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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第1章 主人公を求めて
20/129

20 殴りに行こうか


 53階層に下りると早速ゾンビを発見した。向こうもこちらに気がつき襲い掛かってくるが、


「ターンアンデッド!」


 槍では戦いたくないので光魔法で攻撃する。

 光魔法の攻撃を受けたゾンビはベチャっとつぶれ、地面に泥のように広がっている。


「臭い」

「臭いわね」

「臭いです」


 この階層は生ごみの腐ったような臭いが充満しているため、かなり臭い。さっさと次の階層に行きたいところだ。

 2人ともゾンビそのものにはそこまで嫌悪感がないのか平然としている。ゾンビという存在よりも臭いがキツイことのほうが嫌みたいだ。

 少し歩くと今度はスケルトンが現れる。

 アンデッドの階層か。僕達は全員光魔法を使えるから、相性がかなり階層だけど臭いがきついのであまり嬉しくない。


「臭いしさっさと次の階層に行くよー」


「ええ、早くこの階層を出たいわね」

「はい、賛成です」


 魔物が現れるたびに我先にとターンアンデッドを使い倒していく。次の階層の階段を見つけると臭いから逃げるように駆け下りた。



 ◇



 54階層に下り、息を大きく吸った僕達に、またしても悪臭が襲ってくる。2人も嫌そうな顔をしているので勘違いではないようだ。

 ……この階層も臭い。

 またもやゾンビを見かけて3人揃ってターンアンデッドをかける。一発で倒せるが、ほとんど八つ当たりだ。


「もしかしてアンデッドがまだ続くのかな……」


「嘘でしょ……」


「早く次の階層に行きましょう」


「そうだね、このままだと臭いが体中に染み付きそう」


「夜も眠れなくなりそうね、それは」


「夢の中でうなされそうですね…」


 通路の壁に白い影がスーッと入っていくのが見えた。


「……幽霊がいるかも」


「何をいっているの」


「私も見ました、白いものが壁の中に入っていくのを……」


「アンデッド系の階層だし、いてもおかしくはないよね」


「壁に入ることができるのならどこからでも出てくることができるわよね」


「それでしたら前後だけでなく上下左右も気をつけないといけませんよね」


「幽霊って普通の物理攻撃が効くと思う?」


「壁をすり抜けるのなら効かないかもしれないわね」


「では、魔法ですね。光魔法なら効果が高そうですよね」


 もしも物理攻撃が効かない魔物に、近くの壁や床から奇襲を受けたら普通のパーティーはどう対処するんだろう。魔法の武器とかがあればいいけど、なければきついよね。詠唱破棄や高速詠唱ならなんとか対処できるけど、仲間が近くにいれば同士討ちの可能性もあるし、戦い辛いな。

 そんなことを考えていたら、床から幽霊がスーッと現れる。


「ターンアンデッド!」


 光魔法はターンアンデッドがあるから同士討ちの危険性がないから安心だよね。

 攻撃を食らった幽霊は「ギャーー」と叫びながら消えていく。


「床から現れるとか、油断してたら攻撃されそうだよね」


「さっさとこの階層を出ればいいのよ」


「そうですね、臭いも酷いですし、気を抜けないですしあまりいい階層ではありませんよね」


 ……いい階層なんてあったかな?



 ◇



 ……55階層はさらに地獄だった。


「……あーー」


「……臭いわ、ほんと臭いわ!」


「……滅んでください! みんなみんな滅んでください!」


 3人ともちょっと精神が病みかけている。いい加減臭いに慣れてきそうだけど、臭いものは臭い。

 さっさとこの階層も抜けたいところだけど、この階層、魔物の種類こそ前回と同じだが、数が多くて先に進めない。51階層のアンデッドバージョンといったところだ。


「終わらない……全然終わらないよ……」


 51階層の時のように絶対防御で周囲を囲いつつ光魔法を撃ち続けるが、次々に魔物が補充されていく。


「……臭いわ、ほんと臭いわ!」


「まだ出てくるのですか? いい加減成仏してください!」


 51階層では嬉々として魔法を撃ち込んでた2人の目が既に死んでる。

 臭い階層が続いているので休むことなく進んでいるので、疲れが溜まってきているのもあるのだろう。

 そのタイミングでこの悪臭の中、終わりの見えない戦いを強いられているものだから、ストレスが溜まるのは仕方がないのだろう。

 一度引くべきかも、次の階層もどうなるかわからないし。


「……はぁ」


「……光魔法に広範囲を攻撃できる魔法ってないのかしら?」


 そんな都合のいい魔法があればとっくに使ってるよ………。


「……広範囲……あ! あります! サンクチュアリという魔法があったはずです!」


 あるの? ほんとうに?


「使おう、今すぐ使おう!」


「天沢さん! お願いできるかしら」 


「は、はい。ただ高度な魔法なので成功するか分かりませんがやってみます!」


 天沢が詠唱を始める。


「そんな魔法があったなんて……」


「……あなたも天沢さんと同じで初めから光魔法を持っていたのだから、同じ講義を受けているはずよ」


 おかしいな? 全く記憶にないんだけど……。


「いきます、サンクチュアリ!」


 天沢を中心に光が広がっていく。光に触れた魔物が次々と光に飲まれて消滅していく。

 魔物がいた場所にはコアだけが残されてた。


「あれ? 臭いが……」


「ええ、今まで苦しめられてきたあの悪臭が消えたわ」


「ほんとですね、まさか臭いにまで効果があるとは驚きです」


 周囲にいた魔物は完全にいなくなっている。こんな魔法があるって知っていたらもっと前にお願いしたのに……。


「この光の中がサンクチュアリの効果範囲なんだね」


「心まで癒されるようね」


「そういった効果もあるそうですよ」



 ◇



 56階層に下りると臭いもなく、やっと一息つけた。ついにアンデッドゾーンから抜けたようだ。2人の顔にも笑顔が浮かぶ。

 下りた先は一直線に上りの坂道がずっと続いている。

 ……なんだろ、また嫌な予感がするのだけど。

 食事をとり、リラックスしたところで、坂道を登っていく。

 しばらく歩いていると、坂の上に体長3メートルほどの大きさのダンゴムシが数匹、もぞもぞと動いているのが見えてきた。


「あれってまさか転がって落ちてくるのかな?」


「あり得るわね、この迷宮を考えた人がいるなら性格最悪よね」


「ここから魔法で攻撃しますか?」


 こちらの声が聞こえたのか魔物達のの動きが止まると、丸くなり転がり落ちてくる。


「やっぱり、攻撃して、レーザービーム!」


「ファイヤーランス!」


「レーザービーム!」


 魔法は当たるもののそのまま転がり落ちてくる。


「障壁展開するよ」


 障壁を頭上に水平に展開、その端を上り坂に着けるようにする。

 坂の上転がってくるダンゴムシがそのまま障壁の上を通り、僕達の頭上を通り越しそのまま下に落ちていく。


「ほんとうに最悪な迷宮」


「次の階層もろくでもなさそうよね」


「50階層までは普通でしたが51階層からは変な階層ばかりですよね」


 確かに迷宮の製作者が51階層から入れ替わったみたいに感じる。


「迷宮を作ってる人が実際にいるのかもね」


「迷宮って作れるのかしら?」


「もしかして神様とかでしょうか?」


 神様ね、僕の職業の神騎士って神に関わる職業? もしも迷宮が神に関わるのなら僕に壊して欲しがっている? それとも迷宮を作って欲しがってる?

 そもそも迷宮って何なんだろう? 何のためにあるのだろう?


「かもしれないね。もしもこの迷宮を作ったのが神様だったとしても、とりあえず一発殴ってやりたいよ」


「ふふ、一発ぐらいなら神様も許してくれるかもしれないわね」


「そうですか? もの凄く怒りそうな気がしますが……」


 この性格の悪い迷宮の製作者ならキレないはずがないね。


「さーて、一発殴りに行こーか」


「怒った顔が楽しみね」


「やっぱり怒るんですね……」


 天沢が少し困った顔をしてため息を吐いていた。


お読み頂きありがとうございました。

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