52.オフ会参加拒否 その日用事あるから……
もったいぶったまま、何時までも話が進まないので、コロナは帰ることに決めた。
そしてそのそぶりを見せると――――
「待ってくれ! ちょっと雰囲気に酔ってみたかったんだ! だが後悔はしてねぇ」
「フッ……」
「そうよ、話くらいは聞いて行きなさいよ」
声を掛けた男と、紅一点はコロナを呼び止めた。
彼らはコロナがいることによる利点が大きいと踏んだのだろう。
未だに、「フッ……」とか言ってるやつが居る時点で、コロナは彼らに協力する気は皆無になった。
だがしかし、話を聞くだけでも暇つぶしにはなるかと席に着ついた。
「今日集まって貰ったのは他でもねぇ。
まずひとぉおおーーーーつっ」
「フッ……」
「あんた! いい加減にその『フッ……』と言うの止めなさいよ! 正直似合っていないしブサイク顔になってるわよ」
「フッ・・うぅううう」
(あ、涙目になった……ざまぁああああ)
口にしていないだけで、他の連中もどうやら苛立っていたようだ。
そのヘタレ顔が見られただけでも、コロナはここに来た甲斐があったと思う。
「……気を取り直して一つ目だ。
まず魔女ニャンターが明日現れる時期だ。そこのコロナが倒してから3度目になる。
ちなみに前回は俺たちが倒した。倒してから10日ごとに沸くからな!」
(どうやら魔女ニャンターはPOP時間は10日らしい。倒してからというのがミソだな)
「ほぅ……出現条件は俺は知らなかったのだが、教えても構わなかったのか? 規約的に」
「あぁ、問題ない。直接確認したものはその条件からは外れるからな」
「ふむ……まぁ魔女ニャンターはそれでいいとして、他は?」
ランダムBOXを狙いの狩りなのだろう……しかし、人数的に揉めそうである。
それをコロナが追求すると……。
「あーぁあ? あんた知らなかったのか。ボスドロップは仲間全員に入るんだぜ」
「まぁ俺等の階級層じゃ、基本ソロ狩りだからな」
それまでぼっちなことを気にしていたコロナは、D級ならぼっち当たり前という言葉を聞いて少し安らいだ。
――――誰だって1人は寂しいのである。
「まぁ、そういうわけで魔女ニャンター狩りは、運次第では儲けにつながる。
そして2つめ、こっちが本命だ。
近くで魔獣《アンゴルー》が現れたらしい」
「《アンゴルー》を上手く仕留められたら、この人数で割っても相当な稼ぎになるな!」
「《アンゴルー》?」
連中は《アンゴルー》を知っているらしく、酷く興奮し盛り上がっている。
コロナは《アンゴルー》なる魔獣を知らなかったので、何を盛り上がっているのかいまいち理解できない。
それはとても面白くない事だった。一人だけがわからないでもりあがる。
――――これはある種のイジメだ!
もちろんそんな事はないのだが……。
「あんた、《アンゴルー》知らないのか!
魔獣とは名ばかりで、歩く宝石とも言われるあの《アンゴルー》を!?」
「肝が馬鹿たけぇんだよな。食べてみたいけど、高く売れるからまず下級階級は売り払うらしいけどな」
「私は毛皮の《アンゴルー》モアで洋服を作ってみたいわ。それで貴族気分を味わえるもの」
「(フッ……)」
「漢は黙ってたんぱくのある肉だ!」
詳しく聞いてみると、魔獣《アンゴルー》とはなかなかにレアな魔獣で、滅多に人前には現れないようだ。
とても弱く、【サル】はおろか【タコ】に成り立ての傭兵ですら、簡単に仕留めることができるらしい。
その姿はピンク色のダチョウの様だとコロナは伝え聞いた内容から判断した。
(クソガキ、何前髪フサぁっとやってるんだよ! どうせ頭の中で「フッ……」とかやってるんだろうな……)
そんなどうでもいいことを考えている内に話は進んでいた。
「――そういう訳で、俺たちはこの二本立てで動くことに決めている。
コロナあんたはどうする? 俺としちゃあんたが居てくれれば魔女ニャンターは確実だし、噂に聞く俊足とやらがあれば《アンゴルー》も確実だろう」
「俊足? 何だそれは……」
「あぁん? そうか、知らぬは本人ばかりなりとは言ったものだな。噂ってのは本人には届かないもんだ。
あんたが救助対象を担いで走ってる姿を目撃したやつが言いふらしてたんだよ。人1人担いでるのにもの凄い早さだったってな」
「あぁ、スキル【疾駆】を全開で使用していたからな」
コロナがそう発言すると、連中は騒然とした。
「おいおい……【サル】が覚えるようなスキルじゃねーだろ」
「あ……あぁ、【疾駆】は【ダイス】いや、【ニート】位にならないと普通は習得できないと聞いている」
「(フッ……)」
「なるほどね……それなら確かに俊足なのは間違いないわね」
「まぁ、あまり強化してないがな。SkillPoint的に、な」
「確かに俺たち程度じゃカツカツだな。スキル数もポイントもな」
もうガキは見ないことにしたコロナは、スキルの難度的に【魔法剣】と同じようなものだと考えた。
それと同時に低階級を【好奇心旺盛】で観察しても、優秀はスキルは手にはいらないだろうと思ってしまった。
「そう言えば、今まで聞かなかったんだが……あんたらはどんな集まりなんだ?」
そしてコロナはその質問に対する答えで固まった。
「「「「「あぁ、俺たちは臨時パーティだ」」」」
「――――悪いがこの話は無かったことにしてくれ!」
思わず反射的に答えてしまうコロナだった。
「どうしてだ!?」
「そうだぞ。こんなに美味い話を蹴るなど勿体ないぞ!」
残りのメンバーも同じようなことをコロナに語りかける。
コロナがクソガキ扱いした男ですらコロナを引き留めて来たくらいだ。
それだけ彼を引き留めたいということだろう。
「1人頭減れば、それだけ儲けにつながるだろ?」
「それは……そうだが……」
コロナの発言に思わず暗くなる連中。
その様子にコロナは、どうやら自身や他のライバル達に出し抜かれることを考えていると予想した。
「悪いがオフ会など気楽にやるのは俺の性に合わない。済まないがこの話は無かったことにさせていただく。
もちろんここで聞いた話は、他言はしない」
「そうか……残念だ。でも情報をばらさないでくれるのは助かる。
――では機会があったとき頼む」
「臨時パーティだからって気楽ではないと思うんだが……」
「そうよ臨時パーティの何が悪いのよ」
「フッ……そう、言うものではないよ君たち。彼には合わないそれだけのこと・・サ」
(意外ととこの世界は、オフ会が流行っているのかね……)
彼らと別れた後コロナは、そのような事を勘違いしてしまう。
(それなら俺もやってみるかな。女の子とイチャウフするためにオフ会をしてみるのも悪くないしな!)
そのことが原因で出会い廚と蔑まれる連中と同じく、下劣な考えを生み出してしまった。
(レイリアにオフ会メンバー集めるの頼んでみるのも良いかな)
そんな考えをしながら、当初の予定通り住民課へと向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
私はこの前知り合ったコロナさんという方の家に、再び訪れていた。
変わった造りの家で、なんだか心休まる造りをしていて少し気に入っている。
今回は遊びではなく、仕事の用件に近いものだったのだけど、何もなくてもまた来たいと思える場所だ。
コロナさんは、気分転換に住む場所を変えるようなことを言っていたのだけど、私はこの家を絶賛して考えを直してもらう為に説得する。
幸運なことに、他に気に入る家が見つからなくて、今日は余計な手続きをしなかったと聞いてほっとしてしまった。
住むには不便だから、仮にコロナさんが出て行ったとしても、私が借りることはないのは彼には内緒、ふふっ。
話が逸れました。
本日呼ばれた用件は、何でも……臨時パーティをしてみたいということらしい。
人脈――伝手がないから、他の探索者に知り合いが居るであろう私に、メンバーを集める大役を任される事になった。
実は私も、彼に協力を要請したいことがあったので、まさに渡りに綱とはこのことですかね。
今、周囲では《アンゴルー》が出没したことで盛り上がっている。
皆その事隠して他者を出し抜こうとしているが、バレバレという状況にある。
当然私も興味がないわけではないのだが、他にやるべきことがあった。
それは――――卵だ!
魔獣《ポコポーン》の卵!
この魔獣が産み落とす卵は、そこそこに高価でもあるのですが――何よりも絶品なのです!!
黄身はこれでもかというほど濃厚で、他の卵とは違い臭みが一切ない。
これとミルクは何故かもの凄く親和性があり、簡単に混ぜ合わせることができてしまう。
オムレツはもちろんのこと、ケーキなども絶品ですが……。
――――何よりも美味しいのはプリンなのです!
これで作ったプリンは絶品で、月に1度は食べることは『乙女の義務』と言っても過言ではないでしょう!
以前は作られたプリンを買って食べていたけど、親元はから離れた以上はかなり厳しい出費につながってしまう。
特に生活基盤が乏しいD級層ならなおさら。
プリンに拘って生活基準を下げるのは愚の骨頂です。
中には譲れずに、1週間ほど1食抜かす生活をしている人も居ますが、私はお断りです。
そういう理由もあって『ポコポーン卵』製のプリンは、高嶺の花とまでは行かなくても、食卓を飾る花であるのは間違いありません。
そんな必需品のプリンなのですが、どうせなら自分の好みの味を作るというのも夢があっていい。
料理をするのは好きだし、せっかく探索者になったのだし、自分で材料から揃えて作るというのもいいものなのです。
【料理】系のスキルが高い人が作ったプリンの方が確かに美味しい。
だがそれが好みの味かというと、それはまた違う。
誰が食べても美味しいと言われるが、それが好きな味付けとイコールというわけではない。
私の友達も当然この卵で作られたプリンは好きだというけど、みな別の職人が作った味が好みなのです。
自分が作った方が美味しいと言っている友達もいますね。
確かに彼女たちのプリンは美味しいです。
だからある程度軌道に乗ったら、『ポコポーンの卵』を取りに行こうと約束していました。
立ち入り許可が貰えるのは【サル】以上で、友達の【ニート】のお姉さんに引率して貰う予定だったのですが……。
つい昨日――
――――トリキア王国の貴族の若様に見初められ、結婚してギルドを退会してしまったのです!
裏切り者です、裏切り者がいるんですっ!
今でも覚えています。あの勝ち誇った顔、あの一言、
「やったわ!! これで毎日プリン生活よ!」
……少し悔しく、羨ましいものがあります。
――ですが、私はプリン程度に釣られるような安い女じゃありません!
だって他にも色々と食べたいものはいっぱいあるのですから!!




