004 影の魔法
「ふむ。それは想像力を補うためですな」
おじいちゃん先生が左手で白い顎ヒゲをしごきながら答える。
「想像力を補う?」
「例えばですが――――」
おじいちゃん先生がそう言うと、右手の人差し指に灯されていた炎がだんだんと大きくなり、次第に形が変わっていく。
できあがったのは、翼を広げた炎の鳥だ。
すげー!
「このように、想像力と訓練次第で、魔法はその姿や形を変えることができるのです。そして逆に言うと、いつも安定した魔法の効果を得るために、自分だけの魔法の詠唱や魔法に名前を付けたりしますの。緊急時、例えば戦闘中など、冷静ではない状態でも魔法がいつも通り使えるように」
「なるほどな……」
それで、『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』のキャラクターたちは魔法の名前を叫んでいたのか。演出の関係ではなく、そこにちゃんと意味があると知れるのは、『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』のガチ廃人として嬉しかった。
おじいちゃん先生が右手を下すと、いつの間にか炎の鳥の姿は消えていた。
「さて、長々と語ってしまいましたが、そろそろエドワード様の魔法の練習をしましょうかの」
「はい!」
いよいよ自分が魔法を使う番か!
テンション上がるわー!
「まずは、先ほど儂がやったように、人差し指から細く魔力を出してみましょう」
「ああ!」
勢いよく返事はしたものの、魔力って何だろう?
どうすればそれを外に出すことができるんだ?
普通はできないと諦めるかもしれない。でも、オレは諦めない。だってここは夢にまで見た『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』の世界であり、公式サイトのキャラプロフィールにもエドワード・オールディスは影魔法が使えると書いてあったんだ。
ということは、絶対に使えるはずである。
「ふむ……」
オレは一度目を閉じる。そして、体の内側に意識を向けた。
すると、なにか違和感を感じる。まるで、自分の体が二重にあるかのような違和感だ。
自分の内側に、もう一人自分がいる……?
これが探している魔力なのかはわからない。しかし、日本にいた時は感じなかったものだ。
これって、動かせるのか?
オレは右手を上げると、試しに人差し指から細く出るように念じてみた。
すると、まるでオレの意思と直結しているかのように、タイムラグなく体内に感じていた魔力のようなものが動き出す。
動き出してわかった。これは、オレという体の中に入っている水のようなものだ。ほんのちょっとだけど、魔力のようなものが減少したことがわかる。
「ほお?」
おじいちゃん先生の声に目を開けると、オレの右手の人差し指から、毛糸くらいの細さの黒い糸が伸びていた。しかも、それは休むことなくどんどん伸びていく。
これが、オレの魔法?
なんか地味じゃね?
エドワードくんではないが、これは期待外れ感が半端ない。
しかも、黒い糸はよく見ると透き通っており、触ってみても実体がない。それどころか、地面に落ちてしばらくすると、まるで日の光に溶けるように消えていった。
これが何の役に立つんだろう?
せめて実体があれば役立つのに……。
「え?」
そう思ったからだろうか、魔力の消費が上がると、右手の人差し指から出る糸が濃くなった気がする。触ってみると、ちゃんと持つことができた。
でも、糸を出すだけじゃなぁ……。
これって、糸じゃなくて他のものを想像したら、その通りのものが出てくるのだろうか?
試しにボールを想像してみる。
すると、実体を持った黒いボールが現れた。
「おお!」
今度は、クリスマスツリーの天辺に付いているような星をイメージしてみる。
これもすぐにできた。
これ、楽しいかも!
思い通りのものがどんどん作れて、面白い。
オレは前世で3Dモデリングをしていたのだが、イメージとしてはあんな感じだ。
いろいろと試していくと、どうやら作れるものの強度から質感、重量までコントロールできるみたいだ。
試しに小刀を作ってみたけど、普通に爪を切ることができた。
しかも、作ったものを後から操作もできるのか、オレの手から離れても、まるで粘土のように形を変えることができる。
しかし、制約もあるみたいだ。オレはどんどんものを生み出しているけど、ものが溢れかえったりはしない。
どうやらどれだけ魔力を込めたかで、実体化できる時間も決まるらしい。
しかも、魔力を継ぎ足したり、逆に魔力を回収することも可能なようだ。
これ、かなり面白い!
次は自分が生み出したものではない影を操れるのか試してみよう。
試しに自分の影を動かしてみた。
これはかなり簡単にできた。消費魔力もかなり少ない。
自分で影を生み出す必要がないから、消費魔力が少ないのかもしれない。
次だ。
例えば、ここから二十メートルほど先にある人型の木。その影を操ることはできるのだろうか?
「あれ?」
しかし、さすがにそう上手くはいかないのか、人型の影は操ることができなかった。
何か条件でもあるんだろうか?
やはり距離が離れすぎているとか?
お読みいただき、ありがとうございます!
本作は書籍でも展開中です!
ぜひ、購入をご検討していただければ!
よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。
下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。
☆1つでも構いません。
どうかあなたの評価を教えてください。




