
「じゃあ明日から広域魔法でガンガン進んじゃおう作戦でいこう」
「……なによその作戦名」
「……ははは」
「あれ? 変かな?」
「変ね、分かりやすいけど」
分かりやすさは大事だよね?
「それじゃあ私の知っている魔法を教えますね」
2人ともちゃんと魔法の講義を受けてるから、しっかり覚えていて助かるなー。
もしも僕が1人で攻略してたらまだこの階層にきてなかったかもしれないし、仲間って大事だよね。
◇
迷宮6日目
珍しく1人で起きられた。やはり迷宮にいると常在戦場の心構えができてくるのだろうね。
2人はまだ寝ているようだ、まったく嘆かわしい。
顔を洗い、食事の準備をしても2人は起きてこないので、フライパンを叩いて起こす。
2人とも眠そうな顔で起きてきた。
「2人とも、もう朝だよ。ちょっと迷宮に慣れて気が抜けてきてるんじゃないかな?」
2人が何故か僕の顔をじと目で見てくる。
ん? なんだろ? 何か変なこと言ったかな?
「……夜中に大量のザリガニの魔物が周りを囲んでいたのよ」
「……魔物を倒すために朝まで魔法を撃ち続けていました」
ザリガニ? ああ、水の中にいたんだね。
「そ、そうだったんだ。それは大変だったね……」
「ええ、あれだけ騒がしかったのに、誰かさんが全く起きてこないから吃驚したわ」
「そうですね、いい夢でも見てましたか?」
あれ? 何故か2人ともちょっと怒っている……。
「あ、お腹空いてる? ご飯用意したよ」
「ええ、朝まで頑張ってたからお腹空いているわ」
「そうですね、寝る間も惜しんで戦ってましたからね」
……やばい、めちゃくちゃ怒ってる。
「2人のおかげでこの階層は早くクリアできそうだね、ありがとう。よかったらこれも食べて」
2人の前にチョコレートを置く。
こっちではチョコレートが食べられないから効果に期待できるはず……。
「そ、そうね、ありがたく頂くわ……」
「チョコレートですか! ありがとうございます」
よし、効果があった。
不満そうな顔が一気に嬉しそうな顔に変わった。
「僕も2人には凄く感謝してるから、2人のおかげでここまでくることができたんだと思うし」
「それを言ったらあなたの障壁には凄く助けられているわ、昨夜の襲撃もそのおかげで一方的に攻撃ができたわけだから」
「そうです、私も2人のおかげでここまで安全にくることができましたし、この先も一緒に行きたいと思っています」
「そうだね、この3人ならどんな迷宮だってクリアできそうだよね」
「ええ、頑張ればいけるわ」
「はい、力を合わせて頑張りましょう!」
朝から熱血、でもたまにはこういうのもいいよね。
◇
60階層はまた水がないバージョン。ということは魔物は上からくるか、横からくるか。
例のごとく障壁で床を作り進んで行く。
「じゃあ僕と天沢がフラッシュで魔物を探し、委員長が一掃して行こうか」
「分かったわ」
「分かりました」
僕が右の上空に、天沢が左の上空に向けて魔法を放つ。
「「フラッシュ!」」
魔物が見えたところに委員長の魔法を放つ。
「エクスプロージョン!」
魔法によりドーーンと爆音が鳴り響き、風がこちらまでやってくる。
見事に作戦が決まり、直撃を受けた数百匹の魔物達が落ちているのが見える。
「これは使えるね」
「ええ、攻略が捗りそうよね」
「はい、次の階層は私も頑張ります」
予約入りましたー。
◇
広域魔法を使いこなすことで60階層から74階層まで順調に進めることができ、遂に75階層、3度目の守護者部屋の前までたどり着いた。
「……やっとここまでたどり着くことができたね」
「やっとと言っても今日で7日目だし、かなりのハイペースだと思うわよ」
「障害物がないので広域魔法が効果的でしたよね。水中にいる魔物も雷魔法が効果的でした」
魔物からすれば悪夢以外のなにものでもないのだろうね。
「さあ、どうする? このまま進む? それとも引き返す?」
「答えなんて決まっているじゃない……」
「はい、もちろん進みます!」
でわでわ、地獄へレッツゴー。
「いっくよー」
「ええ」
「はい」
扉を開け、中に入っていく。
「この選択がこの後に大きな悲劇を生むことになるとは、この時の僕らは知る由もなかった……」
「……変なナレーション入れないで頂戴」
「それは誰かが亡くなるときのナレーションですよね……」
扉を抜けると一直線に3メートルほどの道があり、その左右には水が溜まっている。
「今までの階層とあまり変わらないね」
「油断禁物よ、ここには守護者がいるのだから」
「魔方陣が見えませんね、もしかして水の中にあるのでしょうか?」
扉が閉まっていく。
「障壁を展開するよ、委員長は道の左側の水に天沢は道の右側の水に雷魔法を撃って」
「分かったわ」
「はい」
「展開オッケー、魔法いっちゃって」
「「トールハンマー!!」」
ドーーーン! と轟音の後に、衝撃で跳ね上がった水が雨のように降りかかってくる。
しばらく警戒するが、特に動きがない。
水の中にいるため倒したか倒してないかが分からないのだ。
向こう側にある扉が開き始める。
「……倒したようだね」
「みたいね、何の魔物だったのかしら?」
「やはりサメやシャチでしょうかね?」
確認しようにも今頃底に沈んでいるのだろうね。
……なんかゴメン。
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