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【未来日記で運命が変わる異世界物語】  作者: ねこラシ
第一章 俺は帰りたい
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第二十話 静かなる村

  「団長、あともう少しで到着します」


 「分かった。警戒しておけ、先ほどみたいなことがある可能性が高い」


 リクを討伐した後、一行は次の目的地へ向かった。道中で予想外のハプニングがあったものの対処することができたのは幸いであった。


 「群れるかと思いましたがそんなことはなかったですね」


 団長に語りかけるのは茶褐色の髪を揺らす青年。副団長の一番弟子のヒューズ。彼らの予想ではまとめての戦闘になるかと思われたがその予想は見事に外れた。


 「たとえ予想だにしない出来事があっても柔軟に対応するのが騎士だ、覚えておけ」


 「分かりました」


 そうして、村へと辿り着いた一行は馬を降りた。悪の組織がやってきたことを知った住人たちはすでに立ち去った後であり、もぬけの殻だった。虫の音すらも聞こえなかった。井戸の状況も確認したが誰もいない。

 まるでこの村だけ、世界から忘れられ呼吸を止められていたかのように――――

 だが、行方不明かと思われた情報部隊と合流した。


 情報収集のために派遣したのは合計で二十名。そのうちの十二名と合流を果たしたものの、残りの八人はどこに行ったのか不明だった。


 「―――とりあえず、話を聞こう」


 とある一軒の家の中へと入り、情報を集めていた仲間、団長、副団長、各隊長を呼びあつめ情報共有をすることにした。


 「それで、残りの八人はどこに行った」


 「いずれも報告が上がりませんでした。最後に会ったのは各々の担当場所を確認した時で、我々も捜索に出ましたが痕跡すらも見つけられませんでした」


 隊の長がそう言った。彼らの話によれば十二人は村、その近辺で活動を展開。残りの八人は二人組を作り、十二人の管轄外で収集をしていた。

 手に入った情報はメルビスに報告をしなければならない。そのため、五十分に一度は元の場所へ戻るようにと話し合いをしていた。


 だが、一度も報告に来ることはなかった。ただの一度も。忘れているだけか、帰り道を見失った、はたまた正理機関とぶつかったか……。いずれにせよ、捜索をしに行かなければならない。

 

 だが、全員出動はあまりにもリスクが高い。そのため、隊長を含む四人を残し、八人で探索。期限は一時間、その時間内に見つけることができなければ戻るようにと決定された。


 八人が行くはずだった場所へとまず全員が向かったもののいなくなった原因は特定できなかった。戦闘の跡すらも見つからず、成果を上げることができなかった彼らは一時間以内に村へと戻った。


 結局そこから報告をしようと、準備していた時に一行が到着したのである。


 「―――正理機関分派、ネメア=オルドではないですね」


 そう口火を切るのはジュラル。それに団長も賛同する。しかし、それを理解できないのが村にいた騎士団。「そうだった」と言うとメルビスは『ネメア=オルド』のリク・ガルベンとの戦闘を語った。


 「ま、マジですか………?!」


 「本当だ、だがその話は良い。今は消えた八人だ」


 「ですが、なぜ『ネメア=オルド』ではないと言い切れるのですか?」


 「簡単だ。リク・ガルベンは戦闘狂と言われている。さっきも言ったが、俺は実際に戦った。戦い方は魔術は使わず、獲物である大斧を振り回して戦う。もしあいつと戦ったのなら血痕が残っているはずだ。

 だが、それが見つかっていないならあの男ではない。ただそれだけだ」


 「ですが、体術によるものであれば―――」


 「だとしたら死体が残っているはずだ。戦闘狂であれば死体を隠して一人一人殺るのではなく、その死体を使ってまとめてやるというのがあの男の理念なはずだ」


 メルビスの冷静な応えに誰もが納得した。そうと決まれば導き出される答えはただ一つ。


 「―――正理機関、もう一つの分派『ヒュドラ=エン』ですね」


 「いやそうとも言い切れない。俺たちが持っている奴らの情報は、その二つの分派が暴れていたこと。そして、『ヒュドラ=エン』の構成員があまりにも多いこと。だが、どんな術を用いるのかは分からない」


 「だとしても現在の状況から推察して、他の敵が接触してきたとは考えにくいです」

 

 「―――それは俺もそう思っている。だが決定的な証拠が見つからない以上、断定ができない」


 「では、もう一度周囲の捜索を行うのはどうでしょうか」


 メルビスとジュラルの対話にやって入ったのは情報部隊の長であるデレビネ。


 「結局、行動しないとどうしようも無いです。何より今は騎士団の数が倍以上に集まっています。消えた八人の捜索を続けつつ、敵の情報を集める。どうですか?」


 それを聞いた二人は頭の中で思考を飛ばす。


 (数は圧倒的に多い。俺たちが連れてきた構成員の増えた分の被害を被る可能性もあるが……彼の言うように行動しなければ何もできない)


 (数が増えたとは言え、敵の情報がない以上行動したくない……だが行動しなければ確かに何もできない。団長も同じことを思っているはず)


 二人は全く同じ意見を持っていた。彼らは互いの顔を見て頷いた。意気投合したのである。


 「君の意見に従おう」


 こうして再び消えた八人の捜索、敵の情報収集を開始することになった。


 彼らが連れてきた騎士の数は約三百五十人。まだ一部だけ、念のためを思い王都に残っている者たちもいる。


 「現在いる各部隊の隊長の数はいくつだ」


 メルビスが騎士長に尋ねる。


 「二十人です」


 「もう十人増やせ。一部隊を十人で組み、それを三十隊つくれ」


 「分かりました」


 そう言って部屋を出て、その指示通りに動くデレビネ。メルビスは村で調査をしていた部隊に声をかける。


 「消えた八人がどこまで行ったかは知らないが、ここに残っていたお前たちが調査した場所を伝えに行け」


 「は、はい!」


 「ジュラル、部隊の数をこれから三十に分けると言った。その部隊を十方向に分けて探索させろ。ただし、全部隊を一斉に行かせるな。向かった部隊が帰ってきてから、交代制で行かせろ」


 「分かりました」


 八人と同じ被害に遭わないため、一部隊をまず投下。その後、定刻になる前に帰還し次の部隊を送り出す。情報を集めることも大事だが全滅しないことをメルビスは優先した。


 例え被害に遭ったとしても数人は戻ってくることができる。彼らは騎士、一人一人がその誇りと意地を持ち、戦う。仲間のために死ぬか、被害を出さないために生きて戻って報告するか、それを即時に判断できると信頼しての策略。


 その後、各々が役割を持って部屋を退出した。


 全員に指示を出したメルビスは一人、考え込んでいた。それは、今後の展開ではなくこの村のことについて―――


 「おかしい………あまりにもおかしい」


 メルビスの耳に事件の詳細が入ってきたのは昨日。そして事件があったのは昨日。つまり、一日のうちに報告が届いていた。

 その時行動をすれば良かったものの時間帯が悪く、正教騎士団のほとんどが王都を離れていた。

 

 そのため、翌日の朝すぐさま行動を開始した。


 「その間に住民全員がいなくなった………しかも全てを置いて………」


 そう、この村のすべての家に生活するために必要なものが捨てられたままだった。通常であれば時間の無い中でもある程度必要なものは確保して逃げていく。


 あるいはもしものことを想定して荷造りをしておいたものを持って出ていく。しかし、そのような痕跡すらもない。

 とある家では鍋が煮え、田畑の食物は真新しく、家の机には箸が並べられている。


 「どうなっている………馬の足跡、馬車の車輪すらも見当たらない。たとえ一般市民であったとしても村の貯蓄で買うはず。現に王都近く、ジュラルが復興させた村は馬車を数台買っている」


 ―――まるで人が元々いなかったかのように忽然と姿を消した。


 「もしかして消えた八人も住民と同じか?」


 根拠がないもののそう思うしかない。ジュラルが正理機関の仕業だと言った通りなのかもしれないと彼の頭をよぎった。


 「だとしたら敵は思いのほか近くにいる、調査隊だけでなく本部への襲撃の可能性もある」


 そう思った彼は村の入り口の警備を厳重にするべく門番の兵士の配置数を増やした。村を本部とし、残った五十人で本拠地を守る予定であり、そのうち番兵は交代制で二人としていたが六人に増やした。


 「今できることはこれだけだ。俺も見回りをしよう」


 一方でジュラルはと言うと、彼自身も調査隊として村を離れようとしていた。


 「副団長、定刻です行きましょう」


 「よし、では行くぞ!」


 彼らの方向に広がるのは深緑の森。そんな状況での乗馬は厳しいため徒歩で行くことになった。その中に、彼の一番弟子ヒューズもいた。


 「森林地帯は視界が悪い。そのため常に周囲を警戒しろ」


 「「「はい!」」」


 「副団長がいる以上、この森林を抜けることが肝になってきそうですね」


 「そうだな、まあそれは覚悟していた。俺たちの部隊は調査ではなくこの先に何があるかを知ることが大事だとな」


 そんな会話をしながらもズカズカとどんどん奥へ進む一行。副団長という大きな存在がある、彼がいれば大抵の問題を解決できる。誰もがそう思っていた。

 それは彼の部隊だけではない、他の調査隊、団長までもそうであった。


 たが、ジュラルは本部に残りメルビスと見回りをするべきでだった。彼はこの後、大きく後悔する――――

 

 


 


 

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