表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/45

プロローグ

 ――ピンポーン。


 と音が鳴った数秒後。


『いらっしゃいませ』


 と、音の主であるカメラ付きインターホンから声が聞こえる。カメラの先にあるモニターで見られていることを意識しつつ、インターホンを鳴らした男が軽く頭を下げた後。


「深森信用金庫の朝倉です」


 と告げると。


 ――ウィーン。


 と小気味良い機械音を奏でながら、扉のロックが解除されると同時に、インターホンから『どうぞ』と入室を促される。


 ロックがしっかりと解除された事を確認した後、朝倉と名乗った男は右肩に担いだ大きな黒い鞄を一度担ぎ直し、扉を開く。


 朝倉あさくら たくみ、この春に深森信用金庫入庫3年目となった職員だ。


 身長は169cm、後1cmが欲しくて仕方ない時期もあるにはあったが今では諦めている。


 容姿に至ってはあまり褒められたことは無いが、大学生の時バイト先の女性の先輩に『よ〜〜〜く見たら整ってはいるね』と言われたことはある。

 よ〜〜〜く見なかったら何なんだろう、と考えると怖くてそれ以上は聞かなかったが、まぁそんな感じだ。


 一応お客様と会う仕事をしている以上、清潔感にはそれなりに気を付けている。


 女性との交際経験は……これまた大学生の時にハマっていたネットゲームの、同じクランで知り合った女子高生と仲良くなって『付き合って欲しい』と言われた事がある。


 仲良くなって最終的にカメラ通話をする位にはなっていたし、相手の子の容姿も性格も決して悪くはない……どころか割と好ましく感じていた。


 まぁ普通なら即承諾案件なのだが一つだけ大きな問題があった。


 ……そう、匠は東京に、その子は北海道の……それも田舎に住んでいたのだ。


 『一度も会ったことすら無く、かつ今後も会えるかも分からない相手と付き合うのは難しい』と匠は何度も伝えたが、最終的には彼女の粘りに押し切られる形で付き合う事になった。


 ――のだが、その2週間後に『やっぱり無理だ』と匠から一方的に伝えて無理矢理その関係はおしまいとなった。


 これを交際経験とカウントして良いのであれば、匠は彼女いない歴=年齢を辛うじて免れたことになるのだろう。


 ……カウントして良いのであれば、だが……。


 そんな匠は扉を開けた後、入り口から中に入りエントランスの向かって右側に設置されている白いソファーに座る。


 ここは株式会社 花岡事務所。


 匠が担当している中でも1·2位を争うほどの大きな規模の会社である。主に測量をメインに業務を行って既に50年が経過している老舗の企業であり、かつ近年の業績も伸びているらしい。


 ――らしい、というのは融資案件になるとその金額から支店長案件になるため、匠自身は関われない。その為決算書等を直に見たことが無いのだ。


 ゆえにこのエントランスから奥に入ったこともない。


 聞いた話では2代目社長である現在の社長は今後株式上場も視野に入れており、規模を拡大していく方針とのことだ。


 担当している身としては関わっている会社が上場する、というのはどこか誇らしい気持ちもある反面、上場するほどの規模……具体的には資本金9億円、もしくは従業員が300人を超えると信用金庫法によって融資取引等ができなくなり、自然とメインバンクから外れる為、若干複雑な気持ちもある。


 信用金庫は中小企業を相手にしている地域密着型の金融機関の為、普通の銀行と比べると色々と制限があるのだ。


 そんな事を匠が考えながら待つこと5分、いつもの担当者である経理部の塚本がエントランスに現れた。


「お待たせしてすみません、今日は引き継ぎも兼ねてますのでよろしくお願いします」


 今回で担当が変わるというのは匠は前回訪問時に聞いていた。


 匠がこの支店に配属されてから2年と少し、ずっと塚本が担当者であった。30代の女性で5歳の息子と3歳の娘がおり、雑談がてらその子達の話を聞くのが好きだったので匠は少し寂しいなと思う。


 そんな事を考えていると塚本の後ろから1人の女性が一歩前に出る。


 緩くウェーブのかかった栗色のボブヘアーとクリっとした大きな目が快活そうなイメージを抱かせる。


 身長は160cmほどだろうか、社内規定がどうなっているのかは知らないが、塚本はスーツなのに対しその女性は白い花柄のワンピースを着ていた。


 目鼻立ちはしっかりと整っており、一般的に見て美人の部類入るのだろうが、どことなく大人になりきっていないあどけなさが残っているようにも感じる。


「花岡です。よろしくお願いします」


 そう言いながら女性に名刺を差し出され、匠は慌ててズボンのポケットから名刺ケースを取り出し『深森信用金庫の朝倉です』と名乗りながら名刺を差し出す。


「「頂戴します」」


 と同時に言いながら交換した名刺に目を落とすと『経理部 花岡はなおか かなで』という文字が目に入る。


「ん……あれ? 花岡?」


 と匠が湧き出た疑問を自然と口に出すと、奏は悪戯がバレた子供のようにクスッと笑った後、少し恥ずかしそうに。


「やっぱり気付きます? ……社長、私の父なんです」


 と、笑顔と共に告げた。

初めまして。


こうしたちゃんとした小説を書くのは初めてとなるため、色々と拙い部分もあるかと思いますが、温かい目で楽しんで頂けたら幸いです。


本日区切りの良いところまで投稿したら当面の間は隔日で更新したいと思っております。


是非お付き合いいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ