22:リボン
ベヒューテンとのお茶の時間は好きだが、今回は途中から何だか違和感を感じていた。何処が…とは判らないが。
この日もいつも通り業務を終えて、いつも通り帰宅をして自分の時間を過ごしていた。
「よし、完成」
先日から編んでいたストールがやっと完成した。全体的に淡いエメラルドグリーンの本体に、タティングレース編みでビーズを編み込んだ花、そこに先日エーヴィヒから頂いたボルドーのリボンをあしらった。我ながら綺麗に出来たと、満足感が大きい。これも前世から引き継いだ趣味だった。
早速、明日から使い始めようと思いったが、拝謁の日がもう直ぐ近くまで来ている事に気付いた。
準備は両公爵家がしてくれており、私は当日の体調を万全にしておく様に言われていた。当日、体調不良なんて起こしたら目も当てられない。
承認して頂けるのだろうか…不安になる。
一口、お茶を飲む。今夜は蜂蜜を入れたハーブミルクティだ。
エーヴィヒの、あの私を見詰める時の、熱がこもった瞳を思い出す。胸が苦しい…逢いたい。
エーヴィヒと一緒なら、大丈夫。問題無い。
そっと髪飾りにふれる。
今の私は、とても満たされているから、大丈夫。
なんとなくストールを抱きしめる。
グリーンは彼の好きな色だ。この色を見せたら何て言うだろうか。
ふと…また一つ思い出した。サマーカーディガンを作った時に凄く喜んでくれた事を。
どうか幸せでいて欲しい…今は願う事しか出来ない。祈る事しか出来ないのに、どうやっても無理なのに…性懲りもなく会いたいと強く願ってしまう。
私はなんて未練がましく、なんて優柔不断なのか。
違う世界に生まれ落ち、前世の記憶を持ちながら…時には実年齢と記憶の年齢とのギャップに苦しみながらここまで生きて来た。
この前世への思いは、可哀想な自分を慰める為に演出している様にも感じる。これでは彼…エーヴィヒやティリアフラウ自身にも失礼ではないのか?
皆、仲間達はこの気持ちをどう乗り越えたのだろう。
…いい加減、この前世への思いは、断ち切らなくてはいけないのかもしれない。
この世界で生きていくのだから…。
…この時の思いを、後々、エーヴィヒへの想いと共に何度も何度も思い出す事となる…。




