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第一部  【 停滞の掟と、餓えゆく王国 】  第二章 【 異端の同盟 】 第四話 【 聖域に落ちる火花 】

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【第2章 第4話 スタート!/毎日 18:00 ~ 18:30 更新予定です】


ご覧いただきありがとうございます。

それでは、最新話をお楽しみください!

地下動脈の穿孔せんこう作業は、驚異的な速度で進んでいた。


かつての敵国カイゲンが持ち込んだ最新の魔導掘削機と、腹を満たしたアリストの民たちのくなき執念。二つが組み合わさった時、誰もが不可能だと思った古代水路の修復は、わずか一週間で完了した。


暗く冷たかった地下大回廊には、今やカイゲン製の粗削あらけずりな魔導軌道がどこまでも敷き詰められている。

その上を、食料や掘削資材を満載した貨車が、重厚な金属音を響かせて次々と走り抜けていく。


「殿下、開通いたしました!」


汗とすすにまみれた労働者のかしらが、興奮で声を上ずらせて報告に走ってきた。


「地下トンネルの先端が、大霊樹の北側に位置する『旧聖導鉱山』の地下洞穴ほらあなに到達しました! 外の憲兵に見つかることなく、資材の搬入が可能です!」


「よくやった」


リンはねぎらうように男の肩を叩き、ラグナルと共に貨車の後部へ飛び乗った。


「行くぞ、ラグナル。我が国の『聖域』の本当の姿を見に行こう」


手圧式の貨車が地下道を加速し、やがて視界が急激にひらけた。


そこは、かつて王家が「大霊樹の精霊が眠る神聖な地」として封印し、立ち入りを厳しく禁じていた巨大な地下空洞だった。高々とそびえ立つ大霊樹の巨大な根が、まるで巨竜の骨のように空間を貫いている。


だが、神秘的な静寂などそこにはなかった。


暗闇に浮かび上がっていたのは、大霊樹の根に侵食され、放置されたまま群青色ぐんじょういろの光を放つ「巨大な魔導鉱石の純結晶脈」だった。


「……。なんということだ」


ラグナルが絶句し、思わず息をのんだ。


「王家はこれを『触れてはならぬ神聖なる樹の血』と呼んで封印していた。……。しかし、これは……」


「ただの高品質な魔導鉱石だ。しかも、大陸中のどの鉱山よりも高純度のな」


リンは壁面から突起した群青色の結晶に触れた。ひんやりとした結晶の奥から、莫大なエネルギーの波動が伝わってくる。


「我が国の先祖は、これを『神聖』という言葉で包み隠し、活用する技術も勇気もないまま放置してきたのだ。その結果が今の飢餓だ。笑えない滑稽劇コメディだよ」


そこへ、別の坑道から姿を現したのは、カイゲンのガルド提督だった。彼もまた、壁一面の魔晶石を目にして、義眼を極限まで見開いていた。


「……。おいおい、正気かよ王子。こんなお宝の山を『神聖だから』って理由で何百年も放置してたのか? アリストの連中はバカの集まりか!?」


「だから言ったろう、ガルド。うちの老いぼれどもは、過去の栄光と形式ルールに殺されかけていると」


リンは不敵に微笑み、短剣の柄で鉱石の表面を力強く叩いた。甲高い金属音が洞窟内に響きわたる。


「今日からここは『聖域』ではない。セルヴァ王国が泥沼からい上がるための『心臓部』だ。ガルド、すぐに採掘隊を入れろ。この鉱石をカイゲンへ運び、食料と金に変えろ!」


「ハッ! 言われなくてもそうさせてもらうぜ!」


ガルドは大声を上げて笑い、即座に手下の技師たちへ大声で指示を出し始めた。


激しい金属音が地下空洞に連鎖する。

神聖とされた沈黙が打ち破られ、古代の鉱山が、人間の「欲望」と「技術」によって急速に再起動していく。


だが、その熱狂の渦中、地上――王宮の天守塔からは、大霊樹の根元からかすかに漏れ出す群青色の怪しい光を、冷徹な眼差しで見下ろす男がいた。


王国大公、ガルシアである。


「……。大霊樹の聖域から、不審な魔素の脈動が感知されただと?」


報告をもたらした近衛兵に向かって、ガルシアは太い指で机を叩いた。その顔には不穏ふおんな影が落ちている。


「第二王子リンは、相変わらず自室で謹慎しているな?」


「は、はっ。……。部屋の前に見張りを立てております。ただ、……。最近、市井しせいの不穏な噂や、南方の不審船の目撃情報が相次いでおりまして、……」


「くくく、……。ねずみどもが小細工をしているか」


ガルシアは冷酷な笑みを浮かべ、ゆっくりと立ち上がった。


「『清貧』を乱す不義の輩には、死あるのみ。近衛の精鋭を動かせ。大霊樹の聖域を包囲し、うごめく害虫どもをぎ落とせ」


第二章、完。


地下で渦巻く「生きるためのエネルギー」と、地上で硬直する「旧体制の弾圧」。

両者の衝突の火花が、ついに王国の暗雲を切り裂こうとしていた。


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(次回更新は 今日 18:20 を予定しております。お楽しみに!)

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